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第2章【月曜の荒野《夜朧》】
大きく、そして静かに
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車は夜朧のかりそめの城下町へとたどり着き、中からは剣幕な表情をした玄弥が一気に飛び出て言った。
人一倍焦るのも仕方ないかもしれない、恵麻だって大切な妹分なのだし。
そういえば遠回しからはわからなかったが見れば見るほど立派な城下町……とはまた少しほど遠いかもしれないが今はそんなことを言っている場合じゃない。
3人と私は恵麻の元へと急ぐ。
巨大なお城に長屋と簡素な街並みではあるものの城壁と言えるものが何もないためガラガラで防御が手薄っぽく感じるが……っと、結愛が長屋から手を振っている。
あそこか!?
「おーいっ、こっちよ!!」
部屋の奥には布団に横たわっているいて恵麻の姿が見える。
元々色白っぽいが血の気が引いてさらに青白く、呼吸が安定してない……これは少し危険だね。
「恵麻ぁっ!! 無事か……クソッ、ムチャしやがって。」
「えへへ……聖奈さんにビックリしてほしくて。」
「ど、どうしてこんな無茶を……私ちっとも嬉しくありませんッ!!」
聖奈だって心の中で喜びたい、喜びたいのに目に涙を浮かべて……その手には握り拳を震わせて、とても悔しそうな表情を見せていた。
普段聖奈はこんな表情をすることなんて無いのに、だからだろうか……どれほど恵麻が大切だったのか手に取るようにわかる。
「恵麻ちゃん大丈夫!? ……じゃなさそうだよぉ~。 」
「あはは、暖かいですねぇ。」
心配した天音は恵麻の手を優しく握り締めると恵麻は微笑んで見せた。
皆に会えた影響からなのだろうか、恵麻の容態は著しく安定し始めたのだが……こうなったら私の予想だとあとは放っておいても徐々に全回復するだろうから、もう何も心配はいらないに違いない……むしろそれが一番の薬だと思う。
「峠は越したみたいだ、んじゃ俺は宴会の時間まで寝てるわ。 いい感じになったら起こしてくれよな……よっと。」
恵麻が寝てる長屋の部屋の隅っこにゴロンと横になる玄弥だが誰一人としてそれを止めようとするものは居ない、彼がお疲れモードなのは百も承知だし断る理由もない。
激しい車の運転から解放されたのだ、みっともなく背中を向けてはポリポリと掻いて居眠りを始めてしまった。
「じゃあ私は城の中にでも入ってきますね。 どうなってるか楽しみなんです!!」
「お~、探険だ!! 何か無いかなぁ?」
「私も行くわっ!!」
できたてホヤホヤだから何もないと思うけどね。
と、思いつつもやはり気になって仕方ないのか聖奈と結愛と天音はさっそくお城へと探険しに行ったみたいで、少しは静かになっただろう。
十中八九うるさいのは結愛だがね、あっ……結愛に言っちゃダメだよ?
さて、私も眠気がだんだんと強くなってきたようだから居眠りできる場所を確保して何とか休みたいものだが……ん?
辺りを見渡してもこれ以上布団は見当たらない。
残念ながらお布団がなきゃ私は玄弥のようにそこらじゅうで眠れるタイプじゃなくて、身体に何か布団特有の重みってものが感じられなきゃ寝にくいんだ。
わかるかな、この伝えたい感覚。
疲れすぎて眠気がヤバイときは例外で布団以外では寝ることはあるけどさ……基本はね?
いくら新居の長屋が大きくなったとて【物】自体が元々ある訳じゃなく、当然のことだが押し入れの中は何も入ってない。
もちろん城も中にだって何があるって訳じゃなくこれから家具などを配備して豪華にしていくしかない、まさにもぬけの殻って感じなのかな。
そしてここにある布団は……もう言わなくてもわかるだろう?
どっかから持ってきたかはわからないが、恵麻が使ってる1セットだけしかいまこの場に布団がないってこと。
さすがに強奪できるほどキモが座ってる訳じゃないし、可哀想だと思うからなぁ。
じゃあどうするか?
【お邪魔しまーす】である。
シェアの心、うん……良いねぇ、一方的に潜り込むだけだけど。
私は何の躊躇いもなく……心を無にして入った。
「ひゃあっ!? め……冥綾さん!?」
うぉっ、わかってても冷たいなぁ。
時雨の民はそうだが、恵麻は人の体温よりはるかに低いため布団が生ぬるいを通り越して冷たい。
冬場に放置された布団のような感覚で、裏表に霜がビッシリ付いてるような冷たさだ。
それでも時雨の民達は暖かいのが大好きだからな……もちろん冷たいのも慣れっこで好きだが。
ふふっ、じゃあどうするかって……?
こうするのさッ!!
