オーバードライブ ・エロス〜性技カンストの俺が魔王をイカせるまで帰れない世界〜

ぽせいどん

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第65話 ー光の果てに抱かれてー

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 崩れ落ちる神殿の奥で、黄金の心臓は狂ったように鼓動していた。
 ドクン、ドクン――その一撃ごとに大地は裂け、空気は焼け、赤黒い光が世界を呑み込もうとしていた。

 セレーナは血に濡れた手で胸を押さえ、震える声を洩らした。
 「……もう、世界ごと……終わってしまう……」
 瞳には絶望が映っていた。だが同時に、レイジの背を見つめるその眼差しは、祈りに似ていた。

 影の女王もまた、力なく宙に吊られながら呻いた。
 「……あやつ一人に……世界を背負わせるのか……」
 唇は血に濡れ、声は掠れていた。それでも心の奥底で、彼の覚悟が全てを覆すかもしれないという直感が生まれていた。

 レイジの身体は既に限界を超えていた。皮膚は裂け、骨は砕け、血が絶え間なく滴り落ちている。だがその腕だけは緩むことなく、むしろますます強く娼王を抱き締めていた。

 「……もう十分だろ……。神を抱いた? なら次は……俺だ……」

 その声は掠れていたが、神殿を震わせるほどの強さを持っていた。

 《愚カナ……命ハ尽キル……汝モ……抱カレテ終ワル……!》

 娼王の仮面の群れが一斉に絶叫した。黄金の心臓はさらに膨張し、爆発のような脈動が広間を引き裂いた。無数の腕が暴風と化し、レイジを引き裂こうと押し寄せる。

 だが、その全てをレイジは自らの腕に抱き込んだ。血まみれの掌が肉を掴み、骨が砕けるたびに、その抱擁はさらに強固なものとなっていった。

 「……お前を抱くために……俺はここに転生してきたんだ……!」

 その言葉を聞いた瞬間、セレーナの胸に激しい衝撃が走った。涙が溢れ、声にならない嗚咽が漏れる。
 「……レイジ……あなた……」

 影の女王もまた、瞳を大きく見開いた。
 「……転生の意味が……そのため……だったと……?」

 娼王は仮面を震わせ、声を乱した。
 《馬鹿ナ……我ハ抱クモノ……抱カレル側ニハ……!》

 レイジは血の泡を吐き出しながら、それでも笑った。
 「……そうだ……最後に抱かれるのは……お前だ……!」

 広間を満たす赤黒い光が一斉に揺らぎ、娼王の無数の腕が痙攣した。黄金の心臓すら、恐怖に震えるように脈動を乱す。

 レイジの命は、燃え尽きようとしていた。
 それでも、その腕は一片の迷いもなく、娼王を抱き締め続けていた。

 黄金の心臓が爆ぜるように鳴り響いた。
 ドクン、ドクン、ドクン――その鼓動は大地を揺るがし、神殿の残骸を粉砕し、空を裂くほどの力を持っていた。

 《認メヌ……認メヌ! 我ガ抱カレル事ナド、絶対ニ認メヌ!》

 娼王の仮面の群れが一斉に絶叫した。無数の腕が嵐のように広間を覆い尽くし、鋼より硬く、炎より熱く、レイジを圧し潰そうと迫る。

 レイジの身体は、既に限界を通り越していた。血が滝のように流れ、皮膚は裂け、骨は砕け、内臓は焼けただれている。それでも彼の両腕は緩まなかった。むしろ、その腕はさらに強く、娼王を抱き締めていた。

 「……だから言ったろ……最後に抱かれるのは……お前だ……!」

 その言葉と同時に、彼の胸の奥で炎が燃え上がった。
 これまで積み重ねてきた「性技」の記憶、技術、情熱――すべてが血と魂を燃料にし、一つの奔流となって解き放たれた。

