日々是成長・HDリマスター(本編の少し前のお話)

９月２０日

９月２０日。
静けさの中に潜むもの。














   神界の都市から何十万キロメートルも離れた所に位置する森の中に、彼女の別荘が存在する。
   彼女以外誰も別荘の敷地に来ることはないのだから自由気ままに過ごすことができる、究極の別荘。
   そんなところに彼女はいた。

   「……。」

   木々の木漏れ日を見つめては、そのハイライトの無い黄色い瞳で葉が生い茂る頭上を見つめる。

 「たまにはここも良いかも知れないわね。」

   岩動のようにゴツゴツとした岩肌とは裏腹に、風見のように生い茂る森は彼女の心を洗い流してくれる。
   何よりも、誰も来る訳じゃないので絶対的な孤独を楽しむことができるのだ。

   絶対的、と言うわけではないが……宇宙のどこかにある指定された星をピンポイントで探し当てるより確率は零に近いほど、辺鄙な場所にログハウスが存在している。

 「でもちょっと寂しいわ……。 智美もつれてくれば良かったかしらね……。」

   静かなのを好む彼女も、絶対的な孤独は好きじゃないのは百も承知なこと。
   桃子と言えど元は結愛なのだから仕方ないと言えば仕方ないが、別に嫌な訳じゃない。

 「さてと、泉にでも後で入ろうかしらね？」

   この別荘の敷地内には小さな泉が湧き出しており、直接飲むことも可能なきれいな水なのだ。 
   そしてすぐそこの大木の根本の穴の中を流れてどこかに運ばれて行くのだろう。

 「ふふっ……私だけの場所。」

   独占するつもりはないがログハウスには結愛が七人に分割されてからというものの、きちんと食器のセットが皆分用意されてるし、部屋もなにもかも改築された。
   私だけと言っても正解に近いが、やはり桃子は一通りの静けさを堪能すれば少しだけ寂しくなる。

 「結愛も菊花も……来れば良かったのに。」

   いつもの三人組とはいかないものの、二人も仕事をしている風景は見たことはないが忙しいと一蹴されてしまってはこちらからも口をはさめることもない。
   一泊くらいは寂しさに耐えられるも、やはりなにか心にモヤモヤが残る。

 「まぁ、良いわ……。」

   一通り身支度を整えては水着になると泉にそっと浸かっては体を清める。
   ここの泉の水は別格で普通の水ではないことは確かだと体が直感的に感じている。

 「今日はゆっくり休むかしらね……。」

   桃子はまた木々の木漏れ日を見つめてはため息を漏らしたとさ。














一人寂しい里帰り。
でも、なにか心は落ち着く。