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土曜神の静寂な愛【50話~60話】
土中の眠り!!
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――区切りを付けて……。
夕食で空きすぎたお腹も満たし、風呂を満喫した翠は相も変わらずテレビを見てはあくびをしている。
こちらの番組なんてわかるわけでもないがニュースを好んでよく見て、この世界を学ぶ。
本当に当たり前だが毎日何かしら起きてはいるものの、犯罪といった類いの記事を見ない限りは恵まれて幸せだと想いにふける。
「ふわぁー……もう二十二時か? 」
ニュースのアナウンサーが二十二時を告げては翠も壁に掛けられている時計を見つめる。
テレビを消すとカチコチと時計の微弱な音だけが静かな空間にこだます。
「そう言えば桃子さんは見ないな、寝たのか?」
元から静かな彼女には悪いが存在自体を素で忘れてしまっていた。
思い返すと十八時くらいにカチャカチャと食器を洗って拭いてる音はしたから、台所に居たのはわかるが、それっきりはわからない。
「まぁ、うん……。」
七曜神全員は体が違えど同一人物でお風呂が好きなのは変わらない。
一通りご飯の片付けをしたら決まってお風呂に入るため、入った後に桃子はすぐに寝たのだろうと推測する。
他の七曜神、明日の日曜神はどうかは知らないが、風呂から上がったら大抵はテレビを見たりゲームをしてたり自由気ままなのだから、早寝をする桃子だってごく自然。
そう考えていたのだが、瞬間顔が青ざめる。
「お、お風呂上がったって伝えてくれよーっ!!」
桃子は無口な為なのか、ただ単に忘れてただけなのかは知らないが今さら気が付いた為に、慌てて風呂の支度をする。
――かなり風呂は温くなっているが入れないわけでもない……。
七曜神にもお風呂のお湯の温度の好みはあり、風呂上がりに入ると皆の適温がある程度把握できる。
智美は極端に熱く、絵麻は極端に温いのを好む以外は大抵は数度差はあるものの、長風呂が好きなのは全員共通。
「炊き直すかな?」
機械のボタンをポチッと押して四十四度に設定する。
熱くなるまでは五分はかかるみたいなので体を洗うことにし、温くなった湯船から出てはマットの上に座り、体洗いのタオルにボディーソープを付けてはゴシゴシと丁寧に洗う。
「良い香りだな……うん。」
赤いボトルには良くわからない花が描かれており、その花から抽出したオイルやエキスでできているのだそうだ。
しばらく体を洗っていると、ふと頭にこんなことが過る。
「自分は同一人物であるにも関わらずに、桃子さんや智美さん、恋さん……菊花さんに恵麻さんに、愛してるとか好きとか言って二股以上の最低の男なのか? 誰を好きになれば良いのかな……。」
考えても答えのでない自問と自答に迷ってしまい、お湯の温めの合図にも一瞬気がつかないほどに没頭するほど。
再び熱くなった風呂に浸かりながらも考える。
とても悩んで考える。
「俺は本当は誰が好きなんだ?」
神社の物置の倉庫に七曜神について記された書物を火曜日に見つけて、手にとって読んだことを思い出す。
日曜神から月曜神の七人は本来は一人の七曜神という女神様であり、一人では有り余る広大な大陸を治めきれないが故に自らを七分割にした内の一人一人の姿なのだと。
本当の七曜神、本来の姿を見たことすら無いのに果たして好きとか愛してるとかの思い言葉を言うことができるのかと思うと、自分がいかに無責任に言いながら抱き続けてきた罪悪感が身によじるような感覚を覚える。
「もし、本当の七曜神が可愛くなかったら……それでも愛し続けられるのかな……。 けど、日曜神はどうかはわからないけど、みんな可愛いから……。」
愛するのに必要なのは顔の可愛いさではなく本来は心だと言い聞かせるも、やはり可愛くない女性を愛したいかというと本音はNOに近いのが男というもの。
例外はあるかもしれないが、翠は前者なのでどうにも気にしてしまう。
「……………………。」
翠にはもはや考えることができなかった。
人と神の愛など、ごく一般の高校生の翠には重すぎたのだ。
一人で幾重の違う姿を持つ人ならざる力を持つ女神様で、実際にその力だって目にしている。
何も今は考えることも感じることもできない翠はそれでもしっかりと頭を洗って温まって、最後にはここでは全くしなかった風呂掃除を終わらせては、二十三時半という一日のほぼ終わりの時に静かに布団の中で瞳を閉じては深き眠りに就いた。
