王子の心を溶かすのは、、?

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「今日も終電かぁ」



最終電車に揺られネオンが煌めく街並みを見つめながらため息をつく



これまでの自分の人生を哀れんだ事はない



ただ、人より少しだけ大変な思いをしただけ



幼少の頃に両親が他界し、親戚の家をたらい回しにあい
勿論よそ者の私が好かれるはずもなく家の中でも学校でも虐められていた
お風呂に入れて貰えた記憶などない
石鹸だけ与えられ、常に外のホースの水で水浴びだ
髪はギシギシ、衣服はヨレヨレの常に同じ服
誰が私に好意を抱くだろうか?



子供の頃は辛い、苦しいと思った事は勿論ある



だが




思うだけ無駄だ。辛いなら現状を打開すべく己で動くしかない
生きているだけ儲けもの。そう思った頃からは特に何も感じなくなってきた




中学生の頃から新聞配達でお小遣いを稼ぎ、高校の頃には親戚の家を出て自分で生活をしてきた




高校もバイトに勉強に明け暮れ友達と呼べる人もいない
つまらない高校生活だったな、と他人事のように思う




だけどあのバイト生活がなければ最終学歴が中学で終わって今無事就職している自分はいなかったであろう
まぁ、毎日終電まで残業のブラック企業だが




「ただいま」





おかえり と返ってくるはずのない家にただいまという自分は痛いのだろうか
暗闇に包まれた自分の部屋に明かりをつけ、化粧を落とし布団に潜る。
このまま 一生目が覚めなければいいのに
なんて、
考えてしまう馬鹿な自分
甘えるな。生きろ。明日も頑張ろ。




目を閉じ眠りにつく





さっき寝たばかりのようだがすぐに朝はやってくる




軽食を済ませ、化粧をして家を出る




「行ってきます」





心の中で、行ってらっしゃい と自分に返す





いい天気だ
ランドセルを背負った小学生達がキャーキャー騒ぎながら小学校へ向かう




自分の小学生時代を思い返すと虚しくなる





信号を待っていると、隣に低学年と思われる小学生が並んだ






「お姉ちゃん!これ!いいでしょ!ママに帽子買って貰ったの!」




私にピンクの可愛いキャップを見せつけ可愛い笑顔を向ける小学生





「うん、可愛いね。大事にね」





ニコリと小学生に笑いかけた瞬間、強風が吹き小学生の帽子が道路に吹き飛んだ





「あー!ちぃちゃんの帽子ー!」





帽子を追いかける少女
そこに1台の車が迫ってきていた





「危ない!!」





頭で考えるより先に体が動いた





少女を歩道側へ投げ飛ばし、跳ね上がる自分の体





色んな所から悲鳴が上がる





泣き叫ぶ少女、携帯で救急車を呼ぶ大人達、介抱してくれる人





全部、全部見えているのに聞こえているのに私の体は何も動かない




あぁ、死ぬんだなぁと冷静に感じてしまう自分に失笑してしまう






視界が段々歪み、やがて私の視界は真っ暗になった





こうして零崎雪(ゼロサキ ユキ)の人生は幕を閉じた






突如、開けた視界





眩い光の世界が私を包み込む




「君に、新しい人生をあげよう」





そう言った目の前の光り輝く人物は背中から翼が生えていた







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