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嫉妬めらめら愛情もりもり 2
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出社早々に言葉を失う。
鞄に入っているノートの間から、何かカード状のものが飛び出していた。心当たりがないまま摘み取れば、二度と見ないと思っていたものだった。
『××大学 阿左美めい 経済学部』
少しだけ幼い彼の写真も添えられたそれは、間違いなくめいくんの学生証だった。どんな経緯でこれが鞄に入ってしまったのだろう、と考えて、昨日持ってくれていたのって……とすぐに答えに気付いた。多分、階段を上っている間にやられた。
これで最後。大学は夏休み期間とはいえ学生証がないと困るだろうから、持って行くだけ。
自分に言い聞かせていると、立ち上げ途中だったパソコンが時間経過でブラックアウトし、素早くマウスを左右に振った。パッと画面が明るくなり、八月がもう終わることを告げている。とりあえず仕事が終わってから、今後のことは考えよう。
手が勝手にパスワードを打ち込んでいく。脳の片隅で自分に問いかけた。
どうしてめいくんは、ここまでして俺に関わってくるのだろう?
明確な答えも出ない内にデスクトップ画面に切り替わり、俺の思考もそのまま業務へとシフトしていった。
「ずっと探してたの~! ご主人クンが持っててくれてよかった~!」
言葉には失くしもの特有の焦りは見られず、やはり本人の自作自演だったのだと分かった。
お礼するね、と言ってカウンター席に座らされ、キッチン担当を追いやるように調理が始まる。通りすがりに、うちのあっくんがすみません……、と昨日のように謝られてしまっていた。
「今日はお赤飯と和風ハンバーグ! たまにはこういうのも食べたいでしょ~」
カウンターの向かいから、メイドカフェでの提供物とは思えないようなしっかりした食事が出された。
ピンクのファンシーなお茶碗にはふんわりと赤飯が盛られており、白を基調とするレースのような平皿には大根おろしが添えられた握り拳サイズのハンバーグとサラダが乗せられていた。赤いキンガムチェックのお盆上にはその二つだけでなく、一口サイズの杏仁豆腐が隅に追いやるように置かれている。
俺の視線の先に気付いたらしく、やっぱり不機嫌さを滲ませてそれはりっちゃんから、と教えてくれた。
「おれが作ったのはその二つだから、杏仁豆腐は食べなくていいよ~」
「ううん、これも美味しく頂くよ」
「……ご主人クンのば~か」
ついにふてくされてカウンターを飛び出していった。本来の彼は俺だけを特別扱いしてはならないので、接客に行くのが正しい行動ではあるのだが、なんで非難されているのか分からずそわそわしてしまう。
たった数日の付き合いだが、彼は見た目にそぐわず子どもっぽいところがある。幼い頃の弟だったら……、と思考を巡らせる。自分の作ったものを褒めてもらえなくて嫌だった、とか?
箸でハンバーグを切り、口に放り込む。噛むごとに肉汁が広がり、味付けも程良く、彼の手作りであると改めて分かった。確かに、こんな手の込んだ料理を作ったのにりっちゃんさんの方を優先されたのなら、怒りたくなる気持ちも分かる。
後からきちんと味の感想を言おう。そう思ったところでキッチンの彼からメロンソーダを提供され、背中に鋭いものが刺さるのを感じた。
何故かメイド服のままのめいくんと、一緒に家まで帰ってきた。昨日のようにりっちゃんさんに止めてもらえるかと期待したが、どうやらデカいメイド二人で何か仕組んでいたらしく、なんの障害もなくすんなりと隣を陣取られた。
本人の言い分は、学生証を持ってきてくれたお礼をする、だった。紙袋を見せつけられ、お世話して癒してあげるね~と押し切られてしまっていた。
「ご主人クンの本当のお屋敷だ~」
鍵を開ければずかずかと入っていく。
「お帰りなさい、ご主人クン」
俺を出迎えるようにくるりと回ってスカートを靡かせた。いつも通り下には隠すようなものは履いておらず、淡いピンクのレースが太股に張り付いている様が視界に映る。
「ご主人クンのために、可愛いパンツにしてみたよ……!」
恥じらう動作を取って、ちらちらとこちらを窺っている。
「あ、ありがとう」
「ほら、早く!」
手招きされ、急かされるまま靴を脱いだところで、力一杯身体を引っ張られた。一度の来宅で間取りを把握したのか彼は迷いなく進んでいき、俺をベッドに投げ飛ばした。
