吾輩は魔王である

鬼武蔵

文字の大きさ
18 / 18

16

しおりを挟む
16ーhero sideー

1階でのゴーレムとの死闘の後、ギルド暁の光一行は戦いが繰り広げられていた広間を通り抜け、2階へと登る階段を登っていった。

「道中に魔物がいるかもしれない、ここからはチームを二分しよう」

足取りは重い、進むことしかできないとは分かっているものの、まるで鉛の鉄球を引きずりながら歩いているかのようだった。

「先発隊は私とヨミアを筆頭に戦士隊20名支援魔法士、治癒魔法士それぞれ5名とする。命の危険があるのは後方隊も同じだ。立候補者は前に出てくれ」

帝の号令虚しく、立候補したのは戦士隊7名、支援魔法士2名、治癒魔法士1名だった。

「そんなっ・・・・貴方達そんな事でこの先どうするの⁉︎」

ヨミアが一喝するもその言葉は空を切るだけだった。

「仕方ない・・・。無理強いは士気の低下を招く。このメンバーで先発隊を務める。残りのメンバーは後方部隊で階層主との戦いに備えろ」

こうして帝、ヨミアを含め、12名という少ない人員が先発隊として先陣を切る事になった。やがて階段を登り終えると、広い廊下があり、肉眼では見えないほど先まで伸びていた。

「ありえない、空間を弄っているのか?こんなに広いはずがない」

動揺するギルドメンバー。しかし臆すれば魔王城の空気に呑まれてしまい、武器を握ることもできない事を、その場にいる全員が理解していた。あと一歩のところで踏み止まり、黙々と突き進む。
やがて行手を阻む敵と遭遇した。
「土塊兵か・・・使用者の吹き込んだ魔力で強さが変わる。つまり、敵の力は最強クラスだ!」

構える先発部隊。帝が先陣を切り、テレポートで土塊兵の背後に移動し頭蓋を蹴り飛ばす。土塊兵が吹き飛び、壁に激突する。次々と土塊兵の背後をとり攻撃する帝。

「・・・・?」

ほんの数秒で土塊兵が殲滅されていくその光景に、帝本人が1番不可解だった。

「弱すぎる。何かの罠なのか?」

あたりを見回しても、罠が仕掛けられているようには見えなかった。

「リーダー流石です!」

駆け寄ってくる前衛の戦士たち。帝は、士気が上がることを優先して、その疑念を心に仕舞った。

「進もう、俺たちの明日を守るために!!」

「「「おおおぉぉぉ!!!!」」」

一度火がついた士気は、帝の号令とともに高く燃え上がった。瞬く間に2階を制圧した帝たちは階層主が現れるであろう大きな扉の前で一息ついていた。

「この先、階層主がいるだろう。だが、臆することはない!なぜなら、俺たちは強者だからだ!幾度とない死の恐怖に打ち勝ち、己を叩き上げた強者だからだ!」

しんと、静寂が肌を刺すように伝わる。恐怖ではなく、出撃の号令を今か今かと待ち構える静寂。士気は上々、帝は高らかに手を挙げた。

「行くぞ!我々の明日を、未来を、魔族から取り戻すのだ!!!」

帝の号令に合わせ、響き渡る声は伝染するようにギルドメンバーを鼓舞していった。そして、扉が開く。扉を開けたそこには、1階と同じくだだ広い闘技場があった。メンバー全員が闘技場内になだれ込む。辺りを見渡すが魔物の姿はなかった。

「リーダー!天井に文字が!」

『サラマンダーVS選抜6名、前回勝利者の参加不可、魔法・スキル使用禁止、制限時間60分、塔の制覇時間残り時間20時間18分』

「6人は多すぎか?」

「!!!!!」

ギルドメンバーに誰一人として気づかれることなく溶け込んでいた魔物に一同面を喰らい、のけぞる者さえいた。二足歩行の赤い鱗に覆われてた竜種の末裔、まさに異形の姿だった。

