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2.王子

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 仕事も何もしてない俺は、好きな時間に寝て、好きな時間に起きている。

 毎日が日曜日で、自分の部屋だけを守っていればいい。

 異世界ライフ最高。

 魔族に乾杯だ。

 翌日も、昼に近い時間に起きていた。

 朝飯兼昼飯を食うために食堂に向かうと、伯爵家でもあるここの客間に、よく見知った奴が来ていた。

 顔を合わせないように、こそこそと移動するが、あれはこの国の第一王子、イライアスだ。

 年は16歳。もう、17か?

 妹、アタナシアとは幼なじみでもあり、まだ仲はいいと思う。

 魔王と王子の組み合わせってのもシュールだが……

 イライアスは、我が家が魔族だとは知らない。

 幼い頃は、イライアスのその膨大な魔力を安定させるために、この家でずっと過ごしていたけど、それでも俺たちの秘密は隠し通していた。

「ベレトさん、お久しぶりです」

 やべっ。

 隠れていたのに、向こうから声をかけられた。

「あ、ああ。久しぶりだな、王子」

 仕方がないから、イライアスの前に姿を現す。

「アタナシアの力を借りたくて、お邪魔しています」

「そうか」

 何かあったのか?

 まぁ、二人で適当に解決するだろ。

「それと、ベレトさんからも、復学のことを説得してくれませんか」

「あー……」

 ボリボリと頭をかく。

 イライアスの本当の目的はそっちか。

 アタナシアは、一年前から学校を休学している。

 その理由は……

 イライアスを見るが、知っているのか知らないふりをしているのか、俺には分からない。

 それに、俺自体が学校にすら行かなかったから、説得力あるのか!?

「俺よりも、アタナシアは結局のところ、王子の言うことの方がよく聞くだろう」

「そうでしょうか……」

 惚れたなんとかで、それはそうだろう。

 経験値のない俺には、お前達の問題は解決してやれん!

 二人とも俺よりしっかりしているのだから、二人で問題解決しろ!

「ま、まぁ、王子が推せば、アタナシアはそれに従うだろ。じゃあな!」

 めんどくさくなって、逃げるように食堂に駆け込んだ。

 それから20分後。

「お兄ちゃん、留守番よろしく」

 飯を食っていると、アタナシアはイライアスと出かけていった。

 この国では珍しい大量の獣人を捕まえたって聞いたのは、それから数時間後のことだった。




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