27 / 38
9月19日
しおりを挟む
9月19日。
孤独の虎は最強を目指す。
神界の公園にて朝から響くは殴打の音。
ガサガサやらズドンズドンやら近所迷惑になりそうなほどの爆音が響き渡るも、誰一人として気にする様子はないが、そんなかたわらにベンチに座って傍観する一人の少女。
「ほぇー、毎日熱心なものじゃな。」
「うるさいっ、今に見てろよ……私はお前を倒すっ! そして神位を繰り上げてやる!」
道着を着た少女は、ベンチに座って傍観する少女に向かって拳を突き立てたのち、綺麗な回し蹴りで殴り続けた大木にトドメの一撃を食らわす。
ミシミシと蓄積した打撃に耐えられなくなった木は地鳴りをあげてはついに倒れる。
「公共の施設の自然を破壊するとはのぅ……。」
「別に良いんだよ。」
少女は懐から緑色のカードを取り出すと大木にあてる。
すると不思議に木は光を放ち元通りに修復されていくのがわかるも、それを見たベンチの少女は黙ってはいない。
「特別神……いや、虎よ……。 お主はそれをどこで手に入れた? それは七曜神の神器ではなかろうか?」
虎と呼ばれる彼女の手には木曜の曜札が握られており、見る限りだと菊花や玄弥が扱うレベルの曜力が詰まったカードである。
もし制御できずに暴発したならあたり一面は森や林、草原になるほどの自然のエネルギーが蓄えられており、それはまるで人類がいなくなった映像にありそうな、数万年後のようなものの風景と世界は化すほどの自然に溢れ変えさせるほどの絶対的なモノ。
「これは……木曜の男の巫女から借りたんだ。 【強くなるために修行に励むのは大いに結構だが、自然を破壊したままにするな。 自分の落とし前は自分でつけろ】とね。」
今の話が本当なら、玄弥が虎に力を貸したことになる。
でも理にはかなうもので、玄弥とて相手が女であろうが強くなりたいと願い、努力をするものに彼は力を与える。
そして強くなったならばその修行の成果を味見するがごとく、強者との戦いを求める。
とても玄弥にピッタリな利害一致のようなものだ。
「なるほどのぅ。 しかし虎よ……何ゆえ力を求めるのじゃ?」
ベンチから立ち上がった少女は本を閉じ、懐にしまっては鋭い目付きで睨みを効かせる。
その睨みは、百センチにも満たない少女のモノとは思えぬほどの圧力を誇り、百四十センチほどの彼女が二歩ほど後退りをするほど。
「私はもう神位二桁にはうんざりだ……。 ギリギリの落ちこぼれも、もうたくさんなんだっ!!」
神位第十位にして特別神の【楠枝 てとら】は、自分が落ちこぼれだと悩み続けた結果のものだと心に深い傷を負いながらも強くなるために日々、切磋琢磨してきたのだ。
しかし、少女は大きな声で一喝する。
「このたわけものがっ!! 神位というものは上位を倒したとてひっくり返ることなどない。」
杖を地面にカァーンッと打ち付けては、無音の空間に響き渡る。
「そ、そんなの嘘だっ!!」
「神位というのは己が何の神かを識別するためのもので、強さにあらず。」
虎は強さと神位を同一視することを存在意義として見てきた為か、それを信じようとしない。
たとえそれが本当の話だとしても、激昂した虎は今は止められない。
「ならばわしを倒して見せよ!」
少女は杖と分厚い本を空中に浮かせては叫び出す。
「行くぞ……神名解放! 神位第九位グリモア!」
少女の背中に魔法陣が描かれると、無数の魔法の本やら杖、しまいにはアゾット剣が幾重にして虎に向けられる。
「栗本モア……倒すっ!」
虎はお互いの拳をぶつけ合い、ボルテージを高めたのちに叫んではこちらもフルパワーを前回にして迎え撃つ。
「神名解放!神位第十位エクストラッ!!」
お互いの魔力を感じ取ったのか、神界のバリアフィールドが展開される。
これは最悪の場合、街が消滅する可能性もある力をもつ神同士の喧嘩の際に自動で関知しては展開されるもので、落ち着くまでは二人は出られることはない。
不可視のバリアフィールドは、タイマンの場所となる。
「行くぞ、格の違いを見せてやるのじゃ! 【神威】」
空中に浮いた本のうち黄色の表紙の本がパラパラとめくれては、電気を纏う剣がキリモミしながら虎に向かって放たれる。
空中に浮いたモアに直接的な攻撃しか出来ないことを知っている彼女にとっては、もはや勝利は目前といえ、慢心そうな笑みは幼くして妖艶。
「くっ、小癪な……。」
「一枚上手じゃな……。」
空を飛ぶことのできない虎にとっては、もはや越えられない壁といっても過言ではない。
その後、彼女は見事に敗北するのだが、そこから学ぶことが多く存在するものがあると知り、新たな境地を目指すべく修行の旅に出たのである。
敗けは敗けではなく、諦めたときに本当の敗北を知ることになる。
研究の可能性がある限り、勝ちも負けも存在はしない。
孤独の虎は最強を目指す。