そのまま馬乗りになり、唇が重ねられる。舌先が強引に侵入し、好き勝手に暴れていく。行為を見せつけるような水音がこの部屋に響いているのが、恐ろしくなる。今後家でくつろいでいる度に、彼とのキスを思い出してしまうかもしれない。じわじわと上がっていた熱は、そんな妄想で一層強く燃え始めた。
わざとらしく音を立てながら離れ、垂れ目は首筋に視線を移した。あ、絆創膏に気付かれた。昨日みたいに遊ばれる。そう思ったら、快楽に正直な身体は抵抗する気を失っていた。
「ご主人クン、期待してて可愛い~! メイドに叱られたいなんて変態だね~」
長い指先がテープ越しに噛み跡をなぞり、一気に剥いだ。漏れ出た声は痛みに耐えるためのものとは思えないほど甘いもので、自分の身体がどんどん彼に作り替えられているように感じた。
「ふっ、ぅん……、めいく、んっ」
晒された傷口を舐められ、思わず彼の名前を呼ぶ。
唇が軽く触れた後、示すように数回甘噛みされた。そして、前触れもなく牙を突き立てられ、塞ぎかけていた皮膚が再びこじ開けられる。痛みを逃がすように身体を捩れば、かかる力は更に強くなっていく。
十分に彼の形を記憶させられた後、肉厚なものが傷口を一周した。
「ちゃ~んと、みんなにおれのご主人クンだって見せつけてね」
首元に顔を置いたままおねだりするように見上げられ、絶対にそんなことはないはずなのに、やっぱり可愛いと思ってしまった。
「よし。付け直したところで、本題に入ろっか!」
本題……?
めいくんは俺の上に乗ったまま、身体を捻って紙袋を手に取った。
「ご主人クンが勘違いしてるから、きちんと分からせてあげたかったんだ~」
じゃ~ん、と紙袋をこちらに見せつけた。めいくんは紙袋に手を入れた途端、不機嫌そうに顔を歪ませた。
「りっちゃんって女みたいな顔してるもんね~。あの人のせいで、ご主人クンは自分のことをオスだと勘違いしちゃったんだね~」
取り出されたそれを、見たことはあった。でも、使ったことはない。
紙袋を置いて、めいくんはそのパッケージに唇を寄せた。メイドを自称する男と、そのジョークグッズの組み合わせに、頭が嫌な興奮を覚える。
「今日はご主人クンがオスでいれる最後の日で~す!」
彼の手に収まるオナホールとその言葉に、くらくらした。
「やっぱりフェラじゃ、童貞卒業って思えなかったよね。おれ以外の人間にそういう気を起こせないように、改めて筆下ろししてあげる~! おれで卒業なんて、ご主人クンも贅沢だね~」
圧倒されたまま、めいくんは俺の方に両手を差し出した。オナホールを持っている右手と、ただ握り込んだだけの左手。う~ん、と左右の拳を視線が行き来した後、よし! と場にそぐわない元気な声を上げた。
「ご主人クン、右と左、どっちがいい?」
どっちも選びたくない。
しかし、選ばなかったらもっとひどい行動を起こされそうで、めいくんの涙ぼくろのある方を選んだ。
「左で……」
「じゃあ正常位ね!」
ぱっと左手を開き、夕食のメニューを決めるような気軽さで言った。
その手はオナホールの梱包を開いていく。透明なプラスチックケースに入ったそれは、作り物らしいピンク色をしていた。筒の入口には生々しい襞があり、めいくんの指の動きに合わせて揺れている。
「りっちゃんさんって、めいくんの先輩なんでしょ? 俺は彼にそういう気持ちで接してるわけじゃないよ」
「なに? おれの前で他の奴の話するわけ? これからご主人クンの初めてを奪ってあげるのに、ひどくない?」
苛立ちをぶつけるように音を立てて、紙袋からローションを取り出した。配慮の欠片もなく透明な液をぶちまけて、襞に入りきらなかったものがワイシャツを汚した。
めいくんはゆっくりと後退し、目的のところに到達して尻を押しつけるように腰をゆるく振った。すでに立ち上がり始めていた陰茎が、ちょっとの刺激に驚き、思わず下腹部が持ち上がった。
「あ、おれに早く挿入れたくて意地悪言ったんだね~」
そんなことはないと否定したいのに、スカートの中でぐりぐりと揉まれては嬌声しか出てこなかった。
「んっ、ち、ちぁっ……!」
「よく分かんな~い」
めいくんは聞く耳を持ってはくれなかったが、これだと騎乗位じゃん! と自分ルールを違反していることに気付いてか動きを止めた。
手に持ったオナホールを揺らしながら俺の上から降り、どうしたもんかと俺と手元を見比べて、汚れた胸上にそれを置いた。垂れたローションは不快だったが、俺の体温に合わせて次第に生温かくなっていく。
めいくんによって簡単にスラックスもパンツも脱がされ、とうとう俺は身を守るものを失ってしまった。ピンク色を回収し、前触れなく挿入させられる。
「ひっ!」
