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第三章
お兄ちゃんと、いもうと。 ~優しいパパとママと悲しい妹~
しおりを挟む幼女虐待を受けた美久は男が怖くてたまらない。
施設の院長先生に優しい言葉をかけられてもピクッと怯えることもある。
だが、いじめっ子から守ってくれるタケシ兄ちゃんだけは別だ。
食事は必ず隣の席である。
『お嫁さんみたいね』と保母さんにからかわれても、もうお兄ちゃんのお嫁さんに
なると決めているから『そうよ』と胸を張る。
そんな美久に、また悲しい日がやってきた。
剛が有名な男子校に合格した。私立で学費も一段と高く、成績が抜群に良くても、
養護院暮らしの子供には夢の夢だが、院の支援者からの強い勧めがあったのだ。
飛び切りの秀才で、特に理数系は東大生並だと驚かれていても、ノロマで不器用な
タケシが高校卒業後に自立してやっていけるか、その支援者夫妻は心配していた。
我が子として育てたいと養護院長に相談したのだ。
院長も、心からそれを喜んだが・・・・・。
「お兄ちゃん!タケシ兄ちゃん!!」
十五歳と十一歳の別れの日、ボロボロ涙を流しながらお兄ちゃんにしがみついて、
離れようとはしない美久の姿は、今でも養護院の語り草になっている。
普段は感情を表に出さない剛も、ボロボロと涙を流したのだ。
必死で剛を抱き寄せていた養母の眼からも涙が溢れていた。
十五歳の少年と十一歳の少女の、指が離れていった。
養父母、とりわけ養母の聖良は剛を慈しむ。
名札に『タケシ』と記された捨て子を抱き上げたのは養護院の支援活動に参加した
ばかりで、まだ二十六歳の聖良である。体験学習で施設に一泊していたのだ。
お腹を痛めた子ではないが眼に入れても痛く無い。
聖良は結婚から十年が過ぎても子供が出来なかった。
「お医者様から『あなたは健康体だが、もうすぐ四十代ですね。母胎に問題も抱え
ているので、受精卵を他の女性の子宮に移し、代理出産してもらうということならば
渡米すれば可能です。信頼できる病院を紹介できますが・・・』と言われたの」
「・・・私達の子でも、お前のお腹から生まれた子供でないとね。考えが古いかも
しれないが・・・・」
「ええ、私も・・・もし、貴方がお望みなら、そうしようかとは思いましたけど」
「・・・・・タケシはどうだい?」
「え?」
「タケシの将来には大きな可能性がある・・・・聖良はどう思う?」
「本当にそうです。でもあの子はとても不器用でノロマなところもあるものだから
十八歳で自立できるか、心配していました。一流の学者にもなれる頭脳なのに」
「うん。ではタケシを我が子として育てよう。いいね」
「ええ!!」
こうして迎えた剛を、養母の聖良は溺愛しても、育成方針は厳格であった。
「最後の一本の指が離れ、呆然として涙を浮かべたまま、キッと私を睨んだ美久の
顔は、可哀相で、忘れることが出来ません。時々は我家に呼んでやるといいけれど、
それはしないでおこうと思うの」
「どうしてだい?」
「美久の慕いようは尋常でないもの。過ちを犯すのではないかと心配で」
「それは、私もとても危惧している。十代で妊娠ということでもあれば」
「ええ、美久はとてもいい子だけど、タケシを誘惑しかねませんものね」
「成長するに連れ人間は変わっていくものだが、タケシが大学、アイツの場合には
大学院だが、そのころも二人が愛し合っていたなら美久を喜んで嫁に迎えるが」
「そうなれば、そんないいことはありませんわ。美久が二十歳になるまでは、あの
子も、それとなく支えてやらなければいけませんね。大学か専門学校でも学びたいと
いうことなら、学費も工面してあげないと・・・・」
「今の収入なら大丈夫だが、私も老いていく。大蔵大臣はしっかり頼むよ」
「ええ。でも晩酌はお望み通りの銘柄とはいかなくなりますわよ」
「子供ための苦労なら、安酒も美味いだろうね。こんな贅沢な冗談口を叩けるのも
有難いことだが・・・お前もパンティなど、インポートの高級品を買い過ぎすぎだ」
「さようですわね。三枚欲しくなっても、二枚で我慢するわ」
「・・・・ところで、今日はどんなパンティだい?」
「・・・・・・あ、もうそんなイタズラして・・・御宴会のときなど、芸者さんに
そんなイタズラしてるの?あ、ダメ、ダメもう~、エッチね」
「うん、うん。パンティ検査はベッドでするものだ」
「ええ、もう夜も更けたので、久し振りに検査をお願いしますわ」
「では、参ろうではないか」
「はい、あなた」
剛を息子として迎えることにした日の夜の営みは、いつにも増し濃いものとなる。
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