神様project【七曜の女神と幾億の旅跡】

青衣

文字の大きさ
24 / 121
第2章【月曜の荒野《夜朧》】

怪物と侍と乙女の涙

しおりを挟む
 もうどっちがどっちなのやら見ていてわかんないような気がするのは気のせいだろうか?
 玄弥と門番の両方とも鬼のような形相で睨みあいをしているんだから私が両成敗してやってもいいんだがなぁ……まったく男という生き物はどうしてこうなんだろう。

 ほら見ろ、結愛なんて飽きて蝶追いかけて遊ぶ始末だし……本当にこれでいいのか不安になってきたんだが。

「きっ、貴様アァッ……物怪の類いかっ!! ええい、人の面を被った化物になんぞ夜朧は屈せぬぞぉっ!!」

 玄弥がナニをチャックに挟んで悶絶する顔は確かにこの世のものとは思えないが、そんなに痛いものなのか?
 いや……わからなくても私は結構だが門番の言うことも一理はある。
 もはや玄弥は化け物でもいいんじゃないかな。

 それよりもいくら刃こぼれしてるとはいえ本物の刀を抜き身でこちらに向けているとなると少々厄介な事になりかねないに違いなく、万が一相手から攻撃を仕掛けたとしてもこちらが1度でも手を出せば……言わなくてもわかるだろう?
 それに玄弥は短気だし売られた喧嘩は買う主義だ、私がなんとか阻止しなきゃ大変なことになってしまう。

「はんっ、そんなボロボロな刀を俺に向けてタダで済むと思わねぇ事だな。」



 ……まずい、玄弥は一般人に神器を使うつもりだ。



 神器とは言わずもがな神が持つ特有の道具や武器の事で、私の場合はこの鎌なのだが……ってぇ、今はそんなことを悠長に説明してる場合じゃない。

 戦闘が始まれば結果は目に見えてる、門番は瞬殺される。
 基本的には他の地方の民同士で殺傷などタブーに近く、ましてや玄弥は1つの地方の長なのだ、それをわかった上でこういうことをしているとは考えたくもないが彼もナイフを抜き身で門番に向けてる以上は遊びじゃない。
 ひしひしと伝わるこのオーラは紛れもなく本物の殺気。

「お、おい玄弥っ!! バカな真似はよせ。」

 私だって恐怖を感じるとこはある、事実私が本気を出したとて玄弥に勝てるかどうかすら危ういのに……脳が恐怖心より先に体を動かしてしまった。
 ナイフを握っている体をギュッーっと抱き締めて止めるかのように……。

「くっ、離せよっ!!」

「やだっ!! 玄弥お前何をしようとしてるのかわかっているのか!? こんなくだらない揉め事で計画がメチャクチャになってもいいのかっ!?」

 私はこの計画をぜひとも応援して七刻を豊かに賑やかにしたいんだ。
 じゃないと私の主が救われない……ここでこの計画を潰されてなるものか。



 そう、主が救われなきゃ私達は消えてしまうんだ……。



 それでも私は恐怖心に押し潰され続けながらも彼を抱き締め続けた。
 とても長い時間が流れたように思えるほどで、彼の右手に持つナイフがいつ私の背中に突き刺さろうとも……。

 ははっ、一丁前に私も涙を流して泣くものなのだな、この涙は女の武器……ちょっとだけその権利を使わせてもらうぞ。















 1分がまるで3分くらいの長さに思えたが私にはどうだっていい、頭に温かな手のひらの感触が伝わってきた。
 私の思いは届いたのだろうか?
 いや、届いてくれなきゃ嫌なんだがなぁ……だって、私を泣かせっぱなしにするとなると玄弥は男として失格なんだからな!!

「女を泣かせるのは俺の主義に反する、悪かった悪かった。 実際相手の刃を叩き折って威嚇するつもりで直接怪我させたりするつもりは無かったんだぜ……うぅ、困ったぜ。 冥綾を泣かせた俺はどうすれば。」

 ほほー、やはりプライド捨ててちょっと泣いてみれば男なんてコロッと落ちるもの。
 いかんいかん、これじゃ私は魔性の女じゃないか。
 けど玄弥に撫でられるのは勇気振り絞って止めたご褒美として受け取ってもらうよ、相当殺意が向けられて怖かったんだからさ。

 ん? なにやら強い力が接近するのが頭のアホ毛で関知できるがまさかっ!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...