難なく受け入れられ、馴染ませるようにゆっくりと上下した。自分の指とは違う柔らかい感触は気持ちが良いのに、やはり物足りなさがある。彼に一度開かれただけの場所が、ずっと疼いてしょうがない。
俺を見下ろすメイドは、オナホールを手放してにんまりと笑った。
「ご主人クンは童貞だから、正常位なんて分からないか!」
上半身を無理矢理起こされ、彼に抱きつかれた。そのまま身体をひっくり返すようにして、俺とベッドの間に潜り込み、先ほどとは反対にこちらがめいくんを押し倒したような体勢になる。白いエプロンの上に、ぴとっとオナホールを押し当ててしまった。
「おれの初めて、ちゃんと受け取ってね」
唇同士が触れ合った瞬間に、陰茎を包んでいるものの感触が変わった。容赦なく動き始め、その度にぬちぬちと粘り気のある水音がした。
「ぇ、あっ、あっ、だめっ」
上半身は彼の胸元に預け、必死に快楽を貪った。本能的に腰が上下し、彼の手の中を暴くように動いた。決定的な何かが足りず、求めるように先へ先へと進もうとする。
「あ~ん、ご主人クン、気持ち良いよ~」
彼の顔をのぞき込めば、言葉とは裏腹に余裕な表情を崩さずにいる。俺がメイド服の彼を犯しているとは、全く思えなかった。むしろ、彼の棒読みの喘ぎ声が、自分はこの男に支配されているのだと分からせられた。その事実が脳を刺激して、いつぞやの行為を思い出させる。触れられていない部分はずっと彼を媚びるようにうねっている。
視線に気付いて、動きが強められてしまった。
「んっ、ぁあ、あ、ああっ……」
「やば、おれ、孕まされちゃうかも~」
「あ、めい、くっ、イく、イくっ、やらっ、やめへっ」
「おれも~。ご主人クン、射精して、おれに中出しして~」
「あああっ……!」
彼の手の中によって、呆気なく童貞は奪われた。果てた俺に気付いていないのか、わざとなのか、オナホールは止まらず、激しい熱が思考を溶かしていく。
「らめっ、らめっ、いっ、いってる、からぁっ」
「うそ! 全然気付かなかった~。ご主人クンって、孕ませる才能ないのかも~」
あざ笑いながら、ようやく次第に動きを緩めていく。口を閉じれないまま、余韻に浸る。彼のピンクのメイド服は俺の唾液に濡れ、そこだけ色を濃くしていた。
放出したはずなのに、身体の熱は行き場を失って下腹部でくすぶっている。
「言うことあるでしょ、ご主人クン」
彼の手が俺の耳朶で遊んだ。穴に入り込んだり、縁を撫でたりと、刺激が与えられる度にその温度は上がっていく。
「とろとろになって分からないか。めいくん、ごめんなさい。はい!」
弄んでいた手が止まり、俺は操られるように復唱した。
「めいくん、ごめん、なさい」
「有クンは、めいくんのメスです」
「あ、あるくんは、めいくんの、…め、めすです」
「よく出来ました~! じゃあ、次は身体にも教えてあげようね~」
一瞬にして身体はベッドに縫いつけられた。
「ぁあっ……!」
余韻の残る陰茎がオナホールから抜かれ、その刺激で少しだけ硬さを取り戻す。俺の精液と入り交じったうっすらと白く濁るローションを手に落として、再び戻された。腰が勝手に揺れるのを目敏く指摘される。
「やっぱり身体はオスだと思いこんでるじゃん! も~、ご主人クンってば!」
指先がこれからの情事を宣言するように、ゆったりと後孔をなぞった。
「早く思い出そうね」
ずぷんっと指が侵入し、点検するように胎内を探った。折り曲げて襞の一つひとつをめくるようにぐにぐに動いている。
「うん、浮気してない! めいくんに一途な有クンが大好きだよ」
さっきまでの作り物の笑みとは違う、あどけない笑顔に心臓が高鳴った。緩んだ垂れ目も、ほんのり赤い頬も、優しく上がる口角も、彼のすべてが可愛いものに思えた。
めいくんになら、何をされてもいい。
支配されても、ひどく犯されても、きっとこの笑顔を見て許してしまうのだろう。理解し難い感情が、ずっと胸の中に渦巻いている。
脚を伸ばして、彼の身体をはしたなく抱きしめた。
「やっぱり、めいくんはかわいいね」
幼い子どものような繊細さと、災害のような自分勝手さを兼ね備える子。幼い頃の妹弟を思い出させる姿に胸がくすぐったくなる。
「……変なの」
じわじわと顔が紅潮し、照れを誤魔化すように指が一本増やされた。先ほどとは違い、性急に肉壁を荒らしていく。
「でも、嬉しい。ねえ、もっと言って、有クン」
言葉を引き出させようと、忙しなく快楽が与えられた。
「かわ、いッ…!?」
「あはは、ご主人クンも可愛いよ、おれの次にね~」
強い刺激が与えられる場所に指が突き刺さり、オナホールの中で吐精した。快楽の逃げ場を求めて脚に力が入り、より強くめいくんを拘束してしまう。
