神様project【七曜の女神と幾億の旅跡】

青衣

文字の大きさ
5 / 121
序章【ヒラメキから始まるお話】

爆焔の大地に愛を込めて

しおりを挟む
 少しずつ迫り来る暴力的な圧力は玄弥と私の緊張感を高めさせてくれる。
 そんな馬鹿げた存在であっても元よりは同一人物の別人、そう……攻撃的の自分の権現と言った方がしっくり来るんじゃないだろうか?

 簡単に説明するとなると私達は元々ひとつの存在であり、まだ結愛が女の子じゃなく女性……あるいは少女の見た目の時の事だっただろうか。
 すまないな、あまりにも途方にもない過去のことなので私自身でもこれについてはうろ覚えになりそうだが許してほしい。

 今の結愛はとても自己中心的な態度をとるがもとからそんな性格というわけではなく、今は感情にそれくらいのものしか残ってないという方が正しいとも言えなくもない。
 とある事件を境目に彼女の身体は十にも引き裂かれ、その時心も身体もバラバラになってしまった。

 察しが付けられるみんなならわかるんじゃないかな。



 ……その引き裂かれた結愛の一人が私や玄弥だということについては。



 まあ簡単すぎただろうか、玄弥の心には結愛の気合や根性という感情……私には冷酷という感情が孤立して独立したものとなって生きている。

 しかし引き裂かれ心がひとつしかないというのは大間違いだ、私は結愛の冷酷という感情の持ち主だが丸っきり冷酷というわけではない。
 優しさだったり怒り、悲しみ……普通の人間の感情とは何一つ変わらないものはきちんと芽生えているが特に強い感情が冷酷と言うだけなのだ。
 ただ単純にそれオンリーという訳じゃないから安心してほしい。

「そうよね、私なんて力で人をねじ伏せるのが好きで好きでたまらないのに慈愛なんて感情もいっぱし芽生えてるから面白いのよねぇ。」

 そうだ、そんな智美にも他人を思いやる気持ち……気持ちが、って……ひゃああぁぁっ!?
 いつの間に横に!?
 しかもどさくさに紛れて会話に入っちゃってるんだが……どうなのそれは。

「何だい、3人もがん首揃えてココにやって来るなんて……なんかあったの? 明日雪でも降るの? ねぇ。」

 肩をガッて掴まれた……、握る力が強すぎて骨が悲鳴をあげそうだ。
 逃げたい、逃げ出したくない?

「よぉ、智美。 今回はとても大切な用件で来たんだぜ!!」

「そうよっ、聞いて驚きなさいっ!! 七刻を観光地にするべく大開拓するの、まずは陽光の港にぃ……。」

 やはりアポ無しの突撃じゃ何をいってるのかチンプンカンプンだろう、智美が首をかしげてるじゃないか。

「港って言っても浅瀬の桟橋がある程度でしょ? 豪華客船とか漁業が出来るくらいに拡張したいから石材とかたくさんチョーダイっ!!」

 結愛は何一つ曇りの無い純粋な笑顔、そして智美に向けられた山盛りの石材を期待する両腕と可愛らしい小さな手。
 智美も事情がわかったにはわかったが、まずは綿密な計画がほしいところだろう。
 ただ単に港の拡張と言われても設計図や使う資材の量など計算しなくてはならない。

「うー……少し考えさせて。 いろいろ準備したいからさ。 まぁ、でも私はダメとは言わないわ……この素敵な計画にはね。 でもやるからには全土をやりなさい、陽光だけじゃ私の土地にはデメリットしかないんだから。」

 それはそうだろう、ただ資材を提供するだけならムシがよさ過ぎるだけ……燎煉は赤字も赤字、大赤字だ。
 と言うかもとから赤くて紅いこの土地をさらに赤く染め上げるとは結愛も恐ろしい。

「安心して、港が完成したらこの発電所の設備もこの土地もまるごと生まれ変わらせてやるんだから楽しみにしてなさいっ!!」

 結愛はまた決めポーズ。
 だが、案外今回もあっさりと案件が通って……命があって助かった。

 とりあえずこれで今私が思い付く第一プランは無事に終えられた。
 でも今すぐ作業に取りかかれる訳じゃない、私は特に玄弥と智美に後程作業の日程などが決まり次第連絡をしてほしいとメールでも入れておくかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...