神様project【七曜の女神と幾億の旅跡】

青衣

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第4章【水曜の湖畔《時雨》】

認めと覚醒【アシダカ軍曹視点】

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 今はただ抑えきれない高揚感に身を任せて廊下を駆け抜けるのみ。
 とは言えさすがに狭いのだから全力とは言えないし、せめて小走りって言ったところ。
 1つ目の曲がり角を抜けようとした時……何かにぶつかったような抱き抱えられたような、いずれにせよ温かかなあの感覚が身に染みてくる。

 何事かって思いながら見上げると智美が抱き締めてくれていたが、このとき軍曹は強い怒りを持っていたか?
 否、昨日の自分なら怒りに狂っていたに違いないが今は違う……と言うよりも魔法が使えた嬉しさでそんなことも忘れ、たぶん上書きされてしまったんだろう。
 自分で思うのもなんだけどなんとも単純な脳ミソを持っているなって……おにーさんに言われそうだけど、智美のハグの威力は強烈なんだぞ!!
 あれを喰らったら誰しもが落ち着いちゃうほどだけど……男の人なら逆に落ち着けないかもだ。
 とりあえず、今言えることは顔に胸が埋って苦しいし宣戦布告だと言うことがわかるのだな……ははは。

「あらあら、廊下は走っちゃダメじゃない?」

「うむむ、それはすまなかったんだぞ……けど智美っ、ついに軍曹もアイスキューブが出来たのだ!! 見るのだ!!」

 ようやく解放され自由になったら、見て欲しいものをこれ見ようがしに目の前で実践してやると相変わらずのミニサイズだがまるで成長した我が子を見つめる母のように愛おしそうな表情で微笑んでくれた。
 そして無言のまま抱き抱えられては食堂へと連れていかされ、朝御飯にありつくことができたのだ。
















 いつの日かテレビで見たことがあったが今回閉じ込められたのはドッキリというヤツだとカミングアウトされた……でもだ、どうにもモヤモヤが晴れない。
 ネタバレの小さな【ドッキリ大成功】の旗を可愛らしく振る智美を見て軍曹はもはや呆れを通り越して何も言えそうにない、そしてやって良いことと悪いことの度が過ぎているんじゃないかって伝えようとしたけど今回のドッキリがなければ軍曹は一生魔法が使えないまま……だったはず。

「その様子だと無事に終わったようね。」

 見渡す限り赤い髪の毛の人ばかりだというのにそれに混じって紅一点ではなく茶一点、茶髪の少女が相席よろしく朝食セットのお盆を持ってきては智美の隣に座り込む。
 少しだけ大人びた結愛のような見た目の少女、雰囲気が似てる……かな。

「魔法を使えなきゃ死ぬとか脅されて怖かったんだぞ。 けど、何でドッキリなんだぞ? 」

「それについては私が説明するわ。 簡単に言うと夢を操作させて意図的にあの夢を見させた。 限りなく現実に近い夢……言うなれば【仮想現実】ってところ?」

「夢を操作できる枕を開発するだなんて恋も好き者さぁ。」

 カソーゲンジツ?
 確かおにーさんがバーチャルゴーグルというのを頭につけて遊ぶ体感ゲームもそんな形式であるとを言ってたような気がするぞ。
 軍曹も遊ばせてもらったことはあるが映像と音のみ……でもここの技術を持ってしまえば現実と何ら変わりはなく、さらにはこう言った学習法までにも応用できるとはこの七刻の人々は我々の常に斜め上を行くから恐ろしい。
 目の前にいる技術者は相当な天才か、あるいは……ううん、やはり結愛の感情の1人に過ぎないと推測するなら紙一重なんだと思うぞ?
 何がって? わからなくても良いけど何と何は紙一重って言うぞ、まぁ良いのだ……そんなことは。

「私ご飯食べたら帰るわね。 枕のデーターも取れたし。」

「じゃ、私達はいつも通りスキー場の建設場所へと行きますわぁ。」

「パワーアップした軍曹を見たら結愛も冥綾もきっとビックリするんだぞ!!」

 昨日の今日でマスターしたこのアイスキューブを使って砦の建設の第一人者になれるようにさっそく決意を智美に見せつける。
 相変わらず苦笑いの彼女だが、軍曹はいたって本気だぞ?
 ほ、本当の本当……だぞ?
 むぅ……行動で示した方がここは手っ取り早いかもしれないな。
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