「警戒しなくてもいい、試合開始まで手を出すつもりはない」

ギルドメンバーは一箇所に集まりサラマンダーに警戒しながら作戦会議を行う事にした。

「今回はスキルも魔法も使えない。故に、純粋な力が必要だ」

「ならば、我ら兄弟の力を使ってください」

名乗りを上げたのは双雲流開祖、ソウ・ライとウン・ライの2人だった。2槍の槍を多彩に操り2人で敵を翻弄する戦い方を得意とする。

「そうか、お前達なら安心だ、他に名乗り出るやつはいるか?」

そっと、手をあげ名乗りを上げたのは、幼い容姿のセツナという女の子だった。茶色のショートヘアがより幼さを際立たせている。

「わ、私行きます!ここでしか出番がなさそうなので」

「そう謙遜するでない!貴公の噂は我らも聞き及んでいる。武器の申し子と言わしめたその武勇、とくと拝みたいものだ」

大柄の男、ウン・ライと呼ばれる男はセツナの肩に手を置き、武人として名乗りを上げた事を讃えた。

その他に名乗りを上げたのは剛腕の武道家ゴウキ、先見の暗殺者タカ、蹴りを極めたシュウ。この3名だった。

「作戦としてはまず、我ら双雲兄弟が彼奴の力量を量ろう。後陣は彼奴の戦闘スタイルを見切るのだ」

「我々が倒しても良いがな!わっはっは!」

冷静なソウと豪快なウンは先発を買って出る。他のメンバーも拒否する事なく作戦を了承した。

「話はまとまったようだな。それでは、決闘開始!」

サラマンダーが手を掲げると天井に書いてある制限時間が動き出した。

「先手必勝!!!」

始まりと同時にウン・ライが槍を突き出し、突進する。

「双雲流1式、蒼天の一閃!」

サラマンダーは横に避け、難なく躱す。

「だがしかし!」

「我の姿は見えなかったであろう?」

ソウ・ライが二槍を携えウン・ライの背後から現れ、横に薙ぐ。サラマンダーは下にしゃがみ、これすらも回避した。

「2式、天の雷鳴!」

ウン・ライが突きの勢いで、しゃがみ込んだサラマンダーを上から突く。直撃する刹那、後方に飛び、またもや回避した。

「兄者よ、かつて我らの攻めをここまで回避できた者はいただろうか」

「がっはっは!いんや、居なかったとも、弟者よ!ならばこそ、我らはここで更なる高みへと至るのだ!」

「・・・・・・人という種で、スキルや魔力を使わずにこの境地へ至るのにどれほど鍛錬したであろうか」

「ふん!魔物に褒められても嬉しくねぇよ!3式 落とし雨!」

双雲流3式落とし雨は体躯の大きいウン・ライの得意技で、敵を覆い被さるような姿勢から複数の下段突きを繰り出す技だ。

「躱すなら後ろ、ならば背後に回るのみ!」

しかし、ウン・ライの突きを躱すどころか、その槍を掴み無力化した。

「ぬぅ・・・動かん!!」

「バカな!そんな事あり得ない!兄者の下段突きが!」

「・・・狙いはいい。コンビネーションも良い。しかし、貴公の目線を見ればどこを狙っているのかすぐに分かる。少しは弟を見習うのだな」

「兄者を離せぇぇぇぇぇ!!」

しかしこの槍もいとも容易く片手で掴む。

「直情的に見せかけた脇腹への突き。だが、本当の狙いは兄の槍を掴んだ腕への攻撃。見事だ」

「・・・ッ!!我々の攻撃を片手で受け止める化け物に褒められるとはな」

「その武器、槍を2槍から1つの大きな槍にできるのも面白い。ただ一つ、欠点があるとすれば槍は刺突武器。薙ぎ払いは死に至らしめるほどのダメージにあらず、突きでの刺突は的の部位を注視する必要がある為、僅かな目線を把握できれば簡単に回避ができる」

「はっはぁ!!簡単に言ってくれる。我らの突きは常人には見えぬ速さだというのに」

「貴公らが相手にしているのは常人か?」

「そりゃそうだな!」

ウン・ライは1槍の大槍を分解し、短くなった1つの槍を敵の腕目掛けて突き出した。サラマンダーは掴んでいた槍を手放し後方に跳ぶ。

「貴公らの技はそれで終いか?」

「ハッ!まさか!とっておきを見せてやるぜ」

「兄者よ、あれを使うのか?」

「ああ!いくぞ弟者よ!早雲流奥義!双獅月天!」

少しずつ、2人の肌が赤黒く変色していく。

「・・・!あれは、人間の域を超えている。まさか!脳のリミッターを外したのか⁉︎」

「察しがいいな、これこそ、我々が長年の努力により編み出した秘技!力を際限なく膨れ上がらせる事が可能なのだ!」

「恥を知れ!!自身を犠牲にすることに意味はない!リク・・・ゴーレムとの戦いで貴公らは何を学んだというのだ!」

サラマンダーが激昂したのも束の間、ウン・ライとソウ・ライの2人は地面に突伏して気を失った。

「・・・・大人しく眠ってもらうぞ」

残り時間42分15秒
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...