不機嫌な藤堂君は今日も妖を背負っている

時岡継美

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「せっかくトイレの花子さんが4人いっぺんに抜けて、ちょっと軽くなったのにね」
「ああ」
 ムスっとした顔でうなずきながら藤堂君がイスに座る。

 ヨーコちゃんに捕縛されてどうしようもなくなったわたしは、藤堂君に助けを求めた。
 電話の向こうでさんざん渋っていたけれど、不承不承といった様子で来てくれたのには心底感謝している。

 驚いたことに、数日会わなかっただけで藤堂君が背負っている妖の山がまた一段と高くなっているではないか。
 連休中は参拝客が多くて、お祓いの件数も多かったらしい。
 お父さんが祓えば祓うほど、藤堂君のほうへと飛んできてしまうのだ。気の毒としか言いようがない。
 
 しかしいまはそのことを一旦スルーして、ヨーコちゃんの問題を解決するのが先決だ。
 藤堂君はいつものように頬杖をついて胡散臭そうな目つきでヨーコちゃんを見ている。

「なんでうちの制服着てんだよ」
「校舎に入るにはこれを着ないといけないって思ったらしいよ」
 藤堂君を待つ間にヨーコちゃんと交わした会話を説明する。

『ねえ! この子イケメンだね!』
 どうやら妖狐にとっても藤堂君はイケメンの部類に入るらしい。
 ヨーコちゃんのはしゃいだ声を無視して説明を続ける。
 
「探し物をしていて、わたしたちに手伝ってもらいたいらしいの」

 ヨーコちゃんはわたしと藤堂君のやりとりなどお構いなしに色めき立ってしっぽを揺らしている。
『あたしのことヨーコちゃんって呼んでね!』
 
「……人にものを頼んでいる態度には見えないな」
 藤堂君には妖の声は聞こえないけれど、ヨーコちゃんのはしゃぎようを見てなんか違うぞと思っているらしい。大正解だ。

「ヨーコちゃんって呼んでって言ってるよ」
「俺のことは弥一でいいよ。で、探し物って?」

 わたしには「下の名前で呼ぶな」と言ったくせに、ヨーコちゃんには気安く「弥一でいい」って言うんだね。
 藤堂君の態度になんだかモヤモヤするものを感じながら続きを説明する。

「うちの高校の裏門から少し行ったあたりに小さな祠があったらしいの。でも去年の台風で流されちゃったんだって」
 台風のことならわたしもよく覚えている。
 大型台風が猛威を振るって用水路の水があふれたり大きな木が折れて倒れたり、この近辺もあれこれ被害が出た。
 小さな祠が流されたっていうのはニュースにはなっていなかったと思うけど、高校の裏手には用水路が流れていることは知っている。
 その用水路の水があふれたせいで流されていたって不思議ではない。

 藤堂君も理解してくれたらしい。
「で? 祠になにがあったの?」
「狐のお面だって」

 藤堂君が「うーん」と唸る。
 去年のあの台風からすでに半年が経っている。見つかるものなんだろうかと、ヨーコちゃんから話を聞いたときにわたしも思った。
 
「ここで悩んでいても仕方ないから、とりあえずその場所に行ってみるか」
 藤堂君が立ち上がった。

『やったー! 弥一ありがとう!』
 ヨーコちゃんが喜んでぴょんぴょん跳ねた。

 こうしてわたしたちのお面探しがはじまったのだった。
 
 
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