オーバードライブ ・エロス〜性技カンストの俺が魔王をイカせるまで帰れない世界〜

ぽせいどん

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第64話 ー命を賭した抱擁ー

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 黄金の心臓が轟音を上げて鳴り響いた。神殿全体が揺れ、石柱がひび割れ、壁に刻まれた神の像たちが涙を流す。その一滴一滴が床へと滴り落ち、黒い肉の波に飲み込まれていった。

 セレーナは血に濡れた胸を押さえ、呻くように声を洩らした。
 「……もう、限界よ……私たちには……抗う力なんて……」
 視界は赤黒く染まり、吐血で喉が焼ける。もはや自分の命の灯は風前の灯だと悟っていた。

 影の女王もまた、腕の嵐に絡め取られ、必死に闇糸を放とうとしたが、指先からは血が滴るばかりだった。
 「……くっ……我が糸すら……届かぬのか……」
 誇り高い王女であった彼女の瞳に、今は絶望しか映っていなかった。

 その中でただ一人、レイジは血まみれになりながらも両腕を広げていた。全身の骨はきしみ、皮膚は裂け、臓腑は悲鳴を上げている。それでもなお、彼は微笑んでいた。

 「……神をも抱いた王……か。だったら……俺が……お前を抱き潰してやる」

 その宣言に、娼王の仮面が一斉に揺れた。千もの顔が嗤い、千もの声が同時に囁く。
 《愚カナ……命ヲ賭シテ抱クト? 滑稽ナリ。汝ノ犠牲ハ無意味。抱クモノハ常ニ我。汝ハ抱カレル側……》

 黄金の心臓が強く脈打つたび、無数の腕がレイジに絡みついた。だが彼は、その全てを自らの腕で掴み取り、血で濡れた手に力を込めた。

 「……そうだ、抱かれる……でもな……俺は違う。俺は抱き返す……命ごと!」

 腕が軋み、骨が砕ける音が響いた。喉から大量の血が噴き出した。それでもレイジは、死の予感を恐れなかった。むしろその死を、最後の力に変えようとしていた。

 セレーナは涙を流し、かすれ声で叫んだ。
 「やめて……そんなことをしたら……あなたは……!」

 影の女王も呻きながら声を振り絞った。
 「愚か者! 命を投げ出して勝つなど……勝利ではない……!」

 だがレイジは二人を見つめ、微笑んだ。血に濡れ、崩れ落ちそうな顔でありながら、確固たる決意を宿していた。
 「……犠牲を見てきた。仲間の涙を背負ってきた。だから……最後は俺が犠牲になる。俺が命を賭けて、この世界を……救う」

 その言葉に、二人は声を失った。彼の決意はあまりに重く、そして美しかった。

 娼王の仮面が再び嗤った。
 《抱ク? 汝ガ我ヲ? 不可能ナリ! 汝ノ命ハココデ潰エル!》

 神殿が震え、床の肉が波打ち、三人を呑み込もうとした。

 だがレイジは両腕をさらに広げ、迫り来る闇を抱き締めるかのように叫んだ。
 「来い……! 俺の全てを懸けて……お前を抱く!」

 その瞬間、黄金の心臓の鼓動が止まり、広間に静寂が訪れた。

 ――命を賭した抱擁が、いま始まろうとしていた。

 静寂を破ったのは、レイジの鼓動だった。
 ドクン、とひとつ鳴るたびに、空気が揺れ、黒い肉の波が押し戻される。

 「……感じるか……俺の全てを……」

 レイジの声は掠れていたが、確かな響きを持っていた。これまで培ったすべての「性技」が、肉体の奥底で解き放たれていくのを自覚していた。

 その瞬間、彼の身体から熱が放たれた。抱擁、愛撫、淫靡な技の数々――積み重ねてきた行為の記憶と技巧が、呪文のように彼の血肉を通じて放射される。

 《……何ダ……此ノ感覚ハ……?》

 娼王の仮面が一斉に震えた。無数の手がレイジを締め上げようと迫るが、逆に彼に抱かれた瞬間、震え、痙攣した。

 「……これは……抗えぬ……」
 セレーナは息を呑んだ。かつて彼女も、レイジの腕に抱かれ、その技に溺れたことがある。だが今、目の前にいるのは、彼女が知る以上の存在だった。

