不機嫌な藤堂君は今日も妖を背負っている

時岡継美

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狐祭り(1)

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 藤堂君との賭けは、わたしが勝利した。

 物理の中間テストの学年平均点は50.7点で、わたしは53点だった。
 山田先輩のアドバイス通り、用語問題と宿題プリントから出題された基本問題で50点をかせぎ、応用問題のほうはなんとも情けないことに3点しかとれなかったものの、どうにか平均点を上回る結果を残せた。

 応用問題は、問題を何度読んでも導き出しかたがわからず、それでも知っている公式をなんとなく書いて努力のあとを残したことで部分点をもらえた。
 その3点がなかったら50点ぴったりで平均点を下回っていたことになるのだから、悪あがきしてよかったと思う。

 ちなみに藤堂君は98点だったらしい。
 つまりわたしの点数はとても自慢できるようなものではないけれど、平均点を上回ったのだから賭けには勝利したことになる。
 だからわたしは堂々とその解答用紙を藤堂君に突きつけた。
 
 この結果を受けて、藤堂君は実にいさぎよく書道部のパフォーマンス協力を引き受けたのだった。

「あかりん、さすが。やっぱり愛の力だねえ!」
 京香ちゃんは踊りださんばかりに喜んでいるけれど、愛の力なんかじゃない。山田先輩のおかげだ。

 物理のテストが返ってきたのはちょうど部活動の解禁日で、わたしは山田先輩にテスト結果の報告とお礼をするという名目で藤堂君につきそって書道部の部室へと行った。
 もちろん、筆化けのご機嫌うかがいも兼ねている。

「部員達にはちゃーんと、藤堂君はカノジョがいるから好きになったりしたらダメだよって釘をさしておくからね、安心して」
 親指を立ててウインクまでしてくれる京香ちゃんには申し訳ないけど、わたしは藤堂君のカノジョではないってことをいつになったら理解してくれるんだろう。

 部室で山田先輩を見つけると、わたしは早速お礼を言った。
 おかげさまで無事に平均点をこえることができたと報告すると山田先輩も喜んでくれた。
「こっちこそありがとう、藤堂君のこと説得してくれて。彼、妙な存在感があるからすごく映えると思う。2、3年生のパフォーマンスも1年生のパフォーマンスも見に来てね」
「はい、もちろんです!」
 
 妙な存在感――それ、妖の山を背負ってるせいです!

 その藤堂君をふりかえると、京香ちゃんがほかの部員に紹介しているところだった。
 
「藤堂君のこと、よろしくおねがいします」
 わたしが頭を下げると、山田先輩に笑われてしまった。
「保護者みたいね」

 やだ、オカンになってる!?

 筆化けと紙舞は、活動解禁で活気のもどった室内を見てにこやかに笑っている。
 部員の来ない静かな室内で紙舞とふたりっきりで過ごすのはちょっと息がつまる――先日、わざわざ1年5組の教室までうずら卵姿になって会いに来た筆化けは、じとっとした雰囲気でそうこぼしていた。
 とにかくいつもべったりくっつかれているらしい。
 筆化けがまた闇落ちしないか心配なレベルだった。
「早くもどらないと紙舞がうるさいから」
 そう言って帰ろうとする筆化けに慌てて声をかけた。
「なにか欲しいものはない?」
 すると筆化けは、はにかむように笑った。
「いい墨が欲しいかな」
 
 それを藤堂君に相談すると、いいかどうかは知らないけど社務所にも家にも墨があるから適当に選んできたと言って持ってきてくれた。
 その墨をさりげなく筆化けの立つ場所まで移動して近くにそっと置いてみる。

 筆化けはまばゆい後光を放ってとても喜んでくれた。

『筆化け様、それは?』
『舞ちゃん、あかねが私たちに墨を貢いでくれたんだよ。これで思いっきり文字や絵を描いてみてもいいだろうか』
『ええ、もちろんですわっ』
 
 よし! 大成功だ。
 部室もにぎわいを取りもどしたことだし、墨があるうちは筆化けと紙舞も機嫌よく仲良く過ごしてくれるだろう。
 
 その日は挨拶だけで、藤堂君はわたしと一緒に帰宅することになった。
 自転車置き場まで行くと、そこに制服姿で銀髪の妖狐・ヨーコちゃんが目を細めてにこにこ笑いながら立っていた。

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