癒し(笑)の魔王~防御力が高すぎて誰にも倒せません~

岳河 夕陽

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魔王VS魔王?

第39話 勇者と正しい吸血鬼の倒し方

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「ふっ!」
「【血の弾丸ブラッディ・ブレット】」
「【魔力障壁マジックシールド】」


場面は戻り、切りかかる夏樹とそれを避けて魔法を放ってくる吸血鬼。それを防ぐ後衛の魔法支援。戦闘を始めてから既に1時間近くが経っており、それでもなお戦えるのは勇者ならでは、と言ったところか。
とは言え、あまりにも変化が見えない戦況に焦りと・・・


「いい加減に死にやがれえぇぇぇ!!!」


イラつきが積もりに積もっていた。勇者が使って良い言葉ではない。
ミストのような防御に特化したタイプならば、いくら攻撃されようとも通らないダメージで相手の心を折る。が、この吸血鬼のように、ひたすら攻撃を回避するタイプの場合は、無駄に相手をイラつかせるだけであった。


「死ねと言われて死ぬ馬鹿はいませんよ。やはり勇者というのは馬鹿ですね。脳みそまで筋肉なのではないですか?」
「うっせえ!馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ!」


ついに小学生レベルの罵り合いまで始まってしまった。激しい怒りは人を童心に返すらしい。


「大体なぁ!?さっきから【血の~ブラッディ~】とか何とか言ってるけっどっ!」


夏樹は吸血鬼が放った魔法を一刀両断し、霧散させた。そして


「全部ただの炎属性魔法だろうが!血なんかぜんっぜん関係なさすぎて痛いわ!!!」
「ウグッ!?」
「おっ?」
「止まりましたね。」


一息に言い切った。
夏樹の攻撃暴言がクリティカルヒットし、吸血鬼の動きが止まった。それを見て、ここぞとばかりに後ろから魔法を撃ち込むフレイア。
その様子に気づいていない事から、夏樹本人が意図してやったわけではないのは明白だ。つまるところ、純粋に難癖をつけたかっただけである。


「ってか、木造建築の家がどこも燃えてない時点で威力大したことないからな!?何かっこつけて厨二病かましてんだよナルシストか!?」
「グ、ッ、やめ・・・」


実際、いくらか焼け焦げた跡はあるものの、現在進行形で火事になっている所は一切無い。
麻痺状態よろしく動かなくなった吸血鬼に斬りつけながら、更に追い打ちをかける夏樹。


「自分で魔法スキルアレンジできるならもっとマシなの作れや!」
「ガハァ!?」
「避ける以外なんっっっも取り柄無い痛いクソジジィじゃねえかお前!!!」
「グアァァァァァァ!!!」


叫び声は斬られた痛みか、はたまた心の痛みか。先程までの膠着状態が嘘のように、瀕死に追い込まれた吸血鬼。と、そこに


「ナツキ!横に移動して!思いっきり!」


フレイアからの指示に従い、大きく横に跳ぶ夏樹。仲間の声が聞こえない程に取り乱してはいなかったらしい。

フレイアの手元には、轟々と燃え盛る特大の火球。大魔導士の詠唱破棄をもってしてもなお発動に時間がかかる、全力での上級魔法。それを、動かない吸血鬼めがけて撃ちだした。


「え、ちょ、まっ「いっけえぇぇぇ!!!」」


ドオォォォォォォォォォォン!!!


火球は轟音を響かせながら、目にも留まらぬ速さで吸血鬼ごと屋敷の壁を突き抜け、遥か空の彼方へと飛んで行った。その速度故に、屋敷に炎が燃え移ることはなかった。
が、夏樹の髪は焦げていた。


「「・・・・・」」
「よしっ!さすが僕!」


「【よしっ!】じゃないよ!?俺まで殺す気かあぁぁぁぁ!!!」


またしても、良い場面を持っていかれた夏樹なのであった。

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