769 / 816
新章:???(ネタバレ防止)
再び風の星へ
しおりを挟む
スピーカーをオンに。
「ピギ、大丈夫だから」
「ぴぎゅうう」
「僕が信じられない?」
「ぴぎぃ!……ぴぎぃぴぎ」
「うん、行ってくるよ」
最終的にピギも納得してくれてみたいだ。
「予定降下ポイントまでどれぐらい掛かる?」
「およそ一時間です」
「じゃあ間に合うね」
ヴィンディスは雲に包まれているため、宇宙からは地上の様子はうかがうことは不可能だ。
だからといって、闇雲に降下するのは危険。
シルレーラの領域やモンスターの縄張りのど真ん中に着陸するかもしれない。
目では確認できなくても位置を掴む方法はある。
公転と自転を計算するのだ。
計算はベース22で終わらせてある。
ただ大気圏突入の時にズレる可能性もあるので油断はできない。
予定降下地点に何があるのかと言うと、ここには何もないのだ。
降下地点は広大な空白地帯で、近くにシルレーラの領域もモンスターの縄張りもない。
輸送船の航路の一つではあるけど、もっと便利な航路があるためほとんど使用されていない。
輸送船が通らないということはそれを狙う空賊もいない。
座標が多少ズレても、ここなら大丈夫なのだ。
場所的には統合軍の勢力圏だったりする。
これは意図的に選んだ。
中立の島や女王派の勢力圏は統合軍によって監視されている可能性がある。
そのため、目撃される危険が高い。
この地点は統合軍の勢力圏だけど、戦略的な重要性はほぼ皆無。この付近に統合軍の基地はない。
人里すらもない。他にも候補があったけど、ここが一番安全だった。
予定地点に無事到着した。
「陸、降下準備に入るよ」
「ラジャー!」
準備は始めるけど、降下はまだしない。
降下を開始するのは夕暮れ時。
星は動いている。停止しているとポイントから離れてしまうのでこちらも動きながら宇宙で待機する。
メジャーな航路ではないが、輸送船に遭遇する可能性がゼロではない。
夜間の航行は普通はしない。
夜の移動はそれだけ危険なのだ。
前回のヴィンディス降下が頭をよぎる。
あれは大失敗。宇宙船がスクラップになってしまった。
失敗の理由は色々あるけど、準備不足が一番の原因だ。
技術もなかったし、資源もなかったので大したことはできなかったかもしれないけど、もうちょっとうまくやれたんじゃないかと思ってしまう。
その反省を活かし、やれることは全部やっておいた。
それに一人じゃない。
あの時は一人で船の制御をしなければならなかったが、今は陸が一緒だ。
二人で作業を分担するので、対応力が上がる。
どんなトラブルが起きても乗り切れるだろう。
そろそろ時間だ。
降下を開始しよう。
「操縦は僕がするから。角度の計算はよろしく」
「ラジャー」
「じゃあ行くよ。準備はいい?」
「いつでもどうぞ」
コウノトリの進路をヴィンディスに向ける。
推進装置を使わなくても、ヴィンディスの引力に任せることで、降下することができる。
むしろ、使ってしまうとスピードが付き過ぎて危険になってしまう。
「このまま突入角を維持してください」
「ラジャー」
船体への負荷は最低限に抑えることができている。
上手く行きそうだ。
でも、まだ油断はできない。最後まで気を引き締めないと。
「停止するよ。衝撃に備えて」
成層圏を抜け、コウノトリは雲の真上に到達した。
ここまでは上手く行ったけど、まだ到着したとは言えない。
地上に到達するには雲の層を突破する必要がある。
ヴィンディス降下で最大の障害になるのはこの雲だ。
これがなかったら、ここまで緊張することはなかった。
前は大気圏突入の勢いで雲の層を無理矢理突破したが、今回もあれをやったら、船体に大きなダメージが生じる。
マイグラントレベルの耐久力がある機体じゃない限り、航行の続行は厳しくなる。
あの時のようにスクラップまでは行かないと思うけど、修理にかなりの時間を取られることになるだろう。
「僕は行ってくるから散布よろしくね」
「ラジャー。タイミングはどうしますか?」
「もう始めていいよ」
雲の層を突破する方法は用意してある。
アンチクラウドミストだ。
アンチクラウドミストはヴィンディス脱出時にも使用したコネコの発明品。
雲の固めることで流動性を失わせ、修復能力を奪うことができる。
今回使うのはそれの改良型、アンチクラウドミスト改。
アンチクラウドミストをクリアが改良した物だ。
効果時間は10分から30分へ。
浸透速度も約二倍に。
さらに固めると同時に雲を脆くする効果がある。
アンチクラウドミスト改を浸透させた雲なら無理矢理突き破っても船体に大きな損傷が出ないだろう。
「ピギ、大丈夫だから」
「ぴぎゅうう」
「僕が信じられない?」
「ぴぎぃ!……ぴぎぃぴぎ」
「うん、行ってくるよ」
最終的にピギも納得してくれてみたいだ。
