コスモス・リバイブ・オンライン

現実８

ベータテストスタート

　残り一人、さっきまで彼らと一緒に寸劇を演じていた女性が部屋からこっそりと抜け出そうとしていた。

「で、なにやってるんですか？生徒会長」
「な、なにを言っているのかしら？私は神宮麗華という美少女じゃありません」
「さすがに無理があると思いますよ。フラワー姫さん。それとも、レイレイたんと呼んだ方がいいですか？」
「何故それを！？」

　レイレイたんとは生徒会長のネットアイドル時代の芸名だ。

「ラブラブ、みんなに愛よ、届け！だったっけ？」
「やめて、もう逃げないから。私のライフはもうゼロよ」

彼女の弱み、面白黒歴史は自衛のためにたくさん握ってあるのに。


　彼女を弄って遊んでいると、根倉さんが間に入ってきた。

「同志を虐めないで！」
「根倉さんって生徒会長と仲良かったっけ？」

　普段一緒にいるところは見たことがない。

「ボクたちはカードの絆で結ばれているんだ！」
「そうよ、そうよ！」

ＭＤＭ愛好家のノリには正直付いていけない。


　生徒会長で遊ぶのを止めて、本題に入る。

「実はね、ＭＤＭがＶＲゲーム化するんだ」
「嘘だろ。そんな話聞いたことないぞ」
「まあ、ずっと極秘で進んでたからね」

　そもそも発売する予定がなかったのだから知らないのも無理はない。
まだテストプレイヤーの募集も始まってないし。


「みんなにはテストプレイヤーをお願いしたいんだ」
「マジか！」
「持つべきものは友達だな」
「やったぜ！」

　三兄弟は大喜びだ。誘った甲斐がある。


「何人参加できるの？」
「とりあえず、十人分用意してあるよ。レトロゲーム同好会みんなで一緒に参加してね。……あっ、ついでに会長も」

　レトロゲーム同好会の会員は結構多い。
部への昇格条件の一つである在籍人数は満たしてるが、顧問になってくれる先生がいないため、同好会のままなのだ。
部になると部費が貰える代わりに制約が多くなるから、このままでいいらしい。


　一週間程度でテストプレイヤーを集めることに成功した。
新規勢も出版社が本気で集めてくれたみたいだ。
どうやら、社員にも愛好家が多数在籍していたらしい。愛好家の情熱は凄い。
彼らの枠も確報するように頼まれた。中には会社の重役も参加しているそうだ。凄いな、ＭＤＭ。


　単純にプレイしてもらうだけじゃ面白くない。
そこでテストは大会形式にすることになった。
　ベータテストの舞台として用意したのは島のマップだ。
自然が溢れ、島の中央には城が聳えている。


　この城、レオンがデザインした物で島の雰囲気から若干浮いている。
決闘者さんが気に入っていたので、そのまま採用されることになった。
プレイヤーにはこの城を目指して頑張ってもらう。


　現在、新規組へに向けて、ＭＤＭのルール説明が行われている。
それが終わり次第、ゲームスタートの予定だ。

「もうすぐチュートリアルが終わります。準備を」
「「「はい」」」

　運営チームリーダーは決闘者さんがやるべきことなんだけど、彼には無理。だって、病的な人見知りだもの。
そういうわけで彼に代わり、僕が担当することになった。
　運営チームの中でダントツで最年少だけど、他のメンバーはサカパラ運営チームから異動されてきた人だ。
顔見知りが多いから問題はない。


　チュートリアルが終わり、続々とプレイヤーたちが島へと出現してきた。
彼らへ初期デックを送信する。
　初期デックの内容はプレイヤーによって異なっている。
心理テストでその人に合ったデックが選択されているのだ。


　あと愛好家と新規でも差を付けておいた。
新規勢のデックは少しだけ強くしてある。
愛好家と新規ではＭＤＭの経験値が違う。
それぐらいのハンデがなければ、勝負にならないのだ。