日々是成長・HDリマスター(本編の少し前のお話)

青衣

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9月19日

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9月19日。
孤独の虎は最強を目指す。














   神界の公園にて朝から響くは殴打の音。
   ガサガサやらズドンズドンやら近所迷惑になりそうなほどの爆音が響き渡るも、誰一人として気にする様子はないが、そんなかたわらにベンチに座って傍観する一人の少女。

 「ほぇー、毎日熱心なものじゃな。」

 「うるさいっ、今に見てろよ……私はお前を倒すっ! そして神位を繰り上げてやる!」

   道着を着た少女は、ベンチに座って傍観する少女に向かって拳を突き立てたのち、綺麗な回し蹴りで殴り続けた大木にトドメの一撃を食らわす。
   ミシミシと蓄積した打撃に耐えられなくなった木は地鳴りをあげてはついに倒れる。

 「公共の施設の自然を破壊するとはのぅ……。」

 「別に良いんだよ。」

   少女は懐から緑色のカードを取り出すと大木にあてる。
   すると不思議に木は光を放ち元通りに修復されていくのがわかるも、それを見たベンチの少女は黙ってはいない。

 「特別神……いや、虎よ……。 お主はそれをどこで手に入れた? それは七曜神の神器ではなかろうか?」

   虎と呼ばれる彼女の手には木曜の曜札が握られており、見る限りだと菊花や玄弥が扱うレベルの曜力が詰まったカードである。
   もし制御できずに暴発したならあたり一面は森や林、草原になるほどの自然のエネルギーが蓄えられており、それはまるで人類がいなくなった映像にありそうな、数万年後のようなものの風景と世界は化すほどの自然に溢れ変えさせるほどの絶対的なモノ。

 「これは……木曜の男の巫女から借りたんだ。 【強くなるために修行に励むのは大いに結構だが、自然を破壊したままにするな。 自分の落とし前は自分でつけろ】とね。」

   今の話が本当なら、玄弥が虎に力を貸したことになる。
   でも理にはかなうもので、玄弥とて相手が女であろうが強くなりたいと願い、努力をするものに彼は力を与える。
   そして強くなったならばその修行の成果を味見するがごとく、強者との戦いを求める。

   とても玄弥にピッタリな利害一致のようなものだ。

 「なるほどのぅ。 しかし虎よ……何ゆえ力を求めるのじゃ?」

   ベンチから立ち上がった少女は本を閉じ、懐にしまっては鋭い目付きで睨みを効かせる。
   その睨みは、百センチにも満たない少女のモノとは思えぬほどの圧力を誇り、百四十センチほどの彼女が二歩ほど後退りをするほど。

 「私はもう神位二桁にはうんざりだ……。 ギリギリの落ちこぼれも、もうたくさんなんだっ!!」

   神位第十位にして特別神の【楠枝 てとらくすえ てとら】は、自分が落ちこぼれだと悩み続けた結果のものだと心に深い傷を負いながらも強くなるために日々、切磋琢磨してきたのだ。
   しかし、少女は大きな声で一喝する。

 「このたわけものがっ!! 神位というものは上位を倒したとてひっくり返ることなどない。」

   杖を地面にカァーンッと打ち付けては、無音の空間に響き渡る。

 「そ、そんなの嘘だっ!!」

 「神位というのは己が何の神かを識別するためのもので、強さにあらず。」

   虎は強さと神位を同一視することを存在意義として見てきた為か、それを信じようとしない。
   たとえそれが本当の話だとしても、激昂した虎は今は止められない。

 「ならばわしを倒して見せよ!」

   少女は杖と分厚い本を空中に浮かせては叫び出す。

 「行くぞ……神名解放! 神位第九位グリモア!」

   少女の背中に魔法陣が描かれると、無数の魔法の本やら杖、しまいにはアゾット剣が幾重にして虎に向けられる。

 「栗本モア……倒すっ!」

   虎はお互いの拳をぶつけ合い、ボルテージを高めたのちに叫んではこちらもフルパワーを前回にして迎え撃つ。

 「神名解放!神位第十位エクストラッ!!」

   お互いの魔力を感じ取ったのか、神界のバリアフィールドが展開される。
   これは最悪の場合、街が消滅する可能性もある力をもつ神同士の喧嘩の際に自動で関知しては展開されるもので、落ち着くまでは二人は出られることはない。
   不可視のバリアフィールドは、タイマンの場所となる。

 「行くぞ、格の違いを見せてやるのじゃ! 【神威】」

   空中に浮いた本のうち黄色の表紙の本がパラパラとめくれては、電気を纏う剣がキリモミしながら虎に向かって放たれる。
   空中に浮いたモアに直接的な攻撃しか出来ないことを知っている彼女にとっては、もはや勝利は目前といえ、慢心そうな笑みは幼くして妖艶。

 「くっ、小癪な……。」

 「一枚上手じゃな……。」

   空を飛ぶことのできない虎にとっては、もはや越えられない壁といっても過言ではない。

   その後、彼女は見事に敗北するのだが、そこから学ぶことが多く存在するものがあると知り、新たな境地を目指すべく修行の旅に出たのである。














敗けは敗けではなく、諦めたときに本当の敗北を知ることになる。
研究の可能性がある限り、勝ちも負けも存在はしない。
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