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滅びし水晶の惑星

水晶の原住民

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 絵だけでは何を伝えようとしているのか分からない。
そうすると、クックがジェスチャーを始めた。
 小石を額にくっつけると、ロボットに近づけている。
もしかして、このロボットのコックピットの開け方かな?


 クックからの情報が確かなら、コックピットを開くには何かアイテムが必要になる。
オーソドックスにデバイスを近づけてみた。
……変化はない。デバイスではないみたいだ。

「じゃあ何だろう?」

 他に可能性がある物を考える。
普通に考えれば、この星で入手した物に絞ることができる。
その中でクックが示した石のような鉱物は……ほぼ全て。
木も花も果実も見た目は石に近い。


 アイテムの中でも一番可能性が高い物がある。
クリスタルゾンビが落とした水晶だ。
 早速、デバイスから取り出す。
これをどうすればいいんだろう?クックがやったみたいに額に付けて、ロボットに近づければいいのかな?
 
「これは!?」

 水晶を手に持ち、思案していると、異変が起こった。
水晶が熱を帯びてきたのだ。
熱があるといっても、そんなに熱くはない。せいぜい人肌ぐらいだ。


 水晶をロボットの胸に近づけてみる。
すると、ロボットの装甲にまるで水に物を落とした時のような波紋が現れた。
 水晶をさらに近づけると、波紋はどんどん大きくなっていく。

「……開いた」

 中を覗き込もうとした時、何かが倒れ込んできた。
突然のことだったが、警戒はしていたから受け止めることができた。


「人間?」

 ロボットの中から飛び出してきたのは人間だった。
彼?彼女?には大きな特徴ある。額には水晶が生えているのだ。
アクセサリーではなく、体から生えていた。


 頬を軽く叩いてみたが反応がない。
意識を失っているみたいだ。
彼?彼女?を降下艇に連れ帰る。

 
 降下艇の簡易ベッドにこの人を寝かせた。
かなり衰弱している。このままでは死んでしまう。
 特に酷いのは左腕だ。鋭い水晶が腕を貫いていた。
早く処置する必要がある。


 唯一発見できたこの星の原住民らしき人物だ。ここで死なせるわけにはいかない。
降下艇の医療設備は乏しいが、ベース22に帰還している余裕はない。到着する前に死んでしまうだろう。
 手持ちの薬でどうにかできるか分からないが、全力を尽くす。


 治療の手伝いはウラノスにお願いした。
ノロミオさんは水晶の除去をお願いしている。
 ガンズアームは基本射撃用だけど、パワーアシスト機能を備えてある。
ギガントハンマーは持ち上がらないが、赤樹騎剣なら使える。彼女だけでも水晶の除去も可能なのだ。


「治療を開始するよ」
「サポートは任せろ」

 一番最初に処置しなければならないのは勿論、左腕だ。
左腕にはささくれのように大小様々な大きさの水晶が数十本生えている。
 額にも水晶があるが、こっちの水晶は鋭く尖っており、皮膚を貫き、血が流れ出している。
血を吸い込んだのか、この水晶は赤黒い。
早く抜かないと。


 一番小さい水晶をピンセットで抜いてみる。
傷口を広げてしまわないように、慎重に抜いていく。

「よし!抜けた」

 水晶が体から離れると、気体となり、消えてしまった。


 水晶が抜けたことで露わになった傷口は変色している。
異臭もするので、腐りかけているのかもしれない。
早急に治療しなくては。


「そんな。抜いたはずなのに」

 ポーションを傷に掛けようとしたが、それはできなかった。
傷口から新たな水晶が生えてきたのである。
 もう一度抜こうとしたが、ウラノスに腕を掴まれた。

「さっきより顔色が悪いよ。抜かない方が良いんじゃない?」

 ウラノスの言う通り、顔色が悪くなっている。
下手に水晶を抜くのはやめた方がいいみたいだ。
 とりあえず水晶は放置する。
だけど、血は止めた方が良いに決まっているので、左手にポーションを振り掛けた。


「効きが悪いなぁ」

 中々血が止まらない。
もっと強い物が必要みたいだ。
振り掛けたポーションは希釈した物だったから、原液のポーションを掛ける。

「これも駄目か」

 もっと強力な物もあるけど、効果が強すぎて危険だ。
取り扱いには細心の注意を払う必要がある。


「赤いラベルの瓶を頂戴」
「はい、どうぞ」

 予め、テーブルに並べておいた瓶の中からそれが入った赤いラベルの瓶を受け取る。
 ハイポーション。
その名の通り、ポーションの強化版だ。
 クーデター発生前に作成したんだけど、僕でも原液を服用するのは危険だし、ポーションで事足りていたから封印していた。
容体を見ながら、少量ずつ投与しよう。


 ハイポーションを一滴ずつ左腕に垂らしていく。
左腕の水晶にハイポーションが当たると、水晶が赤い光を失い、ポロリと抜け落ちていった。
新たな水晶は生えてこず、ハイポーションの効果で傷が塞がっていく。
何だかよく分からないけど、これなら何とかなるかも。
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