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欲毒 後編
しおりを挟む私は多分、欲望まみれの女だ。
普段はなんでもないように振舞っている。
壊したくないからだ。
今の関係を? いいや違う。
アリスのことを。
希美は惚けた顔のアリスを布団の上に横たわらせる。アリスがここに至るまで口につけた全ての飲み物に媚薬が仕込まれていた。
それは当然希美が仕込んでいたものだった。
「ずっと我慢してた」
希美はアリスのことを抱きしめながら耳元で囁く。囁くだけでアリスの体がピクリと揺れて、その桜色の唇の隙間から僅かに吐息が漏れる。
アリスの首に希美は唇を押し当て、優しく噛む。舌でなぞる。
「せん、ぱ……」
媚薬の影響で全身が敏感になっているアリスはそれだけで、自分の身体が新たな命を宿す為の、愛しい生物の欲望を受け入れる準備を整え始める。
希美の手がアリスの太腿の隙間をなぞり、希美がその手を見ればそこには欲情をそそる液体が糸を引いていた。
私はずっと胸の内を明かすことがなかった。
私とアリスの力場が絡み合ってたとしても、アリスは私の本心には気づかなかっただろう。
希美はゆっくりとアリスの胸を指でなぞる。
本人はコンプレックスにしているらしい胸は希美の手のひらに収まる程度には大きい。
その頂きには可愛らしく綺麗な突起物。誰も触れたことがないだろう、穢れのない色をしていた。
指で弾く度にアリスの体が揺れる。
僅かな嬌声が口の隙間から漏れだし、アリスは羞恥から自分の口を手のひらで覆っていた。
我慢をしているその声も、可憐で汚しがいがあって、希美の心をただ満たしていく。
私はずっとこの欲望を我慢してきた。
今にも手を出してしまいそうになった場面もいくつかあった。
壊したい。
多分私は、ケダモノと何ら変わりないのだと思う。
「はぁ……んぐ……せ、先輩……」
「二人きりなんだし……名前で呼んでくれませんか?」
耳元で囁くとアリスは顔を赤くして小さく呻く。希美はわざとらしく聞こえないふりをした。
「もっと大きな声で」
優しく、頭を撫でながらそう言えばアリスは小さく「希美……さん」と答えた。
「どうされたいですか? アリス」
「どう……って」
希美はアリスのことを抱きかかえかがらまたアリスの下腹部を優しく撫でた。アリスの呼吸が荒くなる。
希美はまだ、アリスの秘扉には触れていない。
アリスはもどかしい気分になっていた。
もうこんなに濡れて準備もできている。
それなのに希美は一向に触れようとしてくれない。
逝きたくても逝けない。
絶頂を味わえない。
だから希美が言いたいことはアリスもわかっていた。それをアリス自らに懇願させようとしていることもわかる。
羞恥心がアリスの心を満たしていく。
自分が、こんなにもヒト科の雌としての本能に抗えないなんて、普段は考えたこともなかった。
「自分でちゃんと”お願い”してください」
希美が耳元で笑っているのがアリスにはわかった。アリスは息を荒くしながら、もう堪えきれない感情をゆっくりと、口の隙間から吐き出す。
「……して……ください」
「よく聞こえません」
「……私の、……」
「ほら、頑張って」
「……私の…こと、めちゃくちゃにしてくだ……さ、い…!」
アリスのその「お願い」を聞いた希美は邪悪な笑みを浮かべた。
「よく出来ました」
「ひぁっ!?」
希美の指がヌルりと、アリスの秘部に入り込んだ。
希美の細く長い指が膣の中を掻き回すと、アリスは身を仰け反らせて、全身に稲妻が走り抜けたような快楽に襲われる。
「ふふ、指入れただけでイッちゃいました?」
希美は盛大に濡れた布団のことを見ながら嗤う。
(あ……れ、私、今、どうなって……?)
