HGのリアル

リアルHG

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1章

突然の引篭り

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私には行きつけの喫茶店があった。

仕事が不定休なのもあり、空いた時間に30分~1時間ほど喫茶店で景色を変え自由な時間を過ごすのが小さな楽しみであり贅沢な時間だった。

平日の日中は基本的にガラガラであり、一人席は自分一人なんてこともザラで気楽なものだった。

お店のスタッフの方とも行く回数を重ねているうちに世間話をするようになり、時にお菓子を持っていったり等、良い関係でいつも親切にしていただき、とても居心地の良い場所であり時間であった。

今にして思えば・・・。

コーヒーを運んでいただく時に私は椅子に座っている。

つまりスタッフの方は上から私を見ることになる。そう、私の頭頂部を。

想像したらどう思われるのだろうとつらくなり、それまで多いときは週5通ってたが、3ヶ月一度も行かないまでになった。

「誰もあなたのことなんて見ていない」
「考えすぎ」

もちろんそういう声もあるだろう(というかほぼ全部か?)

でもそれが本人にはそう考えられない。思えない。むしろそう思いたいが、思えないのだ。

いつだって本人の悩みなんてのはそういうものなのかもしれないが。

めっきり外出は減った。

本当に必要な外出以外は仕事以外ほぼ家にいるようになった。

家族も理由を知っているから何も言わないが、気をつかわれているのは伝わってくる。

友達からの誘いも気乗りせず、外食すらしなくなった。

皮肉にも例の件で不要不急の外出を控えるようにと呪文のように唱えられていた時期だ。

それを理由にすればそれほどとがめられることはなかったのは不幸中の幸いかもしれない。

「人目が怖い」

そんな恐怖が芽生えてからは、とにかく「人にあわないように」「避けるように」なった。

私がガタイのいいイカツイ顔立ち、体格の男ならいっそスキンヘッドという手もあっただろう。

むしろそれはそれで貫禄ついていいのかもしれない。

しかし現実とは無常むじょうなもので、私は無駄に童顔でありガタイもよくない。

つまり似合わないのだ。HGが!(※HGについては序章参照)

ここからはネットショップ巡りの戦いが始まる。

アデランスに育毛剤、発毛剤、人生で一番本気で検索したキーワードがソレというのが実に切ない。

金銭的な事情でアデランスは却下。

育毛剤は用途が違うため発毛剤を試してみることになる(現在進行形だが)

次第に色々なことが面倒になっていき、ふと自分の時間が増えたことで(外出しなくなったことで)色々と考えるようになった。

ここから第二の人生?(余生か?)がはじまった。
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