女殺し油煙の地獄(二十五周年カップ参加作品のハードコア版)

中井春一郎

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終章

女殺し油煙の地獄 ~嵐の幕末性交外交~

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 「夕方から荒れ模様になるようだ。急ごう」

 社長のジャガーXJが伊豆に向け、制限速度ギリギリで高速道路を疾走する。

 
 湯けむりの里の離れ座敷では北条冴子主演・国際共同製作ポルノ『幕末性交外交・

マダムバタフライ』の撮影準備が滞りなく進んでいた。

 冴子は、この日の装束、孔雀蝶・大紫・瑠璃蝶・青筋揚羽・紋黄蝶・紋白蝶など、

様々な蝶が乱れ舞う、絢爛豪華な花魁衣装に着替え始める。

 スリップ姿になったところで米国のAV男優が近寄った。

 もうすぐオメコを始める冴子を抱き寄せ、頬を合わせる。

 ブラジャーを取ると英国の男優が乳房に軽くキスをする。

 ガーターを外し始めると蘭国の男優がしゃがんで手伝う。

 すっかり裸を御披露すると仏国の男優が顔を寄せて、ポルノの女帝のオメコの毛を

撫であげ、東洋女ならではの黒々艶々した逆巻きを褒めたたえる。

 
 ・・・・ゴロ、ゴロ・・・・・・ゴロ、ゴロ、ゴロ・・・・・・

 
 ジャガーXJが熱海に近づくころには遠雷がときおり聞こえた。

 どんよりとした空を、乱雲が飛ぶようにして西から東へと走る。

 「妖気が漂う。タケシが生成AI世界の覇王となるに相応しい空模様だな」

 「美久はバルセロナのはずですがこの季節の地中海はどうでしょうかね?」

 「美久のことは、今は忘れろ」

 「ええ・・・でもこれから向かう『極楽の湯』が美久と初めて泊りがけの旅をした

懐かしい思い出の地だと思うと・・・・」
 
 「・・・・・・」

 無言で社長はアクセルを踏み込む。

 天城越えでは鬱蒼とした森が不気味にざわつき、みるみる黒雲が広がる。

 「いまにも魔物が顔を覗かせそうな怪しい雲だな」

 「そうですね」

 見下ろす伊豆の海岸には荒波が打ち寄せて、岸壁に飛沫を散らしている。

 黒雲は更に広がり、その下辺がときおり稲光で青白く光る。遠雷も聞こえる。

 
 湯けむりの里で一番の格式を誇る旅宿の前では、着物に襷掛けした志保とレナが、

朱色の蛇の目傘を広げ、タケシと社長の到着を今か今かと待ち受けていた。

 「土砂降りの雨になりました。ささ、ささ、お離れへ・・・・」

 社長と志保、タケシとレナが相合傘で苔むした石畳を急ぐ。

 氷雨が露天の湯を打っていた。湯面の上と下との温度差が大きく、いつにも増して

湯けむりが朦々と湧き起こっている。

 それを突風が一瞬にして吹き払う。

 また朦々となり、稲光で青白く浮き上がる。

 湯けむりの里の離れ座敷は妖魔の棲み処に相応しい不気味な光景になっていた。


 社長とタケシは『幕末性交外交・マダムバタフライ』の撮影現場に急いで入る。

 「おう、間に合ったか。しかし、実に絶好の撮影日和になったものじゃな」

 顔や首筋だけではなく肩にまで脂粉を塗り込め、メイク係に妖艶な花魁化粧をさせ

ている北条冴子が、化粧台の鏡に映ったタケシと社長に無言で白首を傾げる。

 「冴子、お前がみっちり教育してあげる、タケシ君だ」

 壺中庵淫斎に促され、真紅の紅を唇に厚く塗り終えた冴子が振り向く。

 そうとは知らないといえ、母と子の二十三年ぶりの対面である。

 冴子は淫斎から剛に性教育をしてやれと言われている。

 冴子はポルノの女帝。

 性教育とはオメコをしてあげることだと承知している。

 四人の外国人とのオメコを見せてからのことになるが。

 「後ほどお相手をさせていただく花魁の、わちきがバタフライでござんす。まずは

撮影のさま、ゆるりと御鑑賞くださいませ。若旦那」

 目尻には鮮やかな朱を施した冴子が、極彩色の蝶が乱れ飛ぶ豪華絢爛な花魁衣装の

衣紋を抜いて、白粉を塗り込めた首裏をいっそう際立たせる。

 すっかりマダムバタフライになり切り、鏡に中のタケシに話しかける。

 「お相手をする若旦那がタケシさまとは、不思議なご縁でござんすわいなあ」


 ・・・・・ピカッ!ドーン!!・・・・・ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ・・・・・


 「湯の街の鎮守様あたりでは?ひときわ高い御神木の大ケヤキに落ちていなければ

いいのですが・・・・」

 女将の志保が不安そうに淫斎にすり寄る。

 「ことによるとレナが首を吊りかねなかった大ケヤキか。ますます妖気が漂う」

 「え?首吊り?何のことでございましょう・・・・」

 襷掛けで薄いゴム手袋をはめ始めていたレナも、青ざめて淫斎を振り向く。

 「いや、なんでもない・・・・・」

 
 ・・・ピカッ!ド、ドーン!!・・・・・ゴロ、ゴロ、ゴロ・・・・

 
 再びの大雷鳴に、すでに準備を終え、十九世紀外交官衣装の前を開けて、チンボを

曝していた白人ポルノ男優達も、土砂降りの雨が叩きつける窓の向こうで湯けむりが

青白く浮かんだのを驚いた眼で見つめていた。

 
 国際共同製作とはいえ、ポルノはポルノ。

 筋立ては単純明快。

 SEX、SEX、またSEXの繰り返し・・・。

 『幕末性交外交』の舞台は、開港間も無い横浜の西洋娼館である。

 数寄屋造りの離れ座敷の襖を取り外し、西洋燭台などを適当に置いていた。

 畳に緋毛氈を敷きつめ、娼館の一室のように仕立ててある。

 床の間には掛け軸ではなく、猥褻の極みとも言うべき肉筆春画が掛けてある。

 紅毛人と洋妾(ラシャメン)のオメコを描いたものだ。

 洋妾が、毛唐の赤鬼の口を吸い付け、早く入れて欲し気にチンボを握っている。

 洋妾はそれをオメコに嵌め込ませようとしているがチンボは手に余る太さ。

 黒い秘毛は、その縮れ具合も判るほど、一本、一本が丹念に描かれていた。

 朱に染まった肉壺の奥が淫液の沼地と化しているのも見て取れる。

 この洋妾、ラシャメン・マダムバタフライを演じるのが北条冴子。

 立てば『立ち鼎』、座れば『乱れ牡丹』、歩く姿は『後ろ矢筈』と、お寝間の凄技

でもその名も高き吉原遊郭随一の花魁大夫が、外国奉行様直々の命で、列強公使への

肉の貢ぎ物にされるという、まあ、異人種間性交の乱交ポルノと思えばいい。

 冴子が手渡されていた台本(A4のペラ紙一枚だが)では、絢爛豪華な衣装に身を

包んだ日本一の花魁が、各国代表と華麗なる性の饗宴を繰り広げるとだけなっていた

のだが・・・・。




 

 


 





 

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