 セレーナはその光景を目にして、息を呑んだ。
 「……こんな……力が……レイジの中に……」
 涙が頬を伝い、嗚咽が声にならなかった。

 影の女王もまた、唇を噛み切り、声を震わせた。
 「……愚か者……だが、その愚かさが……神すら超える……」

 娼王の肉体が痙攣し、無数の腕が震えた。仮面の顔が次々に割れ、黒い血を噴き出す。黄金の心臓ですら、不規則な鼓動を刻み、恐怖に怯えるように揺れていた。

 《馬鹿ナ……馬鹿ナ! 我ハ神ヲ抱イタ王! 抱カレル存在デハ……!》

 その否定の声は、必死の悲鳴に近かった。

 レイジは血まみれの顔で笑った。
 「……違うな……。お前はもう……俺の腕の中で……ただの一つの……化け物だ……!」

 黄金の心臓がさらに強く脈動し、神殿全体が崩れ落ちていく。天井は砕け、赤黒い光が大地を裂いた。

 セレーナは嗚咽混じりに叫んだ。
 「レイジ! それ以上は……あなたが燃え尽きてしまう!」

 影の女王も血を吐きながら声を振り絞った。
 「お前が死んで……何になる……! 我らは……!」

 だがレイジは二人に目を向け、静かに言った。
 「……俺は……死んでもいい……。お前たちが生き残れば……それで十分だ……」

 その言葉に、二人の心は引き裂かれた。

 黄金の心臓が最高潮に達し、膨張を続けた。
 《滅ベヨ……! 汝モ……仲間モ……大陸モ……全テ抱イテ滅ボス!》

 世界そのものが崩壊へと引きずり込まれる中、レイジは命の炎を限界まで燃やし上げた。

 「……終わらせる……俺が……!」

 その叫びと共に、彼の抱擁はさらに強くなった。命を賭して放たれたその力は、娼王の絶望的な抵抗すら呑み込んでいった。

 ――レイジの命は、燃え尽きる寸前にあった。

 黄金の心臓が悲鳴を上げるように脈動した。規則正しいはずの鼓動は乱れ、まるで獣が喉を裂かれて喘ぐかのような震えを伴っていた。

 《や……め……ヨ……我ガ……抱カレル事ハ……!》

 無数の仮面が次々と割れ、黒い血と共に空気を震わせる悲鳴が漏れた。かつて神を抱き、世界を覆ってきた「原初の娼王」が、初めて「敗北」の影を帯びていた。

 一方で、レイジの身体は完全に崩壊へ向かっていた。腕の骨は粉々に砕け、皮膚は裂け、臓腑からは絶え間なく血が溢れている。吐息は途切れ途切れで、もはや立っていることすら奇跡だった。

 だが、その両腕だけは決して緩まなかった。
 「……言っただろ……。最後に抱かれるのは……お前だ……」

 その声は掠れていたが、確かに響いた。

 セレーナは涙を滲ませ、必死に叫んだ。
 「やめて……もう十分! それ以上は、あなたが……!」
 彼女は分かっていた。このままではレイジが命を燃やし尽くし、二度と戻らぬ存在になると。だが止めることはできなかった。

 影の女王も、血に濡れた唇を噛み切り、嗚咽混じりに呟いた。
 「愚か者……その命を賭す愚かさが……我らを生かすというのか……」

 黄金の心臓がさらに膨張し、爆ぜるように鼓動した。光の奔流が広間を満たし、壁も床も溶けていく。世界そのものが抱き潰されるかのようだった。

 《滅ベヨ……! 汝ノ命モ……仲間モ……大陸モ……!》

 娼王の怒号が轟く。だがその声は次第に悲鳴へと変わっていった。

 レイジの腕の中で、娼王の肉体が激しく痙攣していた。抱かれるたびに力を削がれ、仮面の顔は次々に砕け散る。黄金の心臓すら、恐怖に怯えるかのように脈を乱し、ひび割れを走らせていた。