俺を見下ろす瞳は、可愛いとは形容しがたいほど、薄暗く輝いている。
指が抜かれ、解された胎内が甘く疼いた。体液とローションで濡れたまま、見せつけるようにスカートがたくし上げられる。彼の欲望が、淡いピンクのレースの中でアンバランスに努張していた。薄い布越しでも、その重量がはっきりと分かる。
「ちゃ~んと、ご主人クンがメスだってこと、覚えてね」
使い込まれた陰茎がお腹の上に置かれる。こんなに大きなものがこれから胎内を荒らすのだと思うと、肉壁がきゅっと締まった。俺のものは未だピンク色に身を埋めており、男性器を失ってしまったような気さえする。
後孔に当てられて、そのまま一思いに貫かれた。異物感が雄としての敗北を伝えている。スキンを被っていなかったと気付いたのは挿入されてからだった。
ゆっくりと慣らすように押し上げられ、苦しさと快楽が同居している。それは次第に快楽が勝っていき、されるがまま声を上げた。
「ああっ、め、めいくんっ」
「もうメスの顔になってるよ~、あ、元からか! でも、オスのご主人クンももう一回見たいかも~」
めいくんの手がオナホールを掴んで、ぬちゃぬちゃと強く扱き始めた。一瞬にして頭の中がスパークし熱を吐き出す。
「あああぁっ!? ね、とめっ、らめらっ、てっ!?」
「分かんな~い。ご主人クンが射精したかどうか、分かんな~い」
本当は分かっているはずなのに、彼は胎内を犯すのも、陰茎で遊ぶのも、やめてくれない。俺の身体をおかしくするのを、子どものように楽しんでいる。
どちゅどちゅと淫らな音を立てながらしつこく気持ちの良い部分を殴られ、その間隔は徐々に早くなっていく。熱を逃がすようにだらしなく喘いでいれば、めいくんが意地悪く笑った。
「ご主人クンって、本当に変態だね~。お隣サンに自分がメイドとセックスしてるって、知って欲しいんでしょ。本当にこういうのお好きね、指摘されたらきゅっておれのこと抱きしめちゃってさ~。隣人にまでメスって知られてる、可愛い可愛いご主人クン! 大丈夫、おれが守ってあげるからね~」
口を押さえようにも、激しい責めのせいで身体が思い通りに動かない。腕で顔を殴ってしまい、下手くそ~とからかわれた。
止まらない絶頂の中に、ずっと囚われ続けている。
「んっ、んんぅ、ん……!」
「こういうご主人クンも最高! 必死で可愛い!」
自分勝手な腰使いは、奥にこじ開けるような強い律動に変わっていく。眉間が狭まり、余裕の失った表情で容赦なく殴り続ける。めいくんの限界が近付いているのが分かると、どうしてか愛おしく思えた。肉壁が必死に彼に吸い付く。
「好き、有クン」
その言葉だけで、自分の熱が吐き出されたような気がした。それと同時に胎内に強く押し込まれ、熱いものが迸った。めいくんはイっているのが分からないと言っていたけれど、俺は確かに彼の射精を感じていた。
「心から身体まで、全部おれにお世話されてね」
熱に浮かされたままの頭で、言葉の意味も理解せずに頷く。すぐにめいくんの顔が降りてきて、ぐりぐりとおでこ同士を押しつけられた。
暖かくて、視界が穏やかに揺れている。熱い吐息がちょっとだけ不機嫌そうに、口元を擽った。
「有クンが疲れてるのは分かるけどさ~、寝落ちするのやめてよ」
「ごめ……」
「はあ、それはおれの腕の見せ所か~。次は最後までし~っかり起きて、ピロートークしようね」
「ん……」
「おやすみ、有クン」
唇に優しく触れられる。やらなくちゃいけないことは多いのに、めいくんが俺の近くにいるだけで何故か安堵してしまい、そのまま穏やかな感情に身を任せた。
鞄に入っているノートの間から、何かカード状のものが飛び出していた。心当たりがないまま摘み取れば、二度と見ないと思っていたものだった。
『××大学 阿左美めい 経済学部』
少しだけ幼い彼の写真も添えられたそれは、間違いなくめいくんの学生証だった。どんな経緯でこれが鞄に入ってしまったのだろう、と考えて、昨日持ってくれていたのって……とすぐに答えに気付いた。多分、階段を上っている間にやられた。
これで最後。大学は夏休み期間とはいえ学生証がないと困るだろうから、持って行くだけ。
自分に言い聞かせていると、立ち上げ途中だったパソコンが時間経過でブラックアウトし、素早くマウスを左右に振った。パッと画面が明るくなり、八月がもう終わることを告げている。とりあえず仕事が終わってから、今後のことは考えよう。
手が勝手にパスワードを打ち込んでいく。脳の片隅で自分に問いかけた。
どうしてめいくんは、ここまでして俺に関わってくるのだろう?