恵麻にギュッて抱きついてあげると最初は困惑していたものの、私から伝わる暖かさで頬を紅潮させる。
聖奈によく似た反応で可愛らしいものだ。
「あ、暖かいです。」
私は冷たいけどな。
けど、恵麻が喜んでくれるなら夕方までは付き合ってやらなくもない。
とりあえずお休みってところかな。
人一倍焦るのも仕方ないかもしれない、恵麻だって大切な妹分なのだし。
そういえば遠回しからはわからなかったが見れば見るほど立派な城下町……とはまた少しほど遠いかもしれないが今はそんなことを言っている場合じゃない。
3人と私は恵麻の元へと急ぐ。
巨大なお城に長屋と簡素な街並みではあるものの城壁と言えるものが何もないためガラガラで防御が手薄っぽく感じるが……っと、結愛が長屋から手を振っている。
あそこか!?
「おーいっ、こっちよ!!」
部屋の奥には布団に横たわっているいて恵麻の姿が見える。
元々色白っぽいが血の気が引いてさらに青白く、呼吸が安定してない……これは少し危険だね。
「恵麻ぁっ!! 無事か……クソッ、ムチャしやがって。」
「えへへ……聖奈さんにビックリしてほしくて。」
「ど、どうしてこんな無茶を……私ちっとも嬉しくありませんッ!!」
聖奈だって心の中で喜びたい、喜びたいのに目に涙を浮かべて……その手には握り拳を震わせて、とても悔しそうな表情を見せていた。
普段聖奈はこんな表情をすることなんて無いのに、だからだろうか……どれほど恵麻が大切だったのか手に取るようにわかる。
「恵麻ちゃん大丈夫!? ……じゃなさそうだよぉ~。 」
「あはは、暖かいですねぇ。」
心配した天音は恵麻の手を優しく握り締めると恵麻は微笑んで見せた。
皆に会えた影響からなのだろうか、恵麻の容態は著しく安定し始めたのだが……こうなったら私の予想だとあとは放っておいても徐々に全回復するだろうから、もう何も心配はいらないに違いない……むしろそれが一番の薬だと思う。
「峠は越したみたいだ、んじゃ俺は宴会の時間まで寝てるわ。 いい感じになったら起こしてくれよな……よっと。」
恵麻が寝てる長屋の部屋の隅っこにゴロンと横になる玄弥だが誰一人としてそれを止めようとするものは居ない、彼がお疲れモードなのは百も承知だし断る理由もない。
激しい車の運転から解放されたのだ、みっともなく背中を向けてはポリポリと掻いて居眠りを始めてしまった。
「じゃあ私は城の中にでも入ってきますね。 どうなってるか楽しみなんです!!」
「お~、探険だ!! 何か無いかなぁ?」
「私も行くわっ!!」
できたてホヤホヤだから何もないと思うけどね。
と、思いつつもやはり気になって仕方ないのか聖奈と結愛と天音はさっそくお城へと探険しに行ったみたいで、少しは静かになっただろう。
十中八九うるさいのは結愛だがね、あっ……結愛に言っちゃダメだよ?
さて、私も眠気がだんだんと強くなってきたようだから居眠りできる場所を確保して何とか休みたいものだが……ん?
辺りを見渡してもこれ以上布団は見当たらない。
残念ながらお布団がなきゃ私は玄弥のようにそこらじゅうで眠れるタイプじゃなくて、身体に何か布団特有の重みってものが感じられなきゃ寝にくいんだ。
わかるかな、この伝えたい感覚。
疲れすぎて眠気がヤバイときは例外で布団以外では寝ることはあるけどさ……基本はね?
いくら新居の長屋が大きくなったとて【物】自体が元々ある訳じゃなく、当然のことだが押し入れの中は何も入ってない。
もちろん城も中にだって何があるって訳じゃなくこれから家具などを配備して豪華にしていくしかない、まさにもぬけの殻って感じなのかな。
そしてここにある布団は……もう言わなくてもわかるだろう?
どっかから持ってきたかはわからないが、恵麻が使ってる1セットだけしかいまこの場に布団がないってこと。
さすがに強奪できるほどキモが座ってる訳じゃないし、可哀想だと思うからなぁ。
じゃあどうするか?
【お邪魔しまーす】である。
シェアの心、うん……良いねぇ、一方的に潜り込むだけだけど。
私は何の躊躇いもなく……心を無にして入った。
「ひゃあっ!? め……冥綾さん!?」
うぉっ、わかってても冷たいなぁ。
時雨の民はそうだが、恵麻は人の体温よりはるかに低いため布団が生ぬるいを通り越して冷たい。
冬場に放置された布団のような感覚で、裏表に霜がビッシリ付いてるような冷たさだ。
それでも時雨の民達は暖かいのが大好きだからな……もちろん冷たいのも慣れっこで好きだが。
ふふっ、じゃあどうするかって……?
こうするのさッ!!
恵麻にギュッて抱きついてあげると最初は困惑していたものの、私から伝わる暖かさで頬を紅潮させる。
聖奈によく似た反応で可愛らしいものだ。
「あ、暖かいです。」
私は冷たいけどな。
けど、恵麻が喜んでくれるなら夕方までは付き合ってやらなくもない。
とりあえずお休みってところかな。
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