魔王の息子に転生したけどアイドルを愛でたくて妹に全部押し付けてみたのだが……【R18】

縁(えにし)

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4.落とし物

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 そしてその勢いのまま、国を出て、船に乗って、魔族が住む大陸に足を踏み入れていた。

 異国の地ではあるけど、あまり特異な点は見られない。

 乗り合い馬車を乗り継ぎ、魔の森に接している領地へ向かった。

 そして、それは、馬車を降りてすぐのことだった。

「やべっ」

 そんな男の人の声と共に、バサバサと何かが落ちる音がした。

 振り向くと、随分と体格のいい男性が落としたものを拾っていた。

 その人は、切れ長の、鋭い目つきをしていた。

 黒い髪は後ろに撫で付けている。

 怖い。

 第一印象はそれだ。

 あんまり関わりたくないから、無視することもできた。

 でも、焦るその人を見ると放って置けなくて……

 しゃがんで物を拾い集める。

「ありがとう」 

 フードは目深に被っているとはいえ、私みたいな浮浪者に触れられるのを断られるかもと思ったけど、意外にも、穏やかな声でお礼を言われたので、そのままお手伝いを続けた。

 落とし物は、不思議な物がいっぱいだった。

 小さな人形?

 土がついていたので、服の袖で拭いた。

「服が汚れるからいいよ、そこまでしなくても」

「あ、はい」

 拾って、土は手で払って紙袋にいれていく。

 本当に、不思議な物ばかりだった。

 文字が刺繍されているタオル?

 文字が書かれている、細長い布。

 あい らぶ りるる?

 どんな意味なのかな?

 これは何なのかな。

 手にした物は警棒のようだけど、持ち手のところはサーモンピンクで、真ん中から上側が半透明になっていた。

 握った時に誤って突起を押してしまったようで、カチっと音がしたかと思えば、半透明部分に淡い光が灯って驚いた。

「や、あの、ごめんなさい」

 焦り、慌てて消そうとしても、消し方が分からない。

「ああ、いいよ。ここを押せばいいだけだから」

 また優しく声をかけられて、その警棒を受け取ると、難なく光を消していた。

 魔法みたい……

 そんな不思議な物がいっぱいの落とした物を拾い終わり、その人が立ち上がった姿を改めて見ると、150cmちょっとの私では見上げるほどだった。

 2mは超えているんじゃないのかな。

 やっぱり、見下ろしてくる切れ長の目が怖いけど……

「助かった。わざわざ手伝ってくれてありがとう。何かお礼を……」

「あ、いえ、これくらい当然のことです。大切な物のようでしたので。どうかお気遣いなく」

 目の前でぶんぶんと手を振る。

「あのでも、大切な物をやぶれた紙袋だとまた落とすかもしれませんから、これよかったら使ってください」

 カバンから大きめの麻袋を取り出して、男の人が抱えている荷物を丸ごといれてあげた。

「ありがとう。何から何まで。本当にお礼は……」

「いりません!大丈夫です!では!」

 ペコリと頭を下げて、早々に退散することにした。

 全力でそこから走り去って、少し進んだところで違和感に気付いた。

 自分の外套に何かが引っかかっている。

 さっきしゃがんだ時に、落ちていたものが引っかかったのかな。

 よく見ると、ガラスのように透明な板に可愛らしい女の子の絵がついていて、それに小さなチェーンが付いているものだった。
 
 そのチェーンのフックが、私の外套に引っかかっていたようだ。

「どうしよう。これも、きっと大切な物だよね」

 ユラユラと小さく揺れるそれを見つめながらも、すぐに来た方向に引き返したけど、あの男の人の姿はもうなかった。

 多分そっちに行っただろうと思う方向へ向かう。

 キョロキョロと周りを見渡しても、大きくて目立つ人なのに、それらしき人はいない。

 それどころか、民家もないようで、こっちじゃないのかと引き返そうとしていたら、

「あら。獣人さんは、珍しいね」

 あまり自分と歳の変わらない、少女といっていいヒトに声をかけられていた。

 フードは被っていたけど、左手の甲の洗礼印が見えたのだと思う。

「どうしたの?困りごと?」

 それでも、変わらず、優しい口調だ。

 育ちが良さそうなお嬢さんなのに、随分と気さくに話しかけてくれていた。

「あ、いえ、あの、人を探していて、これを落とした持ち主さんを探していて、こっちの方に来たと思ったのだけど、大きなお屋敷しかなくて、でもこれきっと大切なものかなって」

 差し出したそれを見た女の子は、口元を引きつらせていた。

「あー……あの、多分それうちのお兄ちゃんの……」

「えっ、そうなんだ」

 とても幸運な巡り合わせだったけど、

「お時間ありますか?お兄ちゃんに直接お礼を言わせたいので」

「あの、でも、私が行くのは……」

 その意味を伝えるために、相手は気付いていたけど、フードを外した。

 女の子、妹さんは、私の顔を見ると、

「お兄ちゃん、絶対に喜ぶと思うから、このまま会ってあげて」

 にっこりと微笑んで、すぐ近くにあった大きな屋敷の中へと招き入れてくれていた。






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