明確な答えも出ない内にデスクトップ画面に切り替わり、俺の思考もそのまま業務へとシフトしていった。
「ずっと探してたの~! ご主人クンが持っててくれてよかった~!」
言葉には失くしもの特有の焦りは見られず、やはり本人の自作自演だったのだと分かった。
お礼するね、と言ってカウンター席に座らされ、キッチン担当を追いやるように調理が始まる。通りすがりに、うちのあっくんがすみません……、と昨日のように謝られてしまっていた。
「今日はお赤飯と和風ハンバーグ! たまにはこういうのも食べたいでしょ~」
カウンターの向かいから、メイドカフェでの提供物とは思えないようなしっかりした食事が出された。
ピンクのファンシーなお茶碗にはふんわりと赤飯が盛られており、白を基調とするレースのような平皿には大根おろしが添えられた握り拳サイズのハンバーグとサラダが乗せられていた。赤いキンガムチェックのお盆上にはその二つだけでなく、一口サイズの杏仁豆腐が隅に追いやるように置かれている。
俺の視線の先に気付いたらしく、やっぱり不機嫌さを滲ませてそれはりっちゃんから、と教えてくれた。
「おれが作ったのはその二つだから、杏仁豆腐は食べなくていいよ~」
「ううん、これも美味しく頂くよ」
「……ご主人クンのば~か」
ついにふてくされてカウンターを飛び出していった。本来の彼は俺だけを特別扱いしてはならないので、接客に行くのが正しい行動ではあるのだが、なんで非難されているのか分からずそわそわしてしまう。
たった数日の付き合いだが、彼は見た目にそぐわず子どもっぽいところがある。幼い頃の弟だったら……、と思考を巡らせる。自分の作ったものを褒めてもらえなくて嫌だった、とか?
箸でハンバーグを切り、口に放り込む。噛むごとに肉汁が広がり、味付けも程良く、彼の手作りであると改めて分かった。確かに、こんな手の込んだ料理を作ったのにりっちゃんさんの方を優先されたのなら、怒りたくなる気持ちも分かる。
後からきちんと味の感想を言おう。そう思ったところでキッチンの彼からメロンソーダを提供され、背中に鋭いものが刺さるのを感じた。
何故かメイド服のままのめいくんと、一緒に家まで帰ってきた。昨日のようにりっちゃんさんに止めてもらえるかと期待したが、どうやらデカいメイド二人で何か仕組んでいたらしく、なんの障害もなくすんなりと隣を陣取られた。
本人の言い分は、学生証を持ってきてくれたお礼をする、だった。紙袋を見せつけられ、お世話して癒してあげるね~と押し切られてしまっていた。
「ご主人クンの本当のお屋敷だ~」
鍵を開ければずかずかと入っていく。
「お帰りなさい、ご主人クン」
俺を出迎えるようにくるりと回ってスカートを靡かせた。いつも通り下には隠すようなものは履いておらず、淡いピンクのレースが太股に張り付いている様が視界に映る。
「ご主人クンのために、可愛いパンツにしてみたよ……!」
恥じらう動作を取って、ちらちらとこちらを窺っている。
「あ、ありがとう」
「ほら、早く!」
手招きされ、急かされるまま靴を脱いだところで、力一杯身体を引っ張られた。一度の来宅で間取りを把握したのか彼は迷いなく進んでいき、俺をベッドに投げ飛ばした。
そのまま馬乗りになり、唇が重ねられる。舌先が強引に侵入し、好き勝手に暴れていく。行為を見せつけるような水音がこの部屋に響いているのが、恐ろしくなる。今後家でくつろいでいる度に、彼とのキスを思い出してしまうかもしれない。じわじわと上がっていた熱は、そんな妄想で一層強く燃え始めた。
わざとらしく音を立てながら離れ、垂れ目は首筋に視線を移した。あ、絆創膏に気付かれた。昨日みたいに遊ばれる。そう思ったら、快楽に正直な身体は抵抗する気を失っていた。
「ご主人クン、期待してて可愛い~! メイドに叱られたいなんて変態だね~」
長い指先がテープ越しに噛み跡をなぞり、一気に剥いだ。漏れ出た声は痛みに耐えるためのものとは思えないほど甘いもので、自分の身体がどんどん彼に作り替えられているように感じた。
「ふっ、ぅん……、めいく、んっ」