アリスは突き抜けた快楽に思考が追い付かなかった。並列思考演算者としての演算能力もどこかへ行ってしまった。
「可愛い」
希美が呟く。
「いつも可愛いけど、私だけが独占してるその顔は、もっと可愛い」
惚けていたアリスの頭に希美の声が響く。
と、同時にまたアリスの膣の中に希美の指が入り込んでくる。
アリスは悲鳴じみた嬌声を上げた。
「あっ、や! 先、ぱッ! わたしっ、まだ! イッたばかりで……あぁッ!」
希美の腕をアリスは必死に押さえようとした。
でも手に力が入らず、それは無意味に終わる。
私はずっとアリスだけを愛していた。
でも我慢し過ぎた。
桂奈は愚策を踏んだ。
私が我慢をし過ぎると……怪物になることをあいつは失念していた。
アリスを滅茶苦茶にしたい。
壊したい。
その気品を汚したい。
余裕のある不敵の笑みから余裕のない顔になる様は、本当に美しく綺麗だ。
穢れのないその美しい四肢、身体、生殖器に私の爪痕を遺したい。
アリスが私のものである証拠を。
一生消えない傷を。
「んぅうゥッ!」
アリスが必死に押し殺した声が漏れる。
二回目の絶頂を果たしたアリスは呼吸を荒上げて涙の滲む目で希美のことを見てくる。
ああ、実に可愛い。
希美は優しくアリスの額にキスを落とす。
しかしアリスはせがむような目で口を開く。
希美は不敵に笑うと、額にキスした後にもう一度アリスの唇にキスをする。
絡め合う舌と舌。
熱の篭った唾液の交換は、二人を興奮させる。
アリスの歯を舌で撫でる。
綺麗に整った歯。白いその歯を舌で数えていく。
「希美、さん。私、その……」
「どうしました?」
アリスはまだ羞恥を感じているようで顔を伏せぎみに口を開く。
「あの、薬は持ってきました……か?」
「ええ、勿論」
「ほしい、んです。先輩の…やつ…。その……子宮が……疼いて仕方なくて……」
「ちゃんとお願いできるようになってきましたね。偉い偉い」
希美はアリスの頭を撫でながら不敵な笑みを浮かべた。
そんな希美の手には包装に包まれた錠剤が一粒。
地球全体で見ても少子高齢化は進んだ。
それは多様性を重視する国家が増えたこと、世界の幸福度が高水準だったことが理由に挙げられる。
文明が発展すると、人は意味のわからない行動を起こす。
それはある意味「幸せのネズミ」と同じ結果を辿るのだろう。ネズミに何一つ不自由のない幸福な暮らしを与えたら、どうなるのか。そういう実験だ。
人はそんな未来を辿りたくはなかった。
だから生まれたのが希美の持つ薬。
女性同士でも子を成すことができるようになる薬だ。
具体的にはどうやって?
擬似的な男性器を一時的に生やすことが出来る。
「え、……え?」
アリスは希美の股間部分から生えたそれを見て、予想を遥かに上回る大きさのそれに思考が停止していた。
少なくとも自分の知る日本人の平均的な男性器の大きさではない。平均の二倍位は平気でありそうなそれを見たアリスは目をぐるぐると回して困惑していた。
「お、大きすぎませんか…?」
「以前一人で薬飲んだ時もこれくらいありましたね。母さんに聞いたら父さんがそんくらいあるらしいです」
「……」
遺伝。
恐ろしいものだ、とアリスは呑気に考えていたが鼻先に迫ったそれを見て、立ったままの希美のことを見上げる。
「口で咥えて」
希美からの強引な命令にアリスの子宮は疼き、脈動する。それは雌として、希美に完全に服従してしまった証なのかもしれない。
アリスは口を開いて、恐る恐る咥えようとしてみる。
(太過ぎて、口に入り切らない…)
アリスは先端を咥えるのが精一杯だった。
アリスの口内には特有の匂いが広がる。発情を誘う匂い。舌先にヌメリのある液体が少し落ちてくる。興奮するその苦味は、薬の作用で生み出されている精液だ。
「口が小さくて入り切りませんか?」
「ん、ぐ、ふーっ……ふーっ……」
アリスの頭を撫でながら必死に口を開こうとしているアリスを見て、希美は興奮を覚える。
なんて愛らしい生き物なのだろう、と。
「アリスさんは経験がありませんからね」
「……ぷは、先輩もでしょう」
「おっと、それはいけない」
アリスは希美の逸物から口を離して、手の甲で口を拭う。
でもまたそれを目にして、希美のことを気持ちよくさせることが出来なかった自分に腹立たしい気持ちになる。
「口が小さくても……舐めるくらいはできます」
「おぁ」
アリスは先端を舌でなぞる。
反り返った部分を希美の反応を見ながら咥えたり、唇で摘んでみたり、根元まで舐めたりしてみる。
そして希美がやけに反応を示す部位を見付ける。
「……ここですね?」
「大当たり……くっ」
アリスはカリの部分に吸い付くと希美が前屈みになる。
口を大きく開けて咥えて舌で弄れば、ビクンと脈動した後にその先端から白濁の液体を飛び散らせる。
口の中に入り切らない独特な香りを放つそれを顔に浴びる。口の中に広がる苦味。しかしそれは愛おしい人の子種だと理解すると、アリスは吐き出すことが出来なかった。
「………」
アリスは舌で希美の味を堪能しながらそれをゆっくりと飲み込む。
子種に塗れながら、口の中に吐き出した自分の欲情を飲み込むアリスを見た希美は、興奮のあまり性欲を排出したばかりだと言うのに海綿体は再び硬直し仰け反る。
「お味は」
「……生のイカ、金木犀を添えて」
「不味そう」
「貴様も味わえ!」
「んぶ」
アリスが飛び跳ねると強引に希美と唇を重ね合う。希美の口内にアリスの舌が侵入してきて、そこから独特な苦味が広がる。
「んぶふっ、おぇ! まっずうぅ!? こ、こんなの飲ませたんですか? まじですみません」
「ふふふ」
アリスが微笑む。
「さっきまでの希美さん、ちょっと怖かったですけど、いつもの調子に戻ってきましたね」
希美は言われてから、気づく。
そして後悔した。なにをしているんだ、と。
自分の欲望だけを発散しようとしていたことに気づいた希美は、アリスを怖がらせてしまったことをただただ悔やんだ。
「えっと……」
「あ、謝らないでくださいね? ……意外とその、Sっ気のある希美さん……良かったので」
アリスが頬に手を当てて照れていた。
アリス自身、自分にここまでのMの気があるとは思っていなかった。
だから責めてくる希美にアリス自身非常に興奮していた。
「本当にもう…可愛いですね」
希美はアリスのことを抱きしめた。
硬くなった海綿体がアリスの下腹部に押し付けられる。それだけでアリスは自分の胎内にこれがどこまで入るかを悟り、恐怖と興奮、好奇心が同時に心の中を満たした。
希美はまだ子作り出来ないことを悔やみながらも、避妊具を身につける。
「つける練習しました?」
「しましたがァ!?」
「唐突にキレるな」
「こんな所で童貞ムーブしたくないので…」
「女なのに童貞卒業ってのもなんか変な話ですけどね~」
希美が布団の上に座る。
アリスはそんな希美の前に腰をつき、膝を立てて座る。
二人は自分達の心臓が高鳴るのがよくわかる。
ああ、本当にこの時が来たんだ、と。
「……ようやく本番ということですね」
「やるんだな!? 今ここで!」
「アリスさん、そんな声震えてるのにふざけても意味ないですよ」
「うぐ……痛いとこつかないでください。……その、変な声出しても嫌いにならないでくださいね?」
「むしろ興奮すると思います」
「正直過ぎませんか? ……えっと」
「……痛かったら手をあげてください」
「歯医者方式……」
希美はアリスのことを優しく押し倒し、アリスの膝に手を添える。ゆっくりと股を開かせれば、今まで誰の目にも触れることがなかったのだろう。綺麗な秘部をじっくりと観察することが出来た。
「あの……そんなに見られると恥ずかしいので……」
「滅茶苦茶綺麗ですね」
「ひーーーーーっ!」
アリスは顔を真っ赤にした。
粘液で濡れた子作りの為の入口は、相手を受け入れる準備を整えていた。
希美は唾を飲み込みながら、肉棒の先端を押し当てる。吸い付いてくるひだ。海綿体の先端はあまりにも簡単に沈み込んでいく。
「んっ、ふっ、んぐっ…!」
アリスの堪えた声が鼓膜を揺らす。
ゆっくりと、馴染ませながら押し込んでいく。
奥へ、奥へ。
神秘への坩堝をゆっくりと、粘液に馴染ませながら。
「いっ…!」
「痛かったですか…!?」
アリスの悲鳴に希美は思わず動きを止めた。
甘い坩堝から流れ落ちるのは赤い粘液混じりの体液。
「いったぁ~……。処女喪失おめでとうございますぅ……」
「自分で祝ってる…」
「結構痛かったです…」
「結構馴染ませたつもりでしたけど…足りませんでしたか」
「確かじっくりと濡らすと破瓜の痛みもなければ血も出ないらしいですね。実際のところ処女膜というのは厚さが1mmもある粘膜であり、膜と言ってる割には最初から穴があいていてあまりこの表現は正しくないらしいです」
「結構余裕ある…」
「今度希美さんで試しましょう」
「私は攻めらしいので解釈違いされます……じゃなくて、しばらくこのまま慣らしますか」
希美とアリスは中途半端に繋がったまま布団の上に横たわる。希美は後ろからアリスのことを抱き締めながら自分の欲情がアリスの中に収まっていることに、何か感慨深いものを感じていた。
「私達が出会って、まだそんなに経ってないんですよね。半年くらいでしたか」
「N,O,I,Dの思考加速のお陰で実質三年くらい一緒にいますよ」
「そんくらい一緒にいた気がします」
最初は胡散臭い変な奴だと思っていた。
でも何故か気が合うし、話も合う。
先輩に近付いた理由は、才能と美貌。
そもそも毎回決まった点数で学年三位を取っている時点で並列思考演算者が確定していたから。
でも、私達は多分、惹かれあった。
私と先輩は、出会う運命にあった。
今こうして繋がったのも。
私達が愛し合えたのも。
奇跡でもなんでもなく必然だったのだと思う。
希美はアリスの下腹部を撫でる。
ここに自分が入り込んでいる。
温かい。アリスに包まれていることが幸福に感じられた。
希美はこの行為をただ欲を発散する為だけの行為だと今まで認識していた。
その認識はアリスのお陰で改められた。
いつまで経っても、アリスがいなければ自分は化け物になってしまうようだ、と希美は自分を嫌悪する。
「あ、なんか変なこと考えてますね」
アリスが振り返る。
その青い瞳と視線が交差する。
大体の自己卑下が見抜かれてしまうのが彼女の怖い所だ。
「当てましょうか……私の事を性欲を発散する玩具に仕掛けたことを悔いてますね?」
「なんでわかるんですか」
「こんだけ密接に繋がってわからないことあります?」
アリスもまた、自分自身の下腹部を撫でた。
希美と手が重なった。
「希美さんの悪い癖です。すぐに自分を否定してしまうというのは」
「……」
「でも希美さん、貴方は化け物なんかじゃない。ヒーローです。……私だけの」
アリスは何度自分が希美に救われたのか。ちゃんと覚えている。
最初はエクリプスの時。
その次は二回も死にながら自分のことを救おうとしてくれた。そしてついでに世界も救った。
更に言えば世界が都合のいいものに書き換えられても、希美は気合いでアリスのことを思い出して神に刃向かった。
「だからこれからも、自信を持って私のヒーローでいてください」
「……」
希美は静かにアリスのことを抱き締めた。
希美は静かに。ただ少しばかり目尻から涙を零した。
「あと希美さん。痛み引いてきたのでそろそろ全部入れても平気ですよ」
アリスがそう話す。
「では……ゆっくり奥まで入れますね」
「はい、どうぞ。それが入り切るかわかりませんが」
希美がゆっくりと腰を動かして半分程度まで入っていた海綿体をアリスの中へと押し込んでいく。
しかしアリスの腟内は希美の逸物の形によく馴染んでいた。軽く押し込んだつもりが、ヌルりと硬質化した海綿体の先端が子宮口まで辿り着く。
「んぁあ゛ッ」
横隔膜を圧迫したアリスの口から空気と声が漏れ出した。アリスの視界はまるで光が点滅しているかのようにチカチカと火花が飛び散るような幻覚に襲われていた。
「え、あれ、吸い付きが強過ぎてっ」
「せんぱ、動かなっ……あ゛っ!」
希美が慌てて引っこ抜こうとしてしまったことにより、亀頭の引っ掛かりが腟内の襞を撫でながら勢いよく入口までなぞる。
アリスはそれだけで絶頂を果たしてしまい、その数秒間に数回も頂きに逝ってしまう。
「んん゛、んぅうぅッ! ら、やめ、止まっ」
「も、う、無理っ。気持ち良すぎてッ、腰が止まらないんですッ」
「んお゛ッ」
希美は動きを止めようとしたが、アリスの腟内の肉壁が勝手に吸い付き、抜こうとすれば飲み込もうとし、押し込もうとすれば押し返そうとしてきて、ピストン運動を促すことによって腰を止めることが出来なかった。
もう本能に抗うことが出来ない。馴染ませようとしていた時間は、寧ろ二人の情欲を極限まで引き出す結果となった。
アリスは枕に顔を埋めて襲い来る快楽に必死に耐えようとする。
希美はそんなアリスの背後から覆い被さり、アリスのことを抱き締めながら動きを止めることが出来ない腰と、本能に必死に抗おうとする。
「ごめんなさい…ごめんなさいッ、やだ、止まらないっ、ごめんなさい気持ちよくて…ッ」
「あぁッ、はっ、はぁ゛ッ、あ゛ッ」
アリスはもう何度も目の前で火花が散り、何度か意識が飛び掛けた。
希美がアリスの首筋に噛み付く。
それは無意識であり、しかしその痛みも今のアリスには快楽として脳に襲いかかってくる。
(やばい、なにも、考えられなくなって────)
アリスの意識がプツン、と一瞬途切れた。
が、襲い来る快楽によってまた意識が再起動する。
希美はなんとか逸物をアリスの中に押し込んだ状態で動きを止めて、突き上げられた子宮口がアリスの内臓を圧迫していた。
逸物とは違う何か熱いものが自分の胎内に向かって放出されているのがアリスにはわかる。でもそれはゴム質の避妊具によってアリスの胎内に入り込むことを防がれているようだった。
それは呼吸もままならない程であったが、なんとか、必死にアリスは呼吸を繰り返す。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
希美が子供のように泣いていた。
アリスは初めての性交渉で死にかけるという類稀な経験をしたな、と達観しつつ体勢を変えて仰向けになる。
「はっ、……はぁっ、ふぅ、死ぬかと思いました」
「ほんとに、生きててよかった…」
「それデカ過ぎです希美さん。そして私も…感じ過ぎですね…やばい…癖になる」
アリスは希美に強引に意識を飛ばされかけたことが少しばかり癖になっていた。あんな快楽を与えてくれるのは後にも先にも希美だけだろう。
「慣れました? 落ち着いてストロークできます?」
「……ぐすっ、次はゆっくりやります」
涙目の希美を見たアリスはニヤリと笑う。
なんだかんだ、初めての事が難しいと言うのは希美も同じなようだ。実に可愛い。
ズルりと、希美が逸物をアリスの胎内から引き抜くとそこには明らかに一般人が出すそれよりも多い量の白濁液がゴムの液だめの中に満たされていた。
「…これ一回分?」
「いや、夢中でわかんなかったんですけど…何回か出してます」
「つまり希美さんは…出しながらピストン運動してた、と?」
「………ちょっと、恥ずかしいんでそんなこと聞かないでください」
アリスは「よく破れなかったな…」などと考えていた。どうやらテンビの避妊具製造技術は極めて高いらしい。
「よっしゃ! ラウンド2です先輩!!」
「ノリノリになってきた」
二個目の避妊具を身につけて今度はお互いの顔が見える体位で、希美はもう一度アリスの中に挿入する。
今度は本能に抗うと決意を抱いていた。
「……大丈夫そうですか?」
「……慣れてきました」
「んっ」
ゆっくりと優しく押し込む。
アリスの口から、さっきの悲鳴と嬌声が混ざった声とは違う声が漏れたことに、何故か安心感を抱いた。
奥まで入れてから希美はアリスのことを見る。
アリスは少し余裕がなさそうだが、希美の視線に気づくとニヤリと笑う。
「んふふ、先輩の形に馴染んできましたね」
「これが子宮口ですか? この奥の少し硬いやつ…」
「この体勢だと亀頭の上側にあると思います。当たってるのはそれですね」
「へー、ちゃんとあるんですね。都市伝説かと思ってました」
「エロ漫画しか読んだことがない童貞みたいな反応やめてください」
希美はしばらく坩堝の最奥の感触を覚えようとしていた。しかしゴム質の壁がもどかしい。
もっと密接にアリスの中を堪能しようとすると、このゴム質の避妊具は希美にとっては邪魔な存在であった。
でもそんな無責任なことはするつもりは希美にはなかった。
「このジョリジョリしてるのがGスポットですか?」
「っ、ふっ、は、い。そうです。意外と浅い所にありますよ」
「はぇー、自分で指とか突っ込んだことなくて…」
「おや、人によって場所とか違うらしいので自慰行為はした方が学びがありま……っす、ふぅ。よ?」
希美もアリスも恥ずかしさは消えてきたのか、希美はアリスが気持ち良さそうな場所を探りながら腟内でゆっくりと肉棒を動かした。
アリスは弱い所を何度も刺激され、なんだか声を抑えようとするのも馬鹿馬鹿しくなってきていた。
「あっ、入り口、ぐぽぐぽするっの、すきっ」
いやらしい水音と垂れる粘液。
二人の息遣いが交わる。
「の、希美さ、ん、ちゅー。ちゅーしましょ?」
アリスがキスをせがむ。
希美はそれに応えて、キスをしながら希美はアリスに腰を優しく押し付けて、肉棒はゆっくりと再奥まで押し込まれる。
横隔膜が圧迫され、アリスが息を吐き出し、それは先程自分がアリスの口内に放出した精液の匂いが充満していた。
不思議なことに不快には感じず、ただ性的な興奮だけを感じた。
(アリスさんのこと、私がどんどん征服してるんだ…)
希美は結果的にアリスに自分のものを注ぎ込めていることに非常に満足感を覚えていた。
「ふ、ふふ、は、激しいのも結構すきでしたけど、こういうのも、なんか、いいっ」
アリスは先程とは違って笑顔を浮かべていた。
希美はそんなアリスの笑顔が愛おし過ぎて、もう一度キスを交わす。
遅く動いたり、速く突いたり。
奥まで押し付けてからゆっくりと腟内を堪能しつつ引き抜いたり、入り口に何度も肉棒の先をキスさせたり。
時間を忘れて希美とアリスはマイペースな性交渉を楽しむ。
徐々にコツを掴んできた希美とアリスは、アリスの弱い所を突き上げたり、希美の為に腟内を締め付けたりもしてみる。
「私っ、そろそろっ、イきそうです…!」
「私もっ、あっ、一緒に、一緒にッ」
希美はアリスのことを抱き締めながら一番奥にまで一気に腰を叩き付ける。アリスは脚で希美のことを抱き締めながら、吐き出される欲情を胎内で一身に受けた。
膨らんでいくゴムの感触。
目の前がチカチカするような絶頂ではなく、心地よい、痺れるような絶頂を希美とアリスは味わっていた。
希美とアリスはしばらくそのままの姿勢でいたが、ゆっくりと顔を上げると余韻を楽しむように唇を重ね合ってそのまま舌を絡めていた。
「あははっ、楽しかったですね。先輩」
「ええ、とっても」
二人は本心のままの笑みを浮かべると……避妊具を付け替えて3ラウンド目に突入し、時間を忘れて行為に及んだ。
今まで出来なかった分を補完するかのように、何度も何度も。お互いが果てるまでその行為を続けた。
◇◇◇◇
「旅行どうだった?」
「まじで気持ち良かった」
「馬鹿正直~」
希美は地球に戻ってきていた。
そして星間同盟アストライアの地球支部である東京湾に新設された人工島で、美緒と会っていた。と言うのも、美緒とは仕事上の相棒のような立ち位置になっている。
「桂奈ちゃんが死にそうな顔してたからあとで煽りに行くといいじぇ」
「そうします。あの野郎、私とアリスさんが致さないように妨害してましたし」
「そりゃ、自分の目が届く範囲で好きな人がおせっせしてたらそれはNTRビデオレターみたいなものでは?」
「確かに」
なら私とアリスの家に住むなよ、と希美は思ったが、桂奈は今は戦艦アルカディアに住処を移していた。やろうと思えば自宅でも出来るだろう。
「てか君らがいない間に妄想実現者犯罪者激増したよ。私は殆どツキヨとイーグルにどつかれてるからあんまり対応できなかったし」
「えー、私が出ないとダメなやつですか?」
「平気じゃなーい? ただアリスちゃんが躍起になって指揮系統の再構築してたのはそういうことだよにぇ」
良くも悪くも、元KENZAKIグループである星間同盟アストライアはアリスを頂点とした指揮系統を確立していた。
しかしそのままだと非常に良くないというのは先の戦いで判明している。
「でさでさ! 聞きたいんだけどチンチン生やすってどんな感じ?」
「ぶっ」
美緒が目をキラキラに輝かせながら聞いてくる。希美は飲んでいたコーラを吹き出しかけた。
「今後の参考までに…」
「アルペジオさんって、そもそもそういうのついてるんですか?」
「いやなんで相手わかるの?」
「見てれば分かりますよ」
美緒がアルペジオに恋愛感情を抱いている、と言うのは隠そうとしても周囲には気付かれていることだろう。
「そもそもさー、アルちゃん知識なさすぎて私のアピールにも気づかないんだよにぇ…」
「まずホテルに連れ込みます」
「おっと、パワープレイしようとするな」
「無知シチュですよ。合法です」
「違法だよ」
美緒は案外奥手なのかもしれない。
希美は飲み干したコーラのペットボトルをゴミ箱に向かって放り投げながら立ち上がる。
「さて、仕事行きますよ仕事」
「一応私ら学生なんだけどにぇー」
「アルバイトですよ。ちょっと時給が高い」
「時給2万円のアルバイトってなにさ」
希美と美緒はそれぞれ武器を背負って歩き出した。
その日の夜。
希美が帰宅するといつものようにリビングから夕食の匂い。
靴を脱いでリビングの扉を開けると雑に着替えた途中だったのかワイシャツ一枚でエプロンという謎の格好をしたアリスがキッチンの前に立っていた。
希美が帰ってきていることに気づいていないのか、鍋の前でお玉を構えて仁王立ちしている。
そんな欲情をそそるアリスの生脚を見て、希美は既に理性が吹き飛びかけていた。
「……」
希美はアリスに背後から近寄ると後ろから抱き着いてみる。
「うお、先輩いつの間に」
「なんて格好してんですか。誘ってんですか?」
「あ、いえ、これは雑に脱いでそのまま料理を……」
希美はコンロの火を止めるとアリスのことを抱えて寝室に向かおうとした。
「あーっ! 先輩! 夕飯がーっ!」
「後です後。抱きます」
「先輩に躊躇と遠慮がなくなってる!!」
欲という毒。
壊そうとしたのは私なのに、壊れてしまったのは私なのかもしれない。
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