コスモス・リバイブ・オンライン

滅びし水晶の惑星

ＴＫＧ

「これって一体？」
「触るな！」

　ウラノスが抜け落ちた水晶を触ろうとしたが、それを制止。
懐からハンドガンを取り出し、水晶を撃ち抜いた。


「どうしたんだよ、急に？」
「嫌な気配を感じたんだ」
　
　あれに近い気配を僕はよく知っている。
マガツ化したライフクリスタルだ。
　水晶はマガツ化ライフクリスタルではないのは分かっているが、それと同じぐらい悍ましさを感じた。
素手で触るのはやめておいた方が良い。


　まだ左腕には水晶は残っている。
残りの水晶にもハイポーションを掛け、排除していく。
　抜けた水晶を解析に回す余裕はない。
抜け落ちると、すぐさま破壊した。
これで左腕の傷は全て塞がった。


　まだ予断は許されないが、マシになってきた。
ただ、手持ちの薬では心もとない。
　携帯用の練成器を取り出す。
今から薬を練成する。


　 ポーション、万能解毒剤、銀、その他にも希少な素材を練成器に入れていく。
素材の総額は馬鹿にならないが、命には代えられない。
　材料を全て練成器に詰め終わった。
両頬を叩き、気合を入れる。これを練成するのは初めてだ。
どれぐらい生命力が必要か分からない。


　練成器に内蔵されているライフクリスタルが僕の生命力をゴッソリと吸収する。
その量は過去最大だった。
　かなりギリギリだったけど、練成は無事成功。
練成補助基礎のレベルも７に上がっていた。


　作成したのは活命丹という薬だ。
活性丹と効果は似ており、生命力の回復速度を向上させる効果がある。
　活性丹よりも効果は弱いが、活性丹と違い、副作用はほとんどない。
病気の人に服用するのが正しい使い方だ。
これを服用すれば、重い風邪でも一日で完治するそうだ。


　活命丹は今回のようなケースでは最適なのだ。
　口を無理やり開かせ、活命丹を放り込む。
薬の効果は抜群だった。血色が良くなっていく。


　その後もウラノスと交代しながら、付きっ切りで治療を継続する。
もう峠は越えた。時期に目覚めるだろう。
　あとはウラノスに任せて、水晶の駆除作業に戻る。
僕らが治療をしている間、ノロミオさんが頑張っていてくれたおかげで、残りの水晶はあと少し、背中を覆っている物のみだ。


　作業に移る前にコックピットの中を調べる。
治療に専念していたから、まだ碌に調べられていないのだ。
　コックピットの中には椅子とモニターなどがある。
そこら辺は僕らの機体と変わらないが、決定的に違う点があった。
操縦桿がないのだ。どう動かすのか見当もつかない。
安易に弄ると壊してしまう恐れがあるから、パイロットが目覚めるのを大人しく待つ。


　気になる点はまだある。
どうしてクックは開け方を知っていたんだろう？

「なあ、なんで開け方を知ってたの？」
「クッ？」
　　
　クックは可愛く首を傾げた。
クックとコッコには謎が多い。
ピギに匹敵する謎の生物だった。


　水晶の駆除は終わった。
あとは降下艇に積み込むだけだ。
　降下艇にはＡＧラッパを積み込んだ時に使用したクレーンがあるが、丸ごとを運ぶのは不可能。
ガーディフォースで担いで運ぶ。

　
　ロボットは見た目よりも軽い。
クレーンでは駄目だったが、ガーディフォースなら持ち上げることができた。
　ロボットの積み込みは完了。
あとは患者の目覚めを待って、ベース２２に戻る。


　ベッドの隣に椅子を置いて、本を読んでいると、コッコが両翼を手のように使い、何かを持ってきた。

「コケコッコー！」
「卵？」

　殻は彼らの体と同じく水晶に近い。
光に翳すと、黄身と白身が透けて見え、それがまた綺麗だった。
　こんな美しい卵、初めて見た。ある種の芸術品みたいだ。
美術館に飾ってあっても不思議じゃない。


　鑑定してみると、無精卵だった。
卵を眺めていると、コッコは卵をひったくった。
　コッコは卵を壁に打ち付け、彼らが用意していた底が深い器に中身を入れた。
鶏の域を遥かに超えた器用さだ。


　コッコは卵をかき混ぜ、クックが運んできたお茶碗によそってあるご飯にかけた。
ＴＫＧ、卵かけご飯だ。
　食べるのが勿体ない。
ご飯粒一粒一粒が比喩ではなく、光り輝いていた。


　コッコとクックは期待の眼差しを向けている。
もう少し眺めていたかったが、食べてみることにする。
　口内に卵の旨味が広がる。
醤油などの調味料は掛かっていないが、そんな物必要なかった。

「涙？」

　あまりの美味さに知らずに涙を流していた。


　一人で全部食べたいが、ノロミオさんとウラノスにも分ける。
彼らも一口食べた途端、涙を流している。
ユラさんたちにも食べさせてあげたいが、卵はこの一個だけ。僕らだけの秘密にしておこう。


　すると、コッコとクックは卵を羽で抱えてきた。
十個以上ある。どれも無精卵だ。
全て僕らにくれるらしい。