不機嫌な藤堂君は今日も妖を背負っている

時岡継美

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から傘小僧(1)

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 翌日は朝からどんよりとした曇り空だった。

 まるで今のわたしの気持ちみたいだ。
 登校中も頭の中は物理用語と公式でいっぱいで、沈んだ気持ちのまま自転車をこいだ。
 
 これじゃますます物理がきらいになるだろう。
 深いため息をつきながら1年5組の教室に入ると、京香ちゃんが「おっはよう!」と言いながら抱きついてきた。

 京香ちゃんの元気いっぱいな様子を見てわたしのどんよりした気持ちも少し晴れる。
「おはよう京香ちゃん。今日も元気だね」

 ここで朗報がもたらされた。
「書道部の先輩が物理教えてくれるって! 今日のお昼、部室で食べながら教えてもらう約束したんだけど行ける?」
 
 もちろんふたつ返事でオーケーした。
 物理を教えてもらえる上に筆化けのご機嫌うかがいもできるだなんて一石二鳥だ。
 さすが京香ちゃん!

 自分の席にカバンを下ろしながらなんとなく窓のほうを見るのがクセになっているわたしは、今日も藤堂君の不機嫌そうな様子と妖の山を確認……と思ったら、頬杖をついている藤堂君と目が合ってしまった。
 驚いてパチパチと瞬きしているうちに藤堂君がフイっと顔を窓の外へと向ける。

 あれ? 今たしかに目が合ったよね?
 藤堂君がわたしを見ていたってことかな。それとも偶然?

 それだけでなんだかドキドキして、1時間目の英語の授業は上の空になってしまったのだった。


「ねえ、なんかわたし今日、藤堂君にめっちゃにらまれてる気がするんだけど、もしかして一緒にお昼食べる約束とかしてた?」
 お弁当と物理の勉強道具を持って第二校舎へ向かう途中の渡り廊下で、京香ちゃんがおそるおそる聞いてきた。

「ううん、全然」
 即座に否定する。
 これまでも藤堂君と一緒にお昼を食べたことはないし、そんな話になったこともない。
 でも京香ちゃんの言う通りで、なんだか今日は藤堂君のほうを見るたびに一瞬目が合うような気がしている。

「あかりんを連れまわしてるせいで怒ってるのかなあ。もしも文化祭のお願いが原因なら、あきらめるから気にせずに言ってね? あかりんと藤堂君の仲がこじれてケンカ別れになったりするのはイヤだからね?」
 心配そうな顔をする京香ちゃんに笑ってみせる。
「うん、だいじょうぶだよ。とにかく今は物理をどうにかうすることに全力を注ぐから、がんばろうね」

 わたしと藤堂君が意地の張り合いをした結果、物理の点数で賭けをしているというこの現状が果たしてケンカなのかどうかもよくわからない。
 京香ちゃんには強がってだいじょうぶだと言ったけど、藤堂君と気まずくなってしまったのはたしかだった。
 あれっきり藤堂君と口もきいていないし、スマホでのメッセージのやりとりもしていない。

 結果がどうなるかはわからないけど、そのあとわたしと藤堂君はまた元通りの気さくにおしゃべりできる関係にもどれるんだろうか。
 なんであのとき、あんなに威勢のいいことを言ってしまったんだろうかという後悔はあるけれど、それはけっして京香ちゃんのせいじゃない。

 自分の発言には自分で責任を取る!
 だから今は勉強をがんばらないと!

 浮き沈みのはげしい気持ちをどうにか奮い立たせて書道部の部室へと向かった。

 
 
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