不機嫌な藤堂君は今日も妖を背負っている

時岡継美

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 銀色のふさふさのしっぽが揺れている。

「ヨーコちゃん!」
『あかり、弥一、お面が見つかったの!』

 ヨーコちゃんの手には、狐のお面が握られている。

 よかった! 試験期間中もずっとそのことが気になっていた。
 試験が終わったら雑木林に行ってみようと藤堂君とも話していたところだ。

「ヨーコちゃん、よかったねぇ」
『あかりと弥一ともぐらさんのおかげだよ。ありがとう!』

 ヨーコちゃんと手を取り合い、ぴょんぴょん跳ねて喜びを分かち合う。

『もぐらさんにはこのまま雑木林にいてもらいたいんだけど、いいかなぁ?』
 ヨーコちゃんが藤堂君に懇願しているのを見て、そのことを藤堂君に伝えた。

「千年もぐらをまだ借りていていいかって」
「いいに決まってる。永遠に面倒をみてやってくれ」
 藤堂君が大きく頷いて即答する。

「わーい、ありがとう! 今度のお祭り、ふたりで遊びに来てね!」

 ヨーコちゃんはしっぽを揺らしスキップしながら去っていった。

「ふたりでお祭りに来てねって」
「いいね。来週の土曜だっけ。狐祭りは周辺道路が通行止めになるから自転車は無理だな」
「じゃあ電車?」

 ここまで言ってからハッとする。
 いまわたし、藤堂君に向かってナチュラルにデートのお誘いをしているんじゃ!?

「遠回りになるけど電車かバスだな」
「ええっと……ふたりで行くんだよね?」

 一応確認してみる。
 すると藤堂君は、当り前だとでも言いたげな顔をした。

「ふたりで来いって言ってたんだろ?」
「うん。そうだけど……」

 もしかすると変に意識しているのは、わたしだけなのかもしれない。
 ヨーコちゃんが「ふたりで」って言うからそうするだけのことだ。
 自分にそう言い聞かせた。

 それでもなんだかソワソワしてしまって、帰宅後にわたしはさっそくお母さんに浴衣があるか尋ねた。
「浴衣? そういえば美紀ちゃんからもらったものならあるわよ」
「よかった!」

 美紀ちゃんは今年社会人になったいとこだ。
 これからは大人の女をめざすと宣言した美紀ちゃんから、お正月におさがりの服を大量にもらった。その中に浴衣もあったらしい。
 受け取った当時わたしは高校受験を控えて塾通いに忙しかったから、どんな衣類をもらったのかよく把握していなかった。

「もしかして、お祭りにでも行くの?」
 お母さんがジトッとした目を向けてくる。
 過去にわたしの身に起きた水難事故未遂以降、心配性のお母さんはわたしが夜にひとりで出歩くことをよしとしていない。
 塾にも毎回車で送迎してくれる徹底ぶりだった。

「大丈夫だよ。だって藤宮神社の息子と行くんだから!」
 夜にお祭りに行きたいと言えば、確実に難色をしめすだろうってことぐらい覚悟していた。
 お母さんは藤宮神社に絶大な信頼を置いているから、藤堂君を盾にするしかない。

 もちろん、彼が憑かれやすい体質で妖を山ほど背負っていることなど、口が裂けても言えないけれど。

「あら、あかりと同い年の息子さんがいるとは聞いていたけど知り合いなの?」
 お母さんが目を丸くしている。
「高校の同級生なの。クラスの何人かで稲荷神社のお祭りに行こうって話になってて……」

 本当は藤堂君とふたりなのに、咄嗟に嘘をついてしまった。
 その罪悪感から言葉がしりすぼみになる。
 しかしお母さんはそれを、わたしが許してもらえるか不安がっていると捉えたようだ。

「わかった。じゃあ帰りはお母さんが車で迎えに行くから。それでいい?」
「やった!」
 
 心の中で少しだけお母さんに謝っておいた。
 
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