遠空に駈ける女神の浮浪録・神様project2

青衣

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第零点九百九十九章・揃物商店へ

たまには悪くない

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   ――湯気のたつ国宝みたいなもの。

   浅葱にもカップ麺は手渡されたが久々に食べるカップ麺はいかがなものかと、持ち上げてはパッケージの表記を見つめたりしている。
   生前カップ麺なんてほぼ食べなかったし、それ以前に食事をしたらお腹も間に合うため小腹も減る心配も無かったためだ。

 「食べるのなんて五年ぶりね。」

 「カップ麺の備蓄もこれで最後になる。 まあ、これからは浅葱の手料理が食べられるとなると食生活も改善するから、名残惜しいとも言えなくはないがな。」

   揃物もカップ麺が美味しいが体に悪いことは百も承知だそうだが、あいにく炊事をやる暇がないのだと先程本人談で聞かされている。
   しかし、浅葱は手料理を求められるなんて聞かされるのは初めてだし、頬を少しだけ染めては家庭科で習った程度の腕前がどこまで通用するかとちょっと先程の強気がばつの悪そうな表情を作る。

 「まあ、なんとかなるよね。」

   そう言ってカップ麺の蓋を剥がすとフワッと良い香りが広がり、より一層空腹感が押し寄せ箸や腕がカップ麺を我先へと求めてしまう。
   一口、また一口と麺をすする音が揃物に聞こえようでもラーメンなのだから気にしちゃいけない、味の国宝のようなカップ麺に舌鼓を打ちながらその味を楽しんだ。














   ――満腹になったあとに押し寄せるものは。

   お腹がいっぱいになれば眠くなるのは生き物として当たり前、神格の体になっても基本的なものは何一つ変わらない。

   もっぱら時間を潰すための端末がないためにこのような睡魔が押し寄せてくるのは無理もない話。
   なかなかのカメラ映えしそうな黒樫のロッキングチェアに腰かけては、特に揺らすわけでもなく惰眠をむさぼろうとする。

   うっとりうっとりと瞳が重くなりかけた頃、フワッとした浮遊感が浅葱の体に押し寄せてくる。
   何かと眠い瞳をこらえてみると、揃物はお姫様抱っこしていたではないか!?

 「あんなところで寝たら体を悪くするぞ。」

   確かに固い椅子に寝てたら明日の朝なんて骨や間接が悲鳴をあげるのには間違いはなさそうだと思っていたのだがその矢先、揃物は自分の自室に入ると浅葱を暖かくて大きなベッドに寝かせてくれたではないか。

 「まったく、ちょっとは考えろ。 ……まあ、寝床を提供しない俺の悪さもあるんだがな。」

   揃物は床に少しボロボロのマットレスを敷くとそこに横たわる。

 「そ、そっちで私寝るよ。 だって悪い気しかしないって……。」

    眠そうな声で抗議するも揃物は身体をグルッと転換しては浅葱側からは見えないようになってしまった。
   頑固な性格なのだろうかと思ったのか、このタイプはこうまで来ると筋金入りで一歩も引かないだろう。
   今は受けた恩恵の温かさを体に感じつつ眠りについた浅葱である。
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