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第3章【火曜の火山《燎煉》】
お外の空気はいかほどか
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私はこのシャバの空気をどれ程待ち望んだことか、胸いっぱいに吸い込んでは退院を自ら祝いに祝っている。
まあ、刑務所から出所した訳でもないのにシャバとはずいぶんな言いようだと思うかい?
けどあんな不自由な場所は2度とゴメンってね、だからシャバと呼んだってあながち間違ってなかったような気がしてなら無いのさ。
だから細かいことは気にしない気にしない。
それに地獄よろしく三途の川で働く私が言うのもなんだけどね。
あと胸いっぱいに空気を吸っても新鮮な空気は美味しくても大きくならんからなぁ、残念だ。
「おー、やっぱり近場で見ると雰囲気違うなー。」
遠回しでしか見えなかったモノも近場では迫力満点でやはり作業員が展示物を搬入している最中。
それでも私が試しに手を振って見ると振り返してくれる連中もチラホラと。
あまり燎煉の発電所にいなくても見知った顔、こう言うことも職場の中では大切なコミニュケーションの一環ではないだろうか?
まぁ、本来の私の職場ではそんなことなどする事も意味も見い出せないからアレだが……試してみるものだな。
何よりも反応を返してくれるのが1番嬉しいってものよ。
「おっ、結愛もいる。」
小さな梱包材に包まれた箱を持ちながら博物館内を出入りする結愛を発見した。
今更感って訳でもないけど、こんな小さくて可愛らしい女の子にあんなハードな仕事をさせるよりスキルに見合う仕事をさせる方が本領を発揮してくれる。
結愛だってにこやかに笑いながら仕事を頑張ってくれて、私も嬉しく思うよ。
「あっ、冥綾っ!! 退院したのね。」
「極度な疲労だけであんなに入院させられるとは思わなかった。」
点滴打たれて車イスに揺られて、挙げ句のは果てにはリンゴ地獄と来る。
暇かと言えどパソコンは飽きて退屈……あまりいい思い出がなくて苦笑いをすると結愛も察してくれた。
とうの彼女も入院中は【暇だー】だの【暇だー】だのひっきり無しにボヤいていたような気がした。
と言うか……同じことしか言わないがとにかく暇としか聞こえなかったのは隣で横になっていた私の耳にタコが出来そうだったわ。
いたって健康の子供にベッドでじっと休憩してろなんてムチャは通るはずもなく、ましてや結愛だよ?
落ち着けるはずが無いじゃないか。
「結愛っ、速くっ……こっちよ。」
「あっ、ごめーん。」
すまない、結愛と久々に話せて引き留めて悪かった。
智美の催促が飛んできたのは私の責任だ、だから【頑張れ】って感じでピンク色の髪の毛をポンポンってしてやると、機嫌を取り戻してくれる。
この点の扱いにいたってはチョロいもの……ちょっと不機嫌そうになってもよっぽどの事じゃなければこれで事足りてしまう。
結愛は智美と一緒に館内へと消えて行く。
改めて見上げると外装はともかく、内装も完璧だと察すると中身はカラッポ言えども燎煉での私の仕事は事実上終了……いや、広告や資料の作成という点では自分の仕事は終わった訳じゃない。
燎煉の見所満載って訳じゃないが、写真は倒れる前にそれなりに撮ってきたつもりだ。
とはいえ火山の荒々しさをメインに添えてるのしかないから、どうにかして館内の内部の撮影……は許可降りなさそうだしせめて外部だけでもオッケー貰ってくるとするかな。
一応私も職員としての権限はいまだに健在、必要ならば美術品や展示品がなるべく写らないならば写真に少しは写しても構わないとのこと。
あとでその撮影した写真は智美を通して使っていいものの選別は必ずする事……という条件を元になんとか内部へと入ることが許された。
相変わらず燎煉の赤い作業着が目立つなか、私だけ場をわきまえないゴシックドレスだからちょっとだけ後ろめたい気もする。
私だってわかってるんだよ? この服装の事についてはね。
子供ならいざ知らず、いい歳した女子高生の女神がこんなフリフリ着てってバカにしてくれても構わない、だがなッ……私は好きで着てるから良いんだよ。
実年齢? 私は結愛そのものだ、見た目はどうあれ聖奈も智美も、あまつさえ桃子とすら同年齢としか言えないな。
それじゃ、撮影開始と行きますか。
まあ、刑務所から出所した訳でもないのにシャバとはずいぶんな言いようだと思うかい?
