垢BAN転生【最強に飽きたので次は最弱で世界を謳歌します!】

青衣

文字の大きさ
11 / 22
第三章・都市部

朝日とガチャの結果には目が眩むほど眩しいようです

しおりを挟む
   ――……………………。

   武器屋の扉が開いては運営の少女が新しい武器を箱に入れては搬入する様子が、まだ暗い朝の都市部にて見られた。
   誰にも知られることなくひっそりと行動するも、少しだけ不具合を見つけたのだが、どういうことか無言でその不具合を見つめる。

 「……。」

   その不具合というのは武器屋のソファーにてアルマが寝そべっているということだ。

   本来アルマだってプレイヤーの一人ならメンテナンスの為に強制ログアウトをで退出していなきゃならない存在ゆえに、ここに居ること自体がおかしな不具合なのだと運営の少女は嘲笑う。
   しかしその不具合を直そうともせずに寝ているアルマの横を通りすぎるとガチャマシンのボックスに鍵を差し込んでは蓋を明け、数個ほど虹のカプセルを追加してはついでにコインを回収し、音もなく閉める。

 「……。」

   少女が受け皿に貯まった十個の銀のカプセルを見つめると何を考えたのちに、何をするわけでもなくログアウトをして静かな空間にまた戻って行く。














   ユサユサと体を揺さぶられる感覚に目を覚ましたアルマであるが目を開けるとそこにはカルトがいて、どうやらもう朝だということに気がつかせられる。
   一晩眠っていたためか気分はすっかり晴れ、昨晩のガチャの事なんてむしろどうでもよく思えてくるように、どうしてあんな些細なことで荒れてしまうのか不思議と思えるほどに今の彼は落ち着いていた。

 「おやおやっ、目が覚めましたかいな? 午前七時五十分二十二秒、ついに起床!」

   朝からテンションの高めな彼女だが何かと元気をくれるもので、これまた心地がよい起こし方である。

 「おはようカルト。」

 「おはようですわー、ささっ……店が開店しますぞぉっ、グルグルは回りませんが開くという意味で。」

   相変わらずなものであるが、テキパキとアルマの毛布を持っていっては奥の戸棚にしまうと、いつもの営業帽をかぶっては準備万端になる。

   アルマも準備万端にしようとソファーから体を起こしては軽くあくびをし、脳に酸素を取り入れたのちに軽く頬を叩いては気合いを入れ直す。
   もう今は今なのだと心に強く念じては、自分のやるべき事をしっかりと把握し、魔王に会って思いを伝えるまでは些細なことで悩まないと心に今は言い付けておく。

 「そうだよ、悩むなんて俺らしくないさ。」

   銀のカプセルを見つめるとひとつだけ握りしめては、それを武器化させる。

   銀のカプセルの武器の中でもかなり評価は悪い武器を選んだアルマだがそれは計算済みであり、他のを見てみるもこれより強い武器があるのにも関わらずアルタもカルトも不思議そうに見つめる。

 【およ、【鈍刀どんとう】を選ぶとはアルマさん、どうしたっすかねぇ? そっちを選ぶならこっちの方が断然強いのですがなー。】

   鈍と書いては【なまくら】と呼ぶに値する刀なのだから何を意味するのかはもうお分かりだろう。
   その名前の通り切れ味が最悪な刀で、確実に最初のガチャで引いたならリセマラするだろう。

   そもそも銀のカプセルが当選した時点で妥協をしない以上は誰も使うことは無いし、当たったら当たったで露天で売りさばくか武器などの強化合成の経験値の肥やしにしてしまうかの二択のものだ。