 「……もう終わりだ……お前は……」

 レイジの視界は赤黒く染まり、仲間の姿すら霞んでいた。呼吸は浅く、胸の炎は今にも消えようとしている。だがその瞳だけは、確固たる輝きを宿していた。

 セレーナは涙を流し、声を震わせた。
 「……お願い……帰ってきて……」

 影の女王も嗚咽混じりに叫んだ。
 「まだ……死ぬな……!」

 だがレイジは微笑み、血に濡れた顔で言った。
 「……大丈夫だ……俺は消えても……お前たちの中に残る……」

 その瞬間、黄金の心臓がひときわ大きな鼓動を放ち、ついにひび割れから光が溢れ出した。

 《や……めロ……! 我ハ……抱ク王……抱カレル側ニハ……!》

 絶叫は悲鳴に変わり、神殿全体を揺るがした。

 レイジの命は燃え尽きようとしていた。だが、その抱擁だけが確かな現実として残り、娼王を崩壊へと導いていた。

 黄金の心臓がついに限界に達した。
 大地を裂くような轟音とともに、ひび割れは全体へ広がり、内側から白と黒が入り混じった光が溢れ出した。

 《や……めロ……我ハ……抱ク王……神ヲモ抱イタ王……ナゼ……人ノ子ニ……》

 無数の仮面が一斉に砕け散り、悲鳴と共に黒い血を撒き散らす。その声は絶望と恐怖に染まり、もはや威厳のかけらもなかった。

 レイジの腕は最後まで緩まなかった。砕けた骨で肉を裂かれながらも、血に塗れた掌で娼王の全てを抱き締め続けていた。

 「……だから言ったろ……最後に抱かれるのは……お前だ……」

 掠れた声は、確かに響いた。

 黄金の心臓が爆ぜる。光の奔流が天井を突き破り、赤黒い空を貫いた。神殿全体が崩壊し、世界の大陸すら震えた。

 娼王の仮面はすべて割れ落ち、黒い肉は崩壊し、かつて「神をも抱いた王」と呼ばれた存在は、ついにレイジの腕の中で沈黙した。


 
 ――勝利は確定した。

 だがその代償は、あまりに大きかった。

 セレーナが絶叫した。
 「レイジ――っ!」

 影の女王もまた、嗚咽と共に叫んだ。
 「やめろ……やめてくれ……それ以上は……!」

 二人の声は届かなかった。

 レイジの身体はすでに限界を超えていた。血を吐き、瞳の光は薄れ、全身から命の灯が消えかけていた。それでも彼は微笑んでいた。

 「……これで……みんな……救える……」

 その言葉は、彼自身の終焉の宣告でもあった。

 セレーナは必死に手を伸ばした。
 「だめよ! 消えないで! あなたがいなければ……誓いは……!」

 影の女王も涙を流し、喉が裂けるような声で叫んだ。
 「愚か者……お前まで……犠牲になるな……!」

 だがレイジは二人に最後の微笑みを向けた。血に濡れた唇で、静かに言葉を紡いだ。
 「……誓いは……お前たちが……続けてくれればいい……俺は……魂だけになっても……ずっと……そばにいる……」

 セレーナの頬を涙が流れ落ち、影の女王の瞳からも血混じりの涙が零れた。

 黄金の心臓が最後の脈動を放ち、粉々に砕け散った。光が奔流となって広間を包み、すべてを洗い流していく。

 その中で、レイジの肉体は静かに崩れ落ちていった。
 だが――その場に一つだけ残ったものがあった。

 血に濡れた床に、淡く光を宿した「魂の残滓」。

 セレーナはそれを見て、嗚咽を洩らした。
 「……やっぱり……あなたは……ここにいる……」

 影の女王も震える声で呟いた。
 「愚か者……。だが、その魂は……永遠に我らを抱き締めているのだな……」

 光が収まり、神殿は瓦礫と化した。
 大陸の崩壊が始まろうとしていた。

 ――だが、最後の戦いは終わった。

 レイジは命を賭して、原初の娼王を抱き潰したのだ。
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