晒された傷口を舐められ、思わず彼の名前を呼ぶ。
唇が軽く触れた後、示すように数回甘噛みされた。そして、前触れもなく牙を突き立てられ、塞ぎかけていた皮膚が再びこじ開けられる。痛みを逃がすように身体を捩れば、かかる力は更に強くなっていく。
十分に彼の形を記憶させられた後、肉厚なものが傷口を一周した。
「ちゃ~んと、みんなにおれのご主人クンだって見せつけてね」
首元に顔を置いたままおねだりするように見上げられ、絶対にそんなことはないはずなのに、やっぱり可愛いと思ってしまった。
「よし。付け直したところで、本題に入ろっか!」
本題……?
めいくんは俺の上に乗ったまま、身体を捻って紙袋を手に取った。
「ご主人クンが勘違いしてるから、きちんと分からせてあげたかったんだ~」
じゃ~ん、と紙袋をこちらに見せつけた。めいくんは紙袋に手を入れた途端、不機嫌そうに顔を歪ませた。
「りっちゃんって女みたいな顔してるもんね~。あの人のせいで、ご主人クンは自分のことをオスだと勘違いしちゃったんだね~」
取り出されたそれを、見たことはあった。でも、使ったことはない。
紙袋を置いて、めいくんはそのパッケージに唇を寄せた。メイドを自称する男と、そのジョークグッズの組み合わせに、頭が嫌な興奮を覚える。
「今日はご主人クンがオスでいれる最後の日で~す!」
彼の手に収まるオナホールとその言葉に、くらくらした。
「やっぱりフェラじゃ、童貞卒業って思えなかったよね。おれ以外の人間にそういう気を起こせないように、改めて筆下ろししてあげる~! おれで卒業なんて、ご主人クンも贅沢だね~」
圧倒されたまま、めいくんは俺の方に両手を差し出した。オナホールを持っている右手と、ただ握り込んだだけの左手。う~ん、と左右の拳を視線が行き来した後、よし! と場にそぐわない元気な声を上げた。
「ご主人クン、右と左、どっちがいい?」
どっちも選びたくない。
しかし、選ばなかったらもっとひどい行動を起こされそうで、めいくんの涙ぼくろのある方を選んだ。
「左で……」
「じゃあ正常位ね!」
ぱっと左手を開き、夕食のメニューを決めるような気軽さで言った。
その手はオナホールの梱包を開いていく。透明なプラスチックケースに入ったそれは、作り物らしいピンク色をしていた。筒の入口には生々しい襞があり、めいくんの指の動きに合わせて揺れている。
「りっちゃんさんって、めいくんの先輩なんでしょ? 俺は彼にそういう気持ちで接してるわけじゃないよ」
「なに? おれの前で他の奴の話するわけ? これからご主人クンの初めてを奪ってあげるのに、ひどくない?」
苛立ちをぶつけるように音を立てて、紙袋からローションを取り出した。配慮の欠片もなく透明な液をぶちまけて、襞に入りきらなかったものがワイシャツを汚した。
めいくんはゆっくりと後退し、目的のところに到達して尻を押しつけるように腰をゆるく振った。すでに立ち上がり始めていた陰茎が、ちょっとの刺激に驚き、思わず下腹部が持ち上がった。
「あ、おれに早く挿入れたくて意地悪言ったんだね~」
そんなことはないと否定したいのに、スカートの中でぐりぐりと揉まれては嬌声しか出てこなかった。
「んっ、ち、ちぁっ……!」
「よく分かんな~い」
めいくんは聞く耳を持ってはくれなかったが、これだと騎乗位じゃん! と自分ルールを違反していることに気付いてか動きを止めた。
手に持ったオナホールを揺らしながら俺の上から降り、どうしたもんかと俺と手元を見比べて、汚れた胸上にそれを置いた。垂れたローションは不快だったが、俺の体温に合わせて次第に生温かくなっていく。
めいくんによって簡単にスラックスもパンツも脱がされ、とうとう俺は身を守るものを失ってしまった。ピンク色を回収し、前触れなく挿入させられる。
「ひっ!」
難なく受け入れられ、馴染ませるようにゆっくりと上下した。自分の指とは違う柔らかい感触は気持ちが良いのに、やはり物足りなさがある。彼に一度開かれただけの場所が、ずっと疼いてしょうがない。
