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新章:???(ネタバレ防止)
溺愛
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「で、どうするんですか?多数決ですよね?」
「もうしてあるわ」
「僕参加してないんですけど」
「事前にチャットでやったの。で、全員があなたに一票を委任したわよ」
「なんでそんなことに」
「リーダーはあなたでしょ。あなたが決断しなさい」
「少し考えさせてもらっても」
「駄目だ。今決めろ。今日が期日だろう」
ボナさんは僕に考える時間さえも与えてはくれなかった。
期日とは公転周期のこと。
計算上、今日出発しなければ、公転の影響でヴィンディス到着が一ヶ月はずれ込んでもおかしくはない。
他の誰かに決断を委ねようとしたが、誰も引き受けてくれそうにない。
僕が決めるしかなさそうだ。
「勝てますか?」
「確率は0じゃないよ。策は考えてる。勝機はあるよ」
クリステラ、イド、ダァンを巡り、アベル&カインの技術も獲得できた。
今の僕らなら統合軍に噛み付けるかもしれない。
「ヴィニアちゃん」
「ん?」
「ずいぶん待たせてちゃったね」
「じゃあ!」
「壱、進路をヴィンディスに」
「ラジャー!」
「みんなもいい?」
「当然だ!」
パッション君が真っ先に応えてくれた。
彼のこういうところは心の支えになる。
次の目的地はヴィンディス。風と雲の星。
あの日、僕らは敗北、ヴィンディスから逃げだした。
あの悔しさは忘れていない。今度は負けない。
「合格ですね」
「はっ?」
「あなた、リーダーを辞めたがっていたでしょ。だから、試してみたんです。皆さんに協力してもらってね」
「えっ?」
「決断力を確認したかったの。トップに大事な資質よ」
「じゃあ、もし決断できなかったら?」
「その時はユラちゃん辺りにリーダーやってもらおうかなって思ってました」
失敗した。
クランリーダー辞めたかったのに。
ユラさんの方が絶対適任だと思う。
「今からでも」
「あたし、やらないよ」
この度、星の獣クランリーダー(仮)の(仮)が取れました。
仮がなくなっても仕事が増えてはおらず、これまでと変わりがない。
ただ会議をすっぽかすのはやめましょうと怒られた。
五連続会議サボりはまずかったらしい。
◇ボナボナ視点
空になった器に酒を注ぐ。
ここだと妻にどやされることなく酒を楽しむことができる。
未成年者が多い星の獣では酒を嗜むことができるスペースは限られている。
ここはその一つ、バーだ。セルゲイの要望で多種多様な酒が用意されている。
孫の保護者としてコスモス・リバイブにログインしているが、このゲームなかなかよく出来ている。
酒の味などは現実と遜色ない。
さすがはオリジンといったところか。
スワロのリーダー就任作戦。
少し荒療治だったが、上手く行った。
彼は会議をサボったりと責任から逃げるきらいがある。
まだ学生だから仕方ないとは思う。しかし、このままではいけない。
彼は宇宙船のオペレーター志望。
艦のシステムを管理するオペレーターに圧し掛かる責任は時に艦長よりも重い。
艦長、副艦長が不在時には緊急で指揮を執ることだってある。
それを目指す人間が責任から逃げる性格であっていいわけがない。
彼の不興を買いかねない荒療治だったが、彼は気にする様子はなかった。
不興を買った場合、隠居予定の老人が咎を全て背負うつもりではいた。
このまま進めば、アウラ、ヴェルリーナの両名は彼の直属の上司になる。
僅かでもわだかまりを残すのはまずいのだ。
あれだけで意識改革を果たしたとは言えない。
だが、少しはマシになるだろう。
「最高の男にするか。溺愛だな」
この前、彼の師に会ったがそんなことを言っていた。
機械コミュ協会の者曰く、スワロを時に厳しく、時に甘く、ビシビシと鍛え上げているそうだ。
それが彼にとって、幸か不幸かは分からないが。
あの人には無数の借りがある。
彼を育てるということはその借りを返すことに繋がる。
一人で酒を楽しんでいると、セルゲイがバーに現れた。
「嬉しそうですね」
「人の成長を喜ばしいことだ。そう思わんかね?」
「たしかにそうですね。あっ、俺にも一杯貰えませんか?」
セルゲイのコップにも注ぐ。
セルゲイの来訪を皮切りに、一矢の成人プレイヤーも集まってきた。
一人で飲むつもりだったが、多人数で酒を交わすのは一人飲みの楽しみとは別の楽しみがある。
