魔王の息子に転生したけどアイドルを愛でたくて妹に全部押し付けてみたのだが……【R18】

縁(えにし)

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1.よく寝た

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「うっほぅっ!!っはっ!!」

 自分の雄叫びで目を覚ましていた。

 勢いで掛け布団を蹴り飛ばし、ベッドの上から何かがバサバサと落ちる。

 悲鳴をあげて室内を飛び回っているのは、赤紫色の毛の塊のペット兼使い魔のインプのブブだ。

 ゴミ箱とか机とかにぶつかり、倒しながら、さらに悲鳴を上げている。

 それを横目に、未だベッドの上で体を起き上がらせたままの、脚の上に乗せている自分の手を見た。

 とてつもなくいい夢を見ていた気がするが、よくは思い出せん。

 この腕の中に、何かとてつもなくいい存在がいた気がする。

 たしか、黒猫だ。

 前世ではよく縁起が悪いとか言われていたけど、可愛らしい黒猫が出てきたような……

 それで、やたら健気で……

 まぁ、いいか。

 どうせ夢だ。

 自分にとって都合の良い夢だ。

 今、前世でって言った通り、俺には前世の記憶がある。

 俺の名前は、ベレト。

 これが今の名前だ。

 いかつい名前だが、中身はともかく、見た目だけは厳ついからどうしようも無い。

 俺は魔王の息子として、魔族の者として生を受けた。

 頭には禍々しく、先端が少しだけ曲がった鬼のような角が何本も生えていて、普段はそれを引っ込めて隠している。

 人のふりして生きている。

 そんな俺がベッドから降りてまず最初にしたことは、

「おはよう、リルルちゃん」

 壁に飾る等身大のポスターに話しかける。

 異世界を生き抜く俺の心の支え、セイレーン族のアイドル、リルルちゃんだ。

 サーモンピンクの髪を腰まで伸ばしていて、中程から先に軽いウェーブが入っている。

 毛先に行くほど、濃いグラデーションだ。

 エメラルドグリーンの瞳は吸い込まれそうで、マイクを持って、こっちを指差しているポーズに、思わず頬擦りしていた。

 体を離す。

 結局、平和に生きたい俺は、俺よりもさらに平和主義で真面目な妹に、親父が引退した後の魔王の座を譲ることにした(押し付けた)

 だから今は、妹が魔王を継承している。

 

 前世から俺が貫いている信念だ。

 前世の俺は、アイドルオタクだった。

 30年ちょっとの人生を、全てをそこに費やした。

 わりと短い人生はあっけなく幕を閉じたが、アイドル追っかけ人生に悔いはなかった。

 そして、今だ。

 転生したことに気付いた俺が、アイドルがいないこの世界に絶望することなく生きてこられたのは、魔族の叡智を集結させて、セイレーン属のアイドル、リルルちゃんを誕生させることができたからだ。

 プロデューサーみたいな真似事をして、苦労した。

 でもやりがいがあった。

 自分の育てたアイドルが、みんなから応援されて、さらに成長しているんだ。

 今はもう俺の手を離れ、自立して頑張っている。

 俺はイチファンとして、彼女を応援するのみだ。

 あぁ、リルルちゃん可愛い。

 また、ポスターに頬擦りする。

 やべぇ、興奮し過ぎて、うっかり角が出た。



「おにいちゃん!おにいちゃん!」



 妹の声が聞こえた気がしたけど、まぁいいか。

 妹は優秀だ。

 何かあっても、適当に解決してくれる。



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