俺を見下ろすメイドは、オナホールを手放してにんまりと笑った。
「ご主人クンは童貞だから、正常位なんて分からないか!」
上半身を無理矢理起こされ、彼に抱きつかれた。そのまま身体をひっくり返すようにして、俺とベッドの間に潜り込み、先ほどとは反対にこちらがめいくんを押し倒したような体勢になる。白いエプロンの上に、ぴとっとオナホールを押し当ててしまった。
「おれの初めて、ちゃんと受け取ってね」
唇同士が触れ合った瞬間に、陰茎を包んでいるものの感触が変わった。容赦なく動き始め、その度にぬちぬちと粘り気のある水音がした。
「ぇ、あっ、あっ、だめっ」
上半身は彼の胸元に預け、必死に快楽を貪った。本能的に腰が上下し、彼の手の中を暴くように動いた。決定的な何かが足りず、求めるように先へ先へと進もうとする。
「あ~ん、ご主人クン、気持ち良いよ~」
彼の顔をのぞき込めば、言葉とは裏腹に余裕な表情を崩さずにいる。俺がメイド服の彼を犯しているとは、全く思えなかった。むしろ、彼の棒読みの喘ぎ声が、自分はこの男に支配されているのだと分からせられた。その事実が脳を刺激して、いつぞやの行為を思い出させる。触れられていない部分はずっと彼を媚びるようにうねっている。
視線に気付いて、動きが強められてしまった。
「んっ、ぁあ、あ、ああっ……」
「やば、おれ、孕まされちゃうかも~」
「あ、めい、くっ、イく、イくっ、やらっ、やめへっ」
「おれも~。ご主人クン、射精して、おれに中出しして~」
「あああっ……!」
彼の手の中によって、呆気なく童貞は奪われた。果てた俺に気付いていないのか、わざとなのか、オナホールは止まらず、激しい熱が思考を溶かしていく。
「らめっ、らめっ、いっ、いってる、からぁっ」
「うそ! 全然気付かなかった~。ご主人クンって、孕ませる才能ないのかも~」
あざ笑いながら、ようやく次第に動きを緩めていく。口を閉じれないまま、余韻に浸る。彼のピンクのメイド服は俺の唾液に濡れ、そこだけ色を濃くしていた。
放出したはずなのに、身体の熱は行き場を失って下腹部でくすぶっている。
「言うことあるでしょ、ご主人クン」
彼の手が俺の耳朶で遊んだ。穴に入り込んだり、縁を撫でたりと、刺激が与えられる度にその温度は上がっていく。
「とろとろになって分からないか。めいくん、ごめんなさい。はい!」
弄んでいた手が止まり、俺は操られるように復唱した。
「めいくん、ごめん、なさい」
「有クンは、めいくんのメスです」
「あ、あるくんは、めいくんの、…め、めすです」
「よく出来ました~! じゃあ、次は身体にも教えてあげようね~」
一瞬にして身体はベッドに縫いつけられた。
「ぁあっ……!」
余韻の残る陰茎がオナホールから抜かれ、その刺激で少しだけ硬さを取り戻す。俺の精液と入り交じったうっすらと白く濁るローションを手に落として、再び戻された。腰が勝手に揺れるのを目敏く指摘される。
「やっぱり身体はオスだと思いこんでるじゃん! も~、ご主人クンってば!」
指先がこれからの情事を宣言するように、ゆったりと後孔をなぞった。
「早く思い出そうね」
ずぷんっと指が侵入し、点検するように胎内を探った。折り曲げて襞の一つひとつをめくるようにぐにぐに動いている。
「うん、浮気してない! めいくんに一途な有クンが大好きだよ」
さっきまでの作り物の笑みとは違う、あどけない笑顔に心臓が高鳴った。緩んだ垂れ目も、ほんのり赤い頬も、優しく上がる口角も、彼のすべてが可愛いものに思えた。
めいくんになら、何をされてもいい。
支配されても、ひどく犯されても、きっとこの笑顔を見て許してしまうのだろう。理解し難い感情が、ずっと胸の中に渦巻いている。
脚を伸ばして、彼の身体をはしたなく抱きしめた。
「やっぱり、めいくんはかわいいね」
幼い子どものような繊細さと、災害のような自分勝手さを兼ね備える子。幼い頃の妹弟を思い出させる姿に胸がくすぐったくなる。
「……変なの」
じわじわと顔が紅潮し、照れを誤魔化すように指が一本増やされた。先ほどとは違い、性急に肉壁を荒らしていく。
