コスモス・リバイブ・オンライン

絆と禁忌

あなたはどこから来たの？

　機獣はどこから来たのか。
それはイド最大の謎だった。
　今のイドでは二つの仮説がある。
　一つは自然発生説。
モンスターの進化の過程で機獣が生まれたんじゃないかという説だ。
　もう一つは人造説だ。
どこかに機獣を生み出す機械があって、それが機獣を生み出している


　主流は自然発生説の方。
人造説は荒唐無稽なとんでも説と考えられている。
荒唐無稽じゃないということが本日、証明された。
　ちなみに天才クロヤギ博士が唱えた説はその両方。
最初は人の手によって生み出されたが、その後、機獣たちが自分で繁殖してきたという説を推していた。


　この装置は生き物から遺伝子データを抜き出し、それを基にケルンを製造するようだ。　

「早速作ってみるにゃー」
「そうですね」

　まずはケルンの素材を装置に投入する。
素材はどこにでも手に入る物ばかりだったが、一つだけ入手困難な物があった。生体金属だ。
生体金属でも機獣から削り取った物では駄目らしい。
　初挑戦なので、失っても惜しくないアイアンアントを装置に投入する。
レアリティは手持ちの生体金属の中で一番低いが、これでもＯＫだったみたいだ。


　次は何を基にした機獣を作るかだ。
装置に遺伝子データを読み込ませなければならない。
生物の血などの体液で大丈夫らしい。
　とりあえず、人間の血液を入れてみたが、エラーが出てしまった。
どうやら、人間型の機獣は作れないらしい。


　ゴブリンもアウト。
全員の持ち物を持ち寄ってみたが、それで作れるのはどれも現存する機獣ばかりだ。
せっかくだから新しい物を作りたい。
　たぶん、イドにいるモンスターや生物の大半はすでに機獣化されているだろう。
ならば、この星に存在しないモンスターならいけるかもしれない。


　候補は二つある。
一つはアイアンアントだが、もう一つが入った瓶を取り出す。

「何の粉だにゃー？」
「ジャイアントモールの爪を粉々にした物です」

　ジャイアントモールはヴィンディス固有種。
僕の記憶ではイドにモグラ型の機獣は存在しない。
エラーさえ出なければ、新種の機獣が作れるはずだ。



「どうだ」

　粉末を投入し、結果が出るのを待つ。

「どう？」
「通ったみたい」

　次の工程は誕生させる機獣のパラメーターの設定だった。
機獣の性能を弄ることができるらしい。
　耐久力を低くする代わりに、機動力を増加させることなどができるようだ。
それだけではなく、スケイルのドリルのような生体武装の追加もできる。
ただし、それをすると機獣自体の総合身体能力がかなり低下するみたいだ。


　項目には野性味という物があった。
これを上げることによって、機獣の性能が向上させることができるようだ。
しかし、その代償で、扱いづらくなるらしい。


　セッティングは完了。
実行ボタンを押そうとしたが、アローさんによって止められてしまった。

「誰が面倒を見るの？」

　言われてみれば、その通りだ。
僕は機獣を使わないし、アローさんたちにもすでにパートナーがいる。
　駄目もとでタマさんとポチさんを見ると、顔を横に振った。
やはり、彼女たちもいらないらしい。両クランは犬猫専門なのだ。


　名残惜しいけど、キャンセルする。
機獣だって生きているのだ。
生み出しておいて、人間の身勝手に捨てるなんて、やってはならない。


　猫と犬の仲間ならどちらかに引き取ってもらえるが、残念ながら、手持ちに該当するアイテムはない。
今回は諦めるしかないみたいだ。

「アーカイブ機能があるみたいだわん」
「読めるんですか？」

　彼は壁画の文字の考察をしてくれた人だ。
彼はコンソールの文字を翻訳機無しで解読できるようだ。


「これは古式イド文字ですわん」
「何ですか、それ？」
「分かりやすく言うなら、アルファベットの活字体と筆記体みたいなものだわん。読み方と文字の役割は一緒でも形が違うわん。古い本の原書は古式イド文字で書かれているわん」
「読めるなら、手伝ってもらえますか？」
「任せろわん」

　アーカイブ機能は過去に製造した機獣の遺伝子データを使うことで、新たに遺伝子データの取り込みをしなくても、ケルンを製造できる機能だった。
リストを確認してみると、キャットスやウォードッグなど現在のイドで主流となっている機獣からテラーコングなどの希少種も作れる。
テラーコングならローランドさんに引き取ってもらえるかも。


　他にもライオンやトラ型機獣も作れるみたいだ。
にゃんこ同盟は猫専門だけど、ライオンやトラはクラン内でも意見が分かれているらしい。
タマさん的にはネコ科なのでＯＫだそうだ。
どっちも凶暴で拘束具なしで扱えないため、今のところ配備はされてないそうだけど。