 影の女王もまた、震える声を洩らした。
 「……まさか……性技だけで……ここまでの……」

 レイジの肉体は崩壊寸前だった。骨は軋み、臓腑は裂け、血が滲み続けている。だが彼の抱擁は、娼王の無数の腕を包み込み、その支配を逆転させ始めていた。

 《馬鹿ナ……我ハ抱クモノ……抱カレル側ニハナリ得ヌ!》

 娼王の声は怒号へと変わった。黄金の心臓が暴れ狂うように鼓動し、神殿の壁を裂いた。像が崩れ、黒い肉が洪水のように押し寄せる。

 レイジは全身を抱き締め、呻くように叫んだ。
 「……神をも抱いた王……なら……俺が神を超えて抱き尽くす!」

 圧がさらに強まり、血が噴き出す。視界は赤に染まり、意識は薄れかける。だが彼の腕だけは緩まなかった。

 セレーナは涙を流し、嗚咽した。
 「……レイジ……やめて……そんなことをすれば……本当に……」
 彼女は理解していた。この力は彼の命を燃やす炎そのものだと。

 影の女王も声を振り絞った。
 「お前が消えたら……我々は……!」

 レイジは微笑み、血に濡れた顔で答えた。
 「……大丈夫だ。俺は……消えても……お前たちの中に……残る」

 その言葉に、二人は嗚咽し、力なく首を振った。

 娼王は怒号を放ち、さらに無数の腕を解き放った。
 《我ヲ抱クナド、許サヌ! 神ヲモ抱イタ我ガ、汝如キニ屈スハズ!》

 黒い腕の奔流が広間を覆い尽くし、三人を呑み込もうとした。

 だが、その中心でレイジの抱擁は揺るがなかった。むしろ彼の全身から迸る「性技の奔流」が、娼王の肉を痙攣させ、仮面の笑みを歪ませた。

 「……ほら、感じてるだろ……これが……俺の全てだ……!」

 黄金の心臓が、初めて怯えるように震えた。

 黄金の心臓が乱打のように鳴り響き、神殿は崩壊寸前の震動に包まれていた。壁の神像はすべて割れ落ち、砕け散った石片さえ黒い肉に吸い込まれていく。天井の亀裂から赤黒い光が差し込み、広間全体を業火のごとく染めた。

 レイジの両腕は血に濡れ、皮膚は裂け、骨は露わになりつつあった。抱き締めるたびに、自身の肉体が砕けていくのを感じていた。それでも彼は決して腕を緩めなかった。

 「……俺は……抱かれる側じゃない……俺が……抱くんだ……!」

 その声と同時に、彼の体から奔流のような熱が放たれた。快楽と絶望を刻み続けてきた「性技」の全てが、血と魂を燃料にして迸る。抱擁はただの力ではない。肉体を溶かし、精神を崩し、存在の根幹にまで侵入する圧倒的な「技」だった。

