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第四章
養父母・夜の営み秘史 ~墓場の操り人形~
しおりを挟む建太郎は聖良には如何にも教養豊かな紳士然として振舞った。
いかにおぼこ娘でも当世の女である。地位も資産もある独身中年男性はそれなりの
女性遍歴もあると思っているだろうから、色の道にも通じていることも匂わせ。
★ ★ ★ ★
「人形浄瑠璃がこんな素晴らしいものだとは聖良、存じませんでしたわ」
「なかでも、この『心中天網島』は名作中の名作だからね」
「この世で夫婦になることは叶わないので、死んであの世で結ばれたいと、遊女の
小春が泣いてせがむ場面では涙が、もう止まらなくて・・・・」
「そうだね。『そなたも殺し、我も死ぬ・・・今日の今宵を限りにて、二人の命の
捨てどころ・・・ここまで来れば、来るほどは・・・もうこの道が冥途かと見交わす
顔も見えぬほど・・・この世を捨てていく身には、聞くも恐ろし天満橋。淀と大和の
二川を、ひとつ流れの大川や、水と魚は連れて行く。我も小春と二人連れ。一つ刃の
三途川・・・この世でこそは添わずとも・・・・先の世までも夫婦ぞや!!」という
のは、何度も見、また読みもしたので、すっかり覚えてしまったよ」
前の晩に何とか暗記した建太郎の名調子に観劇帰りに立ち寄ったバーのカウンター
で聖良はうっとり教養溢れる紳士の肩に黒髪を寄せていた。
「映画にも名作があるよ。心中に向かう道行きで愛を交わすシーンは鳥肌が立つほど
凄まじいよ。治兵衛と小春は死に向かって、ひたすら進んでいく訳だけど、男と女の
最後の営みは、闇夜の墓場だからね。誰にも見咎められる恐れは無いということだが
墓石が囲む闇の中で、もう狂ったように抱き締めあう・・・・」
「・・・・・恐ろしい光景ですわね・・・・」
「そのシーンの撮影の様子を撮った記録写真もあるけど。それも恐ろしい光景だ」
「・・・どんな、お写真ですの?」
「主演女優の夫が監督なんだ。妻が仰向けで横たわっているが、夫が妻に着物の裾
を大きく拡げたから、あわやというまで露わになっている。その姿で相手役の役者と
最後の営みをどう演じるか夫が妻に演技指導するんだ。相手役の男優に妻の太ももを
撫でて示しながら、妻に『死ぬほど気持ちいい顔をして、死ね!!』と・・・」
「・・・・・本当に凄まじい光景ですわね」
「そうだね。映画監督としての執念、女優としての執念ということだろうが・・・
しかし、そうした撮影が行われた日の、夫婦の営みはいったいどうなるんだろうね?
それもまた、恐ろし光景かもしれない・・・・」
男を知らない訳ではない聖良は、頬を染めていた。
「聖良も映画のビデオを見たらどうだい?もっているから貸そうか?」
「あ、あの・・・怖いから、御一緒に鑑賞できるのなら・・・・」
「僕が治兵衛になって、小春の聖良に、一緒に死のうと迫るかもしれないよ・・・
それとも、小春の聖良が、一緒に死んで欲しいと泣くのかな?」
「いえ、あの、そんな・・・・・あ、このカクテル、美味しかったわ・・・」
「うん、じゃあ、そろそろ送らないとね。御両親が心配なさるかもしれない」
結婚相手とは夢にも思っていなかった建太郎に、聖良は日に日に魅かれていた。
かなり際どい話までするのだが、古典芸能にも詳しい中年の紳士に、学生時代に
カラダの関係にあった若い男とは違う大人の男の魅力を感じたのだ。
後は死ぬしかない小春と治兵衛の、激しいSEX場面を『御一緒に鑑賞できるの
なら・・・』とは、もう抱かれてみたいという精一杯の謎かけであったのだが。
それはまた、建太郎の術中に落ちていったということでもあるが・・・。
両親と襖ひとつ隔てた六畳間で聖良はオナニーを始めていた。
この日の人形浄瑠璃は、聖良にはあまりにも刺激的であった。
黒紋付の人形使いに操られ小春と治兵衛が死に出の旅を急ぐ。
妖しいまでのその姿が、聖良の脳裏にまざまざ浮かんでいる。
妄想の中で、遊女の小春はいつしか聖良に変わっていたのだ。
だが聖良の手を引き、冥途へ伴っていくのは、カタカタ動く人形の治兵衛・・・。
* * * *
建太郎とデートをした日の夜、聖良はオナニーをしなければ眠れなくなった。
お風呂から上がるとオメコの濡れ筋が付いているパンティから、新しいパンティに
穿き替えるのだが、悶々とするうちに新しいパンティも濡らしてしまうのだ。
指を使うだけでは物足りず、クリトリスをイジリながら、そのために買っておいた
魚肉ソーセージをオメコに出し入れすることもあった。
関東大震災にも耐え抜き、東京大空襲からも焼け残った我が家は、流石に建付けは
悪くなっていた。
襖を隔てた両親も、愛娘のただならぬ気配に気付いてしまう。
隙間から母親がそおっと覗いてみると、片足からパンティを抜いた聖良のオメコに
魚肉ソーセージが突き挿さっていたのだ。父親も覗こうとすると、母親は慌てて押し
止めるのだが・・・・。
建太郎氏とは歳の差が大きいことは気になるが立派な紳士である。経済的にも何の
不安も無い。公認会計士なので、税の申告や帳簿の整理について親切なアドバイスを
してくれるのも、娘に気があるからだろう。しかし、デートから戻った夜の娘の振る
舞いを見ると、どうやらまだ手を付けていないよう。真面目一方の男も困ったもんだ
・・・いっそ早く、娘のお腹を膨らませてくれれば・・・いかにも下町の商人らしい
酸いも甘いも噛み分けた洒脱な両親である。
建太郎氏に覚悟を促すためにも、聖良の嫁入り衣装の準備を始めた。
聖良も両親も、SM遊びまでする建太郎のもう一つの顔は全く知らないが・・・。
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