ギガシス スリー

ミロrice

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──なんだ、このおっさん。
──なんて可愛い子なんだ。
「えっ、おっさん?」
「か、可愛いって、あたしのこと⁉︎」
──ちょっと! なんでこっちの思考が聞こえてんのよ!
──僕の思考が読まれちゃってますよ!
〝ああ、いきなり全通話モードはマズかったかな?〟
〝ふむ、では一旦被検体同士の相互通話はオフにしよう〟
「あ、あの、こんにちは」
「どうも、おっさんです」
「あ、いや、参ったな。ごめんなさい」
 紗和は素直に頭を下げた。
「あ、いえ、こっちこそ意地悪してごめん。鮫島宗介です」
「可愛いJK、百地紗和です」
「あ、あはは。も、百地さんも宇宙人に?」
 宗介は声を潜めた。
「あの、紗和って呼んでください。友達はみんなそう呼んでますし」
──いやぁ、本当に可愛い子だなあ。おっぱいもでかいし。
 紗和は真っ赤になった。
「あれ? 接続切れてなくない?」
──すごい、ここまでストレートに言うなんて。これが大人なのかなぁ。素敵、このおじさん、いや、宗介さんだっけ。
〝あれ? オフにしてないのかい?〟
〝え? あたしがやるの?〟
「おい!」
〝はい、切りました〟
「ホントかよ」
〝ホントホント〟
「えーと、さ、紗和ちゃんも宇宙人に、って、今の流れからそうですよね」
「ふふ、そうですね」
──か、可愛い。
〝ふむ、地球ではこういうのを可愛いと言うのだな〟
──こういうのとか言うな!
「あの、宗介さんの趣味はなんですか?」
〝ちょっとちょっと、そういうのはいいから〟
──なによ、親しくなるのも大事でしょ?
〝いや、それはのちのち。ほら、地球を守る相談とかしてよ〟
──そんなの、あたしにわかるわけないじゃない。
〝はあ〟

  ☆ ☆ ☆

 宇宙人がため息をついたその頃、煌はまだ怪獣と睨みあっていた。
──どうすりゃいいんだ? 俺、格闘技なんかしたことないんだけど?
〝パワーが体格比にしてかなり上がっているから、殴って蹴っ飛ばしてもかなりのダメージを与えられるはずだ〟
──そんなことして、周辺の建物に被害が出るんじゃないのか?
〝多少の犠牲はやむを得ん〟
──それはダメだ。俺が誰かを踏み潰したら、なんのために闘うかわからん。
〝視野を広く持て。地球を守るんだ〟
──ダメだ。
〝やれやれ、頑固だな。まあ、そんな君だから同化したんだけれど。しようがない。周囲の建物その他にバリアーを張るよ〟
──それができるんだったら最初からそうしろよ!
〝活動できる時間が極端に少なくなるんだよ〟
──なに? どれくらいだ?
〝およそ三分〟
──そうきたか。しかし他に選択肢はなさそうだ。
〝では、バリアーを張るよ〟
──ああ。
 煌が答えると、周辺の建物が一瞬だけ青く光った。
──これだけ?
〝ああ、しかし、君がノックダウンされると効果は解けるぞ〟
──あと出しはやめろよ。
〝さあ、いけ!〟
──おう!
 煌は両手を前に構え、背中を丸めた。
 怪獣は突然現れた巨人に警戒していたようだが、巨人が敵意を向けてきたのを察知して、足を踏み鳴らした。
 振動はまるでない。
 怪獣が頭を振ったが、ビルに当たると弾き返され、やや驚いた風だった。
 建物はどうもなっていない。
 建物が壊れないならばと、怪獣の目標は煌のみとなった。
──くそう、睨みつけてきやがる! 怖え!
〝ほら、時間がないぞ〟
──わかってるよ!
 煌は前に出た。
 ちびっこが見ているかもしれないので、ぐーパンチはまずかろう。
「うおおお!」
 雄叫びを上げたが、フェイスシールドのせいか、外部からは「デアッ」みたいな声に聞こえた。
 チョップを怪獣の頭に食らわせた。
 どおーん!
 と大気が震える。
 ビルなら真っ二つにしそうな威力だったが、怪獣にはさほど効いたように見えない。
 口吻から大きく伸びた牙を煌に向け、突進してきた。
「ひいいいい!」
「デアッ」
 煌は牙を掴んだが、怪獣は勢いを緩めない。
 煌の足がずるずると滑る。
「くそっ、こいつっ!」
「デアッ」
 怪獣が煌の足元をすくうように頭を振って、煌の体が宙を舞った。
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