 《馬鹿ナ……ッ! コノ我ガ……揺ラグ……?》

 娼王の仮面の群れが一斉に歪み、数千の唇から悲鳴が洩れた。これまで神をも抱いてきた存在が、今初めて「抱かれる側」として揺らいでいた。

 セレーナはその光景に息を呑んだ。
 「……まさか……本当に……」
 誓いを失いかけていた彼女の胸に、再び希望の炎が灯る。

 影の女王も涙を滲ませ、かすれ声で呟いた。
 「……愚か者……だが、その愚かさが……王をも超える……」

 だが娼王は屈しなかった。黄金の心臓が強烈に鼓動し、広間に血の波が溢れ出す。無数の腕が暴風のように広がり、レイジを押し潰す。

 《我ハ抱ク者! 抱カレル事ナド、許サヌ!》

 その怒号と共に、レイジの身体が音を立てて圧し潰されかけた。骨が砕け、血が噴き出し、視界が白に飛ぶ。

 「ぐっ……があああああ!」

 それでもレイジは笑った。血に濡れた顔で、苦痛に歪みながらも確かな笑みを浮かべた。
 「……だから……言ったろ……。抱かれるんじゃない……俺が抱くんだ……!」

 全身を引き裂かれながら、彼の腕はさらに強く閉じた。その瞬間、娼王の肉体が激しく痙攣し、広間に響く声が一斉に乱れた。

 《や……め……ヨ……我ガ……ッ……》

 仮面の顔が次々と割れ、黒い血を噴き出した。黄金の心臓ですら、まるで恐怖に震えるかのように脈動を乱した。

 セレーナと影の女王は、その光景を涙に濡れた瞳で見つめた。希望と恐怖と悲しみがないまぜになり、胸を引き裂いた。

 「レイジ……やめて……! 命が燃え尽きてしまう……!」

 「愚か者! それ以上は……お前自身が……!」

 だが、レイジは二人に目を向け、静かに頷いた。
 「……心配するな……。俺の命は……もうお前たちに預けた……」

 その言葉に、二人は嗚咽し、言葉を失った。

 広間全体が震え、神殿が崩れ落ち始める。黄金の心臓が絶叫のように鳴り響き、無数の腕が最後の抵抗を見せた。

 だが、その中心でレイジは全てを抱き締め続けていた。命を燃やし尽くしながら。

 ――決戦は、今まさに極限を迎えていた。

 黄金の心臓が、雷鳴のような轟音を上げて鳴り響いた。神殿の壁は崩れ落ち、天井は裂け、赤黒い光が奔流となって流れ込む。その光に照らされ、娼王の仮面の群れが一斉に口を開いた。

 《許サヌ……許サヌ……! 我ガ抱カレル事ナド……断ジテ許サヌ!》

 無数の声が絶叫となって広間を揺るがした。その瞬間、黄金の心臓が脈動を変え、膨張し始めた。光の奔流が迸り、神殿全体がまるで内側から爆ぜようとしていた。

 セレーナが青ざめた顔で叫んだ。
 「……これは……心臓そのものを解き放とうとしているの!?」

 影の女王の目も見開かれ、血に濡れた唇から言葉が洩れた。
 「……愚か者……これは……大陸そのものを呑み込むつもりだ……!」

 娼王は最終手段に出ていた。抱かれることを拒み、全てを呑み込む「終焉の波」を放とうとしていたのだ。

 レイジの身体は既に限界だった。骨は砕け、皮膚は裂け、血が滝のように流れ続けていた。だが彼は腕を緩めなかった。むしろその腕にさらに力を込め、全身を燃やすかのように抱き締め続けた。

 「……逃がすか……お前だけは……俺が……抱き潰す……!」

 黄金の心臓が爆ぜ、光と闇が渦巻いた。無数の腕が狂ったように暴れ、レイジを引き裂こうとする。

 《滅ベヨ……汝モ……仲間モ……大陸モ……全テ我ト共ニ!》

 その怒号と共に、セレーナと影の女王の身体も宙に持ち上げられた。血に濡れた腕が二人を引き裂こうと迫る。

 「いやあああ!」
 「くっ……離セ……!」

 絶望の声が広間を覆う。

 だが、その中でレイジは最後の力を振り絞った。血に濡れた瞳が燃えるように輝き、掠れた声が響く。
 「……ふざけるな……誰も……お前なんかに……渡すもんか……!」

 その瞬間、彼の抱擁はさらに強くなった。性技の奔流が血と魂を燃料にして放たれ、娼王の肉体を内部から震わせた。仮面が次々に割れ、悲鳴が幾千も響く。

 《や……め……ヨ……! 抱カレル事ハ……我ガ……!》

 黄金の心臓が激しく脈動し、光が爆ぜる。広間が崩壊し、大地が軋む。

 セレーナと影の女王は、その中心に立つレイジの姿を見た。血に塗れ、肉体は崩壊寸前。それでも彼は微笑み、ただ腕を広げ、娼王を抱き締め続けていた。

 「……最後に抱くのは……俺だ……」

 掠れた声は静かに、しかし確かに響いた。

 ――命の炎が、燃え尽きようとしていた。
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