神界の公園にて朝から響くは殴打の音。
ガサガサやらズドンズドンやら近所迷惑になりそうなほどの爆音が響き渡るも、誰一人として気にする様子はないが、そんなかたわらにベンチに座って傍観する一人の少女。
「ほぇー、毎日熱心なものじゃな。」
「うるさいっ、今に見てろよ……私はお前を倒すっ! そして神位を繰り上げてやる!」
道着を着た少女は、ベンチに座って傍観する少女に向かって拳を突き立てたのち、綺麗な回し蹴りで殴り続けた大木にトドメの一撃を食らわす。
ミシミシと蓄積した打撃に耐えられなくなった木は地鳴りをあげてはついに倒れる。
「公共の施設の自然を破壊するとはのぅ……。」
「別に良いんだよ。」
少女は懐から緑色のカードを取り出すと大木にあてる。
すると不思議に木は光を放ち元通りに修復されていくのがわかるも、それを見たベンチの少女は黙ってはいない。
「特別神……いや、虎よ……。 お主はそれをどこで手に入れた? それは七曜神の神器ではなかろうか?」
虎と呼ばれる彼女の手には木曜の曜札が握られており、見る限りだと菊花や玄弥が扱うレベルの曜力が詰まったカードである。
もし制御できずに暴発したならあたり一面は森や林、草原になるほどの自然のエネルギーが蓄えられており、それはまるで人類がいなくなった映像にありそうな、数万年後のようなものの風景と世界は化すほどの自然に溢れ変えさせるほどの絶対的なモノ。
「これは……木曜の男の巫女から借りたんだ。 【強くなるために修行に励むのは大いに結構だが、自然を破壊したままにするな。 自分の落とし前は自分でつけろ】とね。」
今の話が本当なら、玄弥が虎に力を貸したことになる。
でも理にはかなうもので、玄弥とて相手が女であろうが強くなりたいと願い、努力をするものに彼は力を与える。
そして強くなったならばその修行の成果を味見するがごとく、強者との戦いを求める。
とても玄弥にピッタリな利害一致のようなものだ。
「なるほどのぅ。 しかし虎よ……何ゆえ力を求めるのじゃ?」
ベンチから立ち上がった少女は本を閉じ、懐にしまっては鋭い目付きで睨みを効かせる。
その睨みは、百センチにも満たない少女のモノとは思えぬほどの圧力を誇り、百四十センチほどの彼女が二歩ほど後退りをするほど。
「私はもう神位二桁にはうんざりだ……。 ギリギリの落ちこぼれも、もうたくさんなんだっ!!」
神位第十位にして特別神の【楠枝 てとら】は、自分が落ちこぼれだと悩み続けた結果のものだと心に深い傷を負いながらも強くなるために日々、切磋琢磨してきたのだ。
しかし、少女は大きな声で一喝する。
「このたわけものがっ!! 神位というものは上位を倒したとてひっくり返ることなどない。」
杖を地面にカァーンッと打ち付けては、無音の空間に響き渡る。
「そ、そんなの嘘だっ!!」
「神位というのは己が何の神かを識別するためのもので、強さにあらず。」
虎は強さと神位を同一視することを存在意義として見てきた為か、それを信じようとしない。
たとえそれが本当の話だとしても、激昂した虎は今は止められない。
「ならばわしを倒して見せよ!」
少女は杖と分厚い本を空中に浮かせては叫び出す。
「行くぞ……神名解放! 神位第九位グリモア!」
少女の背中に魔法陣が描かれると、無数の魔法の本やら杖、しまいにはアゾット剣が幾重にして虎に向けられる。
「栗本モア……倒すっ!」
虎はお互いの拳をぶつけ合い、ボルテージを高めたのちに叫んではこちらもフルパワーを前回にして迎え撃つ。
「神名解放!神位第十位エクストラッ!!」
お互いの魔力を感じ取ったのか、神界のバリアフィールドが展開される。
これは最悪の場合、街が消滅する可能性もある力をもつ神同士の喧嘩の際に自動で関知しては展開されるもので、落ち着くまでは二人は出られることはない。
不可視のバリアフィールドは、タイマンの場所となる。
「行くぞ、格の違いを見せてやるのじゃ! 【神威】」
空中に浮いた本のうち黄色の表紙の本がパラパラとめくれては、電気を纏う剣がキリモミしながら虎に向かって放たれる。
空中に浮いたモアに直接的な攻撃しか出来ないことを知っている彼女にとっては、もはや勝利は目前といえ、慢心そうな笑みは幼くして妖艶。
「くっ、小癪な……。」
「一枚上手じゃな……。」
空を飛ぶことのできない虎にとっては、もはや越えられない壁といっても過言ではない。
その後、彼女は見事に敗北するのだが、そこから学ぶことが多く存在するものがあると知り、新たな境地を目指すべく修行の旅に出たのである。
敗けは敗けではなく、諦めたときに本当の敗北を知ることになる。
研究の可能性がある限り、勝ちも負けも存在はしない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる