大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する

時岡継美

文字の大きさ
9 / 75
1皿目 魔牛のステーキ

(7)

しおりを挟む
「なんだよ、おまえ人間だったのかよ。てっきりヒト型の魔物だと思ってた」
 リリアナが自己紹介のために自分の冒険者カードを見せると、テオは驚きと安堵を隠さなかった。
 
「失礼ね! 魔物ってなによ」
「失礼とかじゃなくて大食いのレベルがおかしいだろ。俺、おまえに食べられる覚悟までしたんだからな」

 リリアナがぶすくれる。
「嫌よ、不味まずそうだもの。食べてくださいって懇願されたって御免だわ」
「懇願なんかするか!」

 リリアナとテオのやり取りに苦笑しながらハリスが魔牛のステーキを頬張っている。

 ハリスがフライパンの前から離れると、今度はリリアナがそこに陣取った。
 魔法で水を出し肉を焼いたフライパンに注ぐとスプーンでかき混ぜる。
 フライパンに残っている肉やハーブのくずをこそげ取るようにしてよく混ぜ合わせ、さらに追加として草原エリアで採取したハーブをナイフで手際よく刻んで入れる。
 爽やかな香りと甘みがあるだけでなく、消化促進・胸やけ改善・解毒効果の高いハーブだ。

 魔物の肉が体質に合わず、腹痛を起こしたり蕁麻疹が出たりすることが稀にある。
 先ほどテオが魔牛のステーキを食べるのが初めてだと言っていたため、リリアナはこのハーブを使うことにした。
 最後に塩・こしょうで味を調えてカップに注ぎ、一口味見する。
 
 ハリスが肉の付け合わせに使ったハーブが、スパイシーな味だったりほのかに酸味のある味だったりとバリエーションが豊富だったため、肉の旨味と合わさって十分味わい深いスープになっている。
 熱いスープが喉を通って胃に染み渡る感覚が心地いい。
 
 リリアナは、納得のいく味に仕上がったスープに満足して大きく頷いた。
 カップに注いでテオとハリスにもスープを渡すとレオリージャの前には水を置き、火を消して代わりにランタンを灯した。
 
 テオは尚も、
「だいたい俺はこんなちっちぇえヤツに負けたわけじゃないからな!」
とぶつくさ言っていたが、スープを一口飲むと静かになった。
 
「湯気の立つスープ飲んだの、いつ以来だっけ」
 なにかを懐かしむように目を瞑っていたテオが、ゆっくり瞼を開く。
 その茶褐色の目には、ランタンのやわらかい灯りが映っている。
 
美味うまい」
 呟くようにそう言ったテオを見て、リリアナは嬉しそうにうふふっと笑い、ハリスも満足げに口元を綻ばせたのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

《完結》戦利品にされた公爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
戦いの《戦利品》として公爵邸に連れて行かれた公爵令嬢の運命は?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...