ログイン可能時間はまだまだ残っている。限界まで付き合ってもらうぞ。
「もうしてあるわ」
「僕参加してないんですけど」
「事前にチャットでやったの。で、全員があなたに一票を委任したわよ」
「なんでそんなことに」
「リーダーはあなたでしょ。あなたが決断しなさい」
「少し考えさせてもらっても」
「駄目だ。今決めろ。今日が期日だろう」
ボナさんは僕に考える時間さえも与えてはくれなかった。
期日とは公転周期のこと。
計算上、今日出発しなければ、公転の影響でヴィンディス到着が一ヶ月はずれ込んでもおかしくはない。
他の誰かに決断を委ねようとしたが、誰も引き受けてくれそうにない。
僕が決めるしかなさそうだ。
「勝てますか?」
「確率は0じゃないよ。策は考えてる。勝機はあるよ」
クリステラ、イド、ダァンを巡り、アベル&カインの技術も獲得できた。
今の僕らなら統合軍に噛み付けるかもしれない。
「ヴィニアちゃん」
「ん?」
「ずいぶん待たせてちゃったね」
「じゃあ!」
「壱、進路をヴィンディスに」
「ラジャー!」
「みんなもいい?」
「当然だ!」
パッション君が真っ先に応えてくれた。
彼のこういうところは心の支えになる。
次の目的地はヴィンディス。風と雲の星。
あの日、僕らは敗北、ヴィンディスから逃げだした。
あの悔しさは忘れていない。今度は負けない。
「合格ですね」
「はっ?」
「あなた、リーダーを辞めたがっていたでしょ。だから、試してみたんです。皆さんに協力してもらってね」
「えっ?」
「決断力を確認したかったの。トップに大事な資質よ」
「じゃあ、もし決断できなかったら?」
「その時はユラちゃん辺りにリーダーやってもらおうかなって思ってました」
失敗した。
クランリーダー辞めたかったのに。
ユラさんの方が絶対適任だと思う。
「今からでも」
「あたし、やらないよ」
この度、星の獣クランリーダー(仮)の(仮)が取れました。
仮がなくなっても仕事が増えてはおらず、これまでと変わりがない。
ただ会議をすっぽかすのはやめましょうと怒られた。
五連続会議サボりはまずかったらしい。
◇ボナボナ視点
空になった器に酒を注ぐ。
ここだと妻にどやされることなく酒を楽しむことができる。
未成年者が多い星の獣では酒を嗜むことができるスペースは限られている。
ここはその一つ、バーだ。セルゲイの要望で多種多様な酒が用意されている。
孫の保護者としてコスモス・リバイブにログインしているが、このゲームなかなかよく出来ている。
酒の味などは現実と遜色ない。
さすがはオリジンといったところか。
スワロのリーダー就任作戦。
少し荒療治だったが、上手く行った。
彼は会議をサボったりと責任から逃げるきらいがある。
まだ学生だから仕方ないとは思う。しかし、このままではいけない。
彼は宇宙船のオペレーター志望。
艦のシステムを管理するオペレーターに圧し掛かる責任は時に艦長よりも重い。
艦長、副艦長が不在時には緊急で指揮を執ることだってある。
それを目指す人間が責任から逃げる性格であっていいわけがない。
彼の不興を買いかねない荒療治だったが、彼は気にする様子はなかった。
不興を買った場合、隠居予定の老人が咎を全て背負うつもりではいた。
このまま進めば、アウラ、ヴェルリーナの両名は彼の直属の上司になる。
僅かでもわだかまりを残すのはまずいのだ。
あれだけで意識改革を果たしたとは言えない。
だが、少しはマシになるだろう。
「最高の男にするか。溺愛だな」
この前、彼の師に会ったがそんなことを言っていた。
機械コミュ協会の者曰く、スワロを時に厳しく、時に甘く、ビシビシと鍛え上げているそうだ。
それが彼にとって、幸か不幸かは分からないが。
あの人には無数の借りがある。
彼を育てるということはその借りを返すことに繋がる。
一人で酒を楽しんでいると、セルゲイがバーに現れた。
「嬉しそうですね」
「人の成長を喜ばしいことだ。そう思わんかね?」
「たしかにそうですね。あっ、俺にも一杯貰えませんか?」
セルゲイのコップにも注ぐ。
セルゲイの来訪を皮切りに、一矢の成人プレイヤーも集まってきた。
一人で飲むつもりだったが、多人数で酒を交わすのは一人飲みの楽しみとは別の楽しみがある。
ログイン可能時間はまだまだ残っている。限界まで付き合ってもらうぞ。
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