「でも、嬉しい。ねえ、もっと言って、有クン」
言葉を引き出させようと、忙しなく快楽が与えられた。
「かわ、いッ…!?」
「あはは、ご主人クンも可愛いよ、おれの次にね~」
強い刺激が与えられる場所に指が突き刺さり、オナホールの中で吐精した。快楽の逃げ場を求めて脚に力が入り、より強くめいくんを拘束してしまう。
俺を見下ろす瞳は、可愛いとは形容しがたいほど、薄暗く輝いている。
指が抜かれ、解された胎内が甘く疼いた。体液とローションで濡れたまま、見せつけるようにスカートがたくし上げられる。彼の欲望が、淡いピンクのレースの中でアンバランスに努張していた。薄い布越しでも、その重量がはっきりと分かる。
「ちゃ~んと、ご主人クンがメスだってこと、覚えてね」
使い込まれた陰茎がお腹の上に置かれる。こんなに大きなものがこれから胎内を荒らすのだと思うと、肉壁がきゅっと締まった。俺のものは未だピンク色に身を埋めており、男性器を失ってしまったような気さえする。
後孔に当てられて、そのまま一思いに貫かれた。異物感が雄としての敗北を伝えている。スキンを被っていなかったと気付いたのは挿入されてからだった。
ゆっくりと慣らすように押し上げられ、苦しさと快楽が同居している。それは次第に快楽が勝っていき、されるがまま声を上げた。
「ああっ、め、めいくんっ」
「もうメスの顔になってるよ~、あ、元からか! でも、オスのご主人クンももう一回見たいかも~」
めいくんの手がオナホールを掴んで、ぬちゃぬちゃと強く扱き始めた。一瞬にして頭の中がスパークし熱を吐き出す。
「あああぁっ!? ね、とめっ、らめらっ、てっ!?」
「分かんな~い。ご主人クンが射精したかどうか、分かんな~い」
本当は分かっているはずなのに、彼は胎内を犯すのも、陰茎で遊ぶのも、やめてくれない。俺の身体をおかしくするのを、子どものように楽しんでいる。
どちゅどちゅと淫らな音を立てながらしつこく気持ちの良い部分を殴られ、その間隔は徐々に早くなっていく。熱を逃がすようにだらしなく喘いでいれば、めいくんが意地悪く笑った。
「ご主人クンって、本当に変態だね~。お隣サンに自分がメイドとセックスしてるって、知って欲しいんでしょ。本当にこういうのお好きね、指摘されたらきゅっておれのこと抱きしめちゃってさ~。隣人にまでメスって知られてる、可愛い可愛いご主人クン! 大丈夫、おれが守ってあげるからね~」
口を押さえようにも、激しい責めのせいで身体が思い通りに動かない。腕で顔を殴ってしまい、下手くそ~とからかわれた。
止まらない絶頂の中に、ずっと囚われ続けている。
「んっ、んんぅ、ん……!」
「こういうご主人クンも最高! 必死で可愛い!」
自分勝手な腰使いは、奥にこじ開けるような強い律動に変わっていく。眉間が狭まり、余裕の失った表情で容赦なく殴り続ける。めいくんの限界が近付いているのが分かると、どうしてか愛おしく思えた。肉壁が必死に彼に吸い付く。
「好き、有クン」
その言葉だけで、自分の熱が吐き出されたような気がした。それと同時に胎内に強く押し込まれ、熱いものが迸った。めいくんはイっているのが分からないと言っていたけれど、俺は確かに彼の射精を感じていた。
「心から身体まで、全部おれにお世話されてね」
熱に浮かされたままの頭で、言葉の意味も理解せずに頷く。すぐにめいくんの顔が降りてきて、ぐりぐりとおでこ同士を押しつけられた。
暖かくて、視界が穏やかに揺れている。熱い吐息がちょっとだけ不機嫌そうに、口元を擽った。
「有クンが疲れてるのは分かるけどさ~、寝落ちするのやめてよ」
「ごめ……」
「はあ、それはおれの腕の見せ所か~。次は最後までし~っかり起きて、ピロートークしようね」
「ん……」
「おやすみ、有クン」
唇に優しく触れられる。やらなくちゃいけないことは多いのに、めいくんが俺の近くにいるだけで何故か安堵してしまい、そのまま穏やかな感情に身を任せた。
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