夕食で空きすぎたお腹も満たし、風呂を満喫した翠は相も変わらずテレビを見てはあくびをしている。
こちらの番組なんてわかるわけでもないがニュースを好んでよく見て、この世界を学ぶ。
本当に当たり前だが毎日何かしら起きてはいるものの、犯罪といった類いの記事を見ない限りは恵まれて幸せだと想いにふける。
「ふわぁー……もう二十二時か? 」
ニュースのアナウンサーが二十二時を告げては翠も壁に掛けられている時計を見つめる。
テレビを消すとカチコチと時計の微弱な音だけが静かな空間にこだます。
「そう言えば桃子さんは見ないな、寝たのか?」
元から静かな彼女には悪いが存在自体を素で忘れてしまっていた。
思い返すと十八時くらいにカチャカチャと食器を洗って拭いてる音はしたから、台所に居たのはわかるが、それっきりはわからない。
「まぁ、うん……。」
七曜神全員は体が違えど同一人物でお風呂が好きなのは変わらない。
一通りご飯の片付けをしたら決まってお風呂に入るため、入った後に桃子はすぐに寝たのだろうと推測する。
他の七曜神、明日の日曜神はどうかは知らないが、風呂から上がったら大抵はテレビを見たりゲームをしてたり自由気ままなのだから、早寝をする桃子だってごく自然。
そう考えていたのだが、瞬間顔が青ざめる。
「お、お風呂上がったって伝えてくれよーっ!!」
桃子は無口な為なのか、ただ単に忘れてただけなのかは知らないが今さら気が付いた為に、慌てて風呂の支度をする。
――かなり風呂は温くなっているが入れないわけでもない……。
七曜神にもお風呂のお湯の温度の好みはあり、風呂上がりに入ると皆の適温がある程度把握できる。
智美は極端に熱く、絵麻は極端に温いのを好む以外は大抵は数度差はあるものの、長風呂が好きなのは全員共通。
「炊き直すかな?」
機械のボタンをポチッと押して四十四度に設定する。
熱くなるまでは五分はかかるみたいなので体を洗うことにし、温くなった湯船から出てはマットの上に座り、体洗いのタオルにボディーソープを付けてはゴシゴシと丁寧に洗う。
「良い香りだな……うん。」
赤いボトルには良くわからない花が描かれており、その花から抽出したオイルやエキスでできているのだそうだ。
しばらく体を洗っていると、ふと頭にこんなことが過る。
「自分は同一人物であるにも関わらずに、桃子さんや智美さん、恋さん……菊花さんに恵麻さんに、愛してるとか好きとか言って二股以上の最低の男なのか? 誰を好きになれば良いのかな……。」
考えても答えのでない自問と自答に迷ってしまい、お湯の温めの合図にも一瞬気がつかないほどに没頭するほど。
再び熱くなった風呂に浸かりながらも考える。
とても悩んで考える。
「俺は本当は誰が好きなんだ?」
神社の物置の倉庫に七曜神について記された書物を火曜日に見つけて、手にとって読んだことを思い出す。
日曜神から月曜神の七人は本来は一人の七曜神という女神様であり、一人では有り余る広大な大陸を治めきれないが故に自らを七分割にした内の一人一人の姿なのだと。
本当の七曜神、本来の姿を見たことすら無いのに果たして好きとか愛してるとかの思い言葉を言うことができるのかと思うと、自分がいかに無責任に言いながら抱き続けてきた罪悪感が身によじるような感覚を覚える。
「もし、本当の七曜神が可愛くなかったら……それでも愛し続けられるのかな……。 けど、日曜神はどうかはわからないけど、みんな可愛いから……。」
愛するのに必要なのは顔の可愛いさではなく本来は心だと言い聞かせるも、やはり可愛くない女性を愛したいかというと本音はNOに近いのが男というもの。
例外はあるかもしれないが、翠は前者なのでどうにも気にしてしまう。
「……………………。」
翠にはもはや考えることができなかった。
人と神の愛など、ごく一般の高校生の翠には重すぎたのだ。
一人で幾重の違う姿を持つ人ならざる力を持つ女神様で、実際にその力だって目にしている。
何も今は考えることも感じることもできない翠はそれでもしっかりと頭を洗って温まって、最後にはここでは全くしなかった風呂掃除を終わらせては、二十三時半という一日のほぼ終わりの時に静かに布団の中で瞳を閉じては深き眠りに就いた。
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