 「アルマ、気でも狂ったかい? どうして強いのを選ばないのさ?」

   武器専門のアルタが一番納得いってないご様子なのだが、アルマはこれが良いと断じて動じようとしない。

   よく考えれば十個の銀のカプセルは全てアルマの所得物になるのだが、残りの九個の武器を鈍刀に合成しようとするのだ。

 「俺はこれが良いんだ。」

   アルマの強い意思に、アルタも水を差すことは出来やしないためにそれを受け入れる。

 「合成するよ? ただし、後々後悔して別なのにしておけばよかった……などと言う苦情は受け付けないからね。」

 「へんっ、わかってるよ。」

   パッと見ては普通の刀だが切れ味は最悪な刀をアルタは不思議そうに見つめては、九つの銀のカプセルと共に炉に入れるじっくりと溶かしては強化合成を行う。

 「五分はかかるよ。 ほら、開店するから裏口から出な! 怪しまれるといけない。」

 「ちょっ、時間かかるのか……まぁいいさ。」

   本来のゲーム画面では一瞬で終わるはずの合成であるが、なんともリアルタイムだろう。
   リアルな鍛練でも刀身の強化となら五分では不可能だが待ち時間がある分、強化した刀との対面が待ち遠しい。

   とりあえず裏の勝手口から出ると早速カルトの特有の元気な声がこだましては、今回の開店が始まる。
   
   取り分け次のメンテナンスまでは不眠不休なのだから、今思うとエヌ・ピー・シーは運営の手下で不眠不休、無賃金でコキ使われてると思うとゾッとして、ブラックなものだと微笑みながら呆れる。

   しかしゲームの世界だから仕方がないとは言えど、何かとこうして動けるアルマは現実に限りなく近くて、他のエヌ・ピー・シーとも自由に会話が出来る考えると、心が暖かくなる。

 「他のユーザーと話してるときは定型句しか言わないのに、俺だけ特別と考えると……なんだかなぁ。」

   アルマはそう思いつつも表の通りに出るとやはりメンテ明けで都市部の至るところに些細な変化があり、平日の朝八時と言えどそれを楽しんでいる人も少なくはなく感心するばかり。

   もちろん新しい武器欲しさに列も見えておりアルマは内心十字架を切っては、結果は引いてみなくてはわからないだろうが一%に当選しないことを先に見据えた上で、御愁傷様の合図を送りながら表の入り口から武器屋へ入店する。

 「おや、アルマじゃないか……いらっしゃい。」

   アルタの笑顔で迎え入れられたのだが先程まで会っていたと思うと、やはり店の仕事では職人としての心得を持っていて感心するばかり。
   ここまで精密でしっかりとしていて、もはやエヌ・ピー・シーとは言えないようなもので少し不気味に思えるほどだ。

 「なに一歩後退してるんだい? まあ良いよ……合成終わったから、ほら。」

 「うわっ、スゴい白くなってる……。 この辺がカッコよくて強そう。」

   別に見た目は変わらないが合成する前よりかは確実に攻撃力補正も上がっていると確信したアルマ。

 「さて、合成料金は九百ゴールドだよ。」

 「あっ!?」

   もちろん当然の事を忘れていたアルマ。

   武器を強化してもらったんだからお金を支払うのは当然の義務なのだが、どういうことだろうかスッポリ頭から抜け落ちてしまう。

 「無賃強化かい? ほう、良い度胸してるねぇ。」

   強化に使う金槌を肩に背負っては威圧する姿はもはやアルタ姐様としか言いようがない。
   悪いがその形相は鬼のような表情であった。

   しかし、素で忘れていたのだから悪気はないと謝りたいも、サービスを受けたらお金を支払うなどと常識がゆえに、謝っても済む問題かアルマには不安がよぎった。

 「た、頼む……ツケにしてくれ! 今日中にストーンラット討伐してお金稼いで……それから、それから利子もつけて支払うから、許してくれ、なんでもするからその金槌だけは止めて。」

   アルマは意を決して見事な土下座をするもアルタだって冗談だったし、きちんと返してくれる事を信じていたためにすんなりと事を運ばせてくれた。
   内心アルタはあの武器でストーンラットを討伐できるかは不安にしか思えなかったが、自分が強化したのだから負けるはずがないと豪語しながら、そそくさとクエストカウンターに散って行くアルマを見届けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...