「予定降下ポイントまでどれぐらい掛かる?」
「およそ一時間です」
「じゃあ間に合うね」
ヴィンディスは雲に包まれているため、宇宙からは地上の様子はうかがうことは不可能だ。
だからといって、闇雲に降下するのは危険。
シルレーラの領域やモンスターの縄張りのど真ん中に着陸するかもしれない。
目では確認できなくても位置を掴む方法はある。
公転と自転を計算するのだ。
計算はベース22で終わらせてある。
ただ大気圏突入の時にズレる可能性もあるので油断はできない。
予定降下地点に何があるのかと言うと、ここには何もないのだ。
降下地点は広大な空白地帯で、近くにシルレーラの領域もモンスターの縄張りもない。
輸送船の航路の一つではあるけど、もっと便利な航路があるためほとんど使用されていない。
輸送船が通らないということはそれを狙う空賊もいない。
座標が多少ズレても、ここなら大丈夫なのだ。
場所的には統合軍の勢力圏だったりする。
これは意図的に選んだ。
中立の島や女王派の勢力圏は統合軍によって監視されている可能性がある。
そのため、目撃される危険が高い。
この地点は統合軍の勢力圏だけど、戦略的な重要性はほぼ皆無。この付近に統合軍の基地はない。
人里すらもない。他にも候補があったけど、ここが一番安全だった。
予定地点に無事到着した。
「陸、降下準備に入るよ」
「ラジャー!」
準備は始めるけど、降下はまだしない。
降下を開始するのは夕暮れ時。
星は動いている。停止しているとポイントから離れてしまうのでこちらも動きながら宇宙で待機する。
メジャーな航路ではないが、輸送船に遭遇する可能性がゼロではない。
夜間の航行は普通はしない。
夜の移動はそれだけ危険なのだ。
前回のヴィンディス降下が頭をよぎる。
あれは大失敗。宇宙船がスクラップになってしまった。
失敗の理由は色々あるけど、準備不足が一番の原因だ。
技術もなかったし、資源もなかったので大したことはできなかったかもしれないけど、もうちょっとうまくやれたんじゃないかと思ってしまう。
その反省を活かし、やれることは全部やっておいた。
それに一人じゃない。
あの時は一人で船の制御をしなければならなかったが、今は陸が一緒だ。
二人で作業を分担するので、対応力が上がる。
どんなトラブルが起きても乗り切れるだろう。
そろそろ時間だ。
降下を開始しよう。
「操縦は僕がするから。角度の計算はよろしく」
「ラジャー」
「じゃあ行くよ。準備はいい?」
「いつでもどうぞ」
コウノトリの進路をヴィンディスに向ける。
推進装置を使わなくても、ヴィンディスの引力に任せることで、降下することができる。
むしろ、使ってしまうとスピードが付き過ぎて危険になってしまう。
「このまま突入角を維持してください」
「ラジャー」
船体への負荷は最低限に抑えることができている。
上手く行きそうだ。
でも、まだ油断はできない。最後まで気を引き締めないと。
「停止するよ。衝撃に備えて」
成層圏を抜け、コウノトリは雲の真上に到達した。
ここまでは上手く行ったけど、まだ到着したとは言えない。
地上に到達するには雲の層を突破する必要がある。
ヴィンディス降下で最大の障害になるのはこの雲だ。
これがなかったら、ここまで緊張することはなかった。
前は大気圏突入の勢いで雲の層を無理矢理突破したが、今回もあれをやったら、船体に大きなダメージが生じる。
マイグラントレベルの耐久力がある機体じゃない限り、航行の続行は厳しくなる。
あの時のようにスクラップまでは行かないと思うけど、修理にかなりの時間を取られることになるだろう。
「僕は行ってくるから散布よろしくね」
「ラジャー。タイミングはどうしますか?」
「もう始めていいよ」
雲の層を突破する方法は用意してある。
アンチクラウドミストだ。
アンチクラウドミストはヴィンディス脱出時にも使用したコネコの発明品。
雲の固めることで流動性を失わせ、修復能力を奪うことができる。
今回使うのはそれの改良型、アンチクラウドミスト改。
アンチクラウドミストをクリアが改良した物だ。
効果時間は10分から30分へ。
浸透速度も約二倍に。
さらに固めると同時に雲を脆くする効果がある。
アンチクラウドミスト改を浸透させた雲なら無理矢理突き破っても船体に大きな損傷が出ないだろう。
50
あなたにおすすめの小説
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
姉妹差別の末路
京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します!
妹嫌悪。ゆるゆる設定
※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる