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しおりを挟むスーッ、サッ
いつもの様に無心に筆を振る。
聞こえるのは筆の書きなぐった音と時計の針の音だけだ。
俺こと神崎歩斗(かんざきあると)はこの6畳の部屋をアトリエ兼自宅として使っている。
今年で20になる俺はバイトで貯めたお金で絵を描きながら生活している。
「そろそろバイトの時間か…」
筆を止め、机の上に置いてあるリュックを背負い駆け足で家を出る。
バイト先のコンビニへと向かう。
ーー
「らっしゃっせー」
深夜23時を回ろうとする頃には客足も殆ど途絶えていた。
バレないようにスマホをいじっているとふと日付に目がいく。
「あっ、今日俺誕生日か」
ただバイトをして絵を描いての日々、絵を描くのは好きだし少ないながらもお金を貰えているから幸せなのかもだけどどこか現実に思えないでいた。
そんな事を考えていると後ろから
「神崎さん明日誕生日なんですか!おめでとうございます!」
同じバイトの鈴木さんが話しかけてくれた。
「あはは、そうだったみたいです。俺も今気付きました」
乾いた返事と共にスマホをポケットへとしまう。
「それなら今日は早く上がってください!後は私だけでもどうにかなるので!」
「流石に悪いからまだのこ…」
「それよりもお祝いしないとですね!あ!飴ちゃんとか入りますか?」
鈴木さんの勢いに押し切られる形でコンビニを出る。
暗い夜道を街灯を頼りに歩き帰る。
いつの間にか家に着いていた。
「誕生日か…」
家のドアノブを捻りドアを開けると部屋が昼間の様に明るく光っていた。
慌てて部屋の中に入り光っている元を辿ると部屋の隅に置いてあった昔に描いた絵だった。
その当時はめちゃくちゃイケてると思ってた厨二感満載の絵が神々しくも光り輝いていた。
ホコリを払いながら持ち上げると光は収まったがやっぱりどこか変だ。
「槍…かな?」
絵が光っていたのは勿論、描いた覚えのない槍らしき物まで描かれている。
「それにしてもダサい…」
「どこがダサいんだぁぁっ!!!」
心からそんな言葉こぼれると同時にそんなことは無いと言いたげな声にかき消される
辺りを見回しても喋った人は居らず玄関のドアを開けて外を確認するもそれらしき人の気配ない。
「誰が喋ったんだ…?もしかしてこの絵が喋ったとか?そんなまさか漫画じゃあるまいし、じゃあ誰が…」
「そのまさかだ!!」
またもや声をかき消したのはセンス皆無の絵だった。
もくもくと煙が部屋に充満し煙が晴れた後現れたのは鋭い目つきの黒髪の男だった。
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