日々是成長・HDリマスター(本編の少し前のお話)

青衣

文字の大きさ
30 / 38

9月22日

しおりを挟む
9月22日。
瞬間のわかる女。














   これまた岩動の旅館にて今回は地下のゲームセンターに彼らは居た。
   ゲームセンターと言えどさすがに愛染のような超大規模なではなく小規模のものである。
   しかしながら、いくら子規模言えども満足できるくらいに遊べるのだから、普通に遊ぼうと思えば一時間で数千円は吹き飛ばせるほどに充実していると言っても過言じゃないだろう。

 「よしっ、僕の腕がなるね。 今日こそは!」

 「ふふっ、絶対負けねぇよ。 運営としての維持もあるからな。」

   少年二人が音ゲーの筐体に百円玉を投入してはイヤホンだのヘッドホンだの装着しては音量を調節し、店内マッチを選ぶ。

 「新しく最難関のタイニーシリーズの曲、タイニーヘヴン追記したから、やるだろ?」

   茶髪の彼はニヤニヤと青髪の青年を見つめるも、相手は制作者であり譜面の研究はしつくされているから、圧倒的な不利なのはわかっている。
   しかし、音ゲーマーのランカーとして譲れぬプライドもあるために了承はせざるを得ない。

 「恋さん、既に解禁日の前日から九十九万七千点いってるじゃないか……卑怯だ。」

 「制作者サイドだからな……、恵麻はどんなプレイをしてくれるんだ?」

   二人は昨日の晩からこれを見越して、体力を底上げするためと男体化しており、これから白熱したバトルが繰り広げられるらしい。
   早速マッチが完了し、恋はタイニーヘヴンの曲を選曲する。

 「うわー……BPM変化ありの曲はちょっと。」

 「なんだよ、つべこべ言わずに……ホイッ!」

   恋は早速タイニーヘヴンを選曲するとやはりBPMが著しく高い曲調が流れ出してくる。
   それに対して恵麻も本気モードの迎撃となり、演奏はスタートするのである。














   二分間の演奏を終えては恋は少しだけ首をかしげては音ゲーマー特有の見えないビームを避ける。
   COOL判定という若干のズレの判定が五つと、恋にとってはあまりよろしくないスコアが出てしまったからである。

 「むむむ……?」

   恵麻はどうにもふに落ちない表情で首をかしげているのだが、理由は恋とは似たようでまた違うもの。
   スコアが悪かったわけではなく、初見なので仕方ないという気持ちは恵麻にはあるものだが、それとはまた別な何か。

 「恋さん、これ……サビに入る前のノーツが早すぎませんかね? 一フレームか二フレームくらい早いと思うんですけど。」

 「そ、そんなわけ無いだろ? 恵麻が遅いんじゃないのか?」

   制作者サイドでは、音ゲーのズレなど決して許されないものであり非を認めようとしない。
   どちらが今回は正しいのかはさておき、指摘された部分を直してしまうとなると今度は恋の精度が悪くなってしまう、それだけは避けたい。

 「適正な時間だよ……。」

 「ち、違いますよ!」

   お互い猛反発してしまうのは悲しき定めなのか、しまいにはトラブルに発展しそうな勢い。

 「こっちのは正常だよ、え……恵麻こそ判定狂ってるんじゃ無いのか? このガバガバ女!」

 「ガバガバでも女でも無いですよーだ!」

   やんややんやと騒いでいると時間切れで二曲目へと自動的に選択ささり、また同じ曲が選択されてしまう。
   これに顔を見合わせる二人は何を言うわけでもなくお互い画面を凝視する。

 「ふんっ!」

 「ふーんっ、です!」

   トップランカー同士のぶつかり合いに大きな火花が散らし、戦火の火蓋が斬って落とされる。
   そして曲は流れ出す。














   最後のノーツを両手で処理しては画面の打音が緊迫した空間に響き渡った瞬間の事である。
   緊張の糸がほどかれて、我にかえった二人は発狂してしまうのだ。

 「や、やったぁああっ!!」

 「よっしゃぁああぁっ!!」

 【REN・1000000 <PERFECT>】
 
 【E M・1000000 <PERFECT>】

   輝かしい虹色の文字と共に理論値を表すPERFECTの勲章がポンッと印付けられる。
   それも二人同時に最難関曲を乗り越えて見せたのだ。

 「やるな! やりゃ出来るじゃねぇかよ……このこの!」

 「わわっ、ちょっ……くすぐったいです!」

   先程まで喧嘩したことも忘れて一緒に端末で写真を撮ってはSNSに投稿し、満足げな二人。
   岩動のゲーセンは初期設定なために二曲でおしまいであるも、このスコアなら文句もないしむしろもう一回遊びたくなるほどであるが、汗でべたつく体は風呂に入りたい気分にしてくれる。

 「さて、入りにいきますかね?」

 「そうするか!」

   二人仲良くゲームを終わらせて風呂へ入るために、ゲームセンターをあとにする。
   大満足の二人は、やはり喧嘩をしてもそれ以上に仲良しになるのでした。














タイニーヘヴン、初日最高難易度の理論値達成者は三人。

EXTRA HARD 三人
HARD             百四人
NORMAL       千八十五人
EASY               八百十人
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...