けどあんな不自由な場所は2度とゴメンってね、だからシャバと呼んだってあながち間違ってなかったような気がしてなら無いのさ。
だから細かいことは気にしない気にしない。
それに地獄よろしく三途の川で働く私が言うのもなんだけどね。
あと胸いっぱいに空気を吸っても新鮮な空気は美味しくても大きくならんからなぁ、残念だ。
「おー、やっぱり近場で見ると雰囲気違うなー。」
遠回しでしか見えなかったモノも近場では迫力満点でやはり作業員が展示物を搬入している最中。
それでも私が試しに手を振って見ると振り返してくれる連中もチラホラと。
あまり燎煉の発電所にいなくても見知った顔、こう言うことも職場の中では大切なコミニュケーションの一環ではないだろうか?
まぁ、本来の私の職場ではそんなことなどする事も意味も見い出せないからアレだが……試してみるものだな。
何よりも反応を返してくれるのが1番嬉しいってものよ。
「おっ、結愛もいる。」
小さな梱包材に包まれた箱を持ちながら博物館内を出入りする結愛を発見した。
今更感って訳でもないけど、こんな小さくて可愛らしい女の子にあんなハードな仕事をさせるよりスキルに見合う仕事をさせる方が本領を発揮してくれる。
結愛だってにこやかに笑いながら仕事を頑張ってくれて、私も嬉しく思うよ。
「あっ、冥綾っ!! 退院したのね。」
「極度な疲労だけであんなに入院させられるとは思わなかった。」
点滴打たれて車イスに揺られて、挙げ句のは果てにはリンゴ地獄と来る。
暇かと言えどパソコンは飽きて退屈……あまりいい思い出がなくて苦笑いをすると結愛も察してくれた。
とうの彼女も入院中は【暇だー】だの【暇だー】だのひっきり無しにボヤいていたような気がした。
と言うか……同じことしか言わないがとにかく暇としか聞こえなかったのは隣で横になっていた私の耳にタコが出来そうだったわ。
いたって健康の子供にベッドでじっと休憩してろなんてムチャは通るはずもなく、ましてや結愛だよ?
落ち着けるはずが無いじゃないか。
「結愛っ、速くっ……こっちよ。」
「あっ、ごめーん。」
すまない、結愛と久々に話せて引き留めて悪かった。
智美の催促が飛んできたのは私の責任だ、だから【頑張れ】って感じでピンク色の髪の毛をポンポンってしてやると、機嫌を取り戻してくれる。
この点の扱いにいたってはチョロいもの……ちょっと不機嫌そうになってもよっぽどの事じゃなければこれで事足りてしまう。
結愛は智美と一緒に館内へと消えて行く。
改めて見上げると外装はともかく、内装も完璧だと察すると中身はカラッポ言えども燎煉での私の仕事は事実上終了……いや、広告や資料の作成という点では自分の仕事は終わった訳じゃない。
燎煉の見所満載って訳じゃないが、写真は倒れる前にそれなりに撮ってきたつもりだ。
とはいえ火山の荒々しさをメインに添えてるのしかないから、どうにかして館内の内部の撮影……は許可降りなさそうだしせめて外部だけでもオッケー貰ってくるとするかな。
一応私も職員としての権限はいまだに健在、必要ならば美術品や展示品がなるべく写らないならば写真に少しは写しても構わないとのこと。
あとでその撮影した写真は智美を通して使っていいものの選別は必ずする事……という条件を元になんとか内部へと入ることが許された。
相変わらず燎煉の赤い作業着が目立つなか、私だけ場をわきまえないゴシックドレスだからちょっとだけ後ろめたい気もする。
私だってわかってるんだよ? この服装の事についてはね。
子供ならいざ知らず、いい歳した女子高生の女神がこんなフリフリ着てってバカにしてくれても構わない、だがなッ……私は好きで着てるから良いんだよ。
実年齢? 私は結愛そのものだ、見た目はどうあれ聖奈も智美も、あまつさえ桃子とすら同年齢としか言えないな。
それじゃ、撮影開始と行きますか。
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