王女殿下の大罪騎士〜大罪人にされたので、第三王女の騎士になる〜

天羽睦月

文字の大きさ
14 / 39
第2章

第14話 廃墟地域の侵入者

しおりを挟む
「急でごめんね! ノア君とサレアを見たくて」
「見るところなんてある? 中心部以外は荒廃してて、今も交易をしているなんて思えないんだけど」

 周囲には倒れている大人や、身体を布で包んで地面に座っている子供が見える。
 これほどになるまで国が関与しないということは情報が届いていないのか、この政策を認めているということになる。
 どちらにせよ、都市サレアはいつ崩壊してもおかしくない。

「交易なんてしていないと思うわ。国に治めるお金が足りなくなったからお父様に呼ばれたのよ。今頃怒られているんじゃないかしら」
「お金を治めなくて怒られるっておかしいよな。普通なら、こんな政策をしていることを怒るべきなのに」
「全てがおかしいのよ。周辺国の侵略に対抗出来ているのが不思議なくらいだわ」

 ステラの言う通り。
 ノアのいる村のように侵略を受けている場所は多いはずだ。それなのに奪われたという情報を聞かない。追い返していると思いたいが、既に奪われている地域もあるのではとノアは考えていた。

「もう奪われているけど、情報が出回らないってことはない?」
「そんなことは思いたくないけど、ありえる話ね。この都市サレアも今攻めたらすぐに落とせそうだし」

 自国の都市をすぐに落とせると考えるのもおかしいが、その通りだ。

「夜になったら、早くメアちゃんのお母様とルナちゃんを解放しましょう。そのためにここに来たのですから」
「そうだな。サレアを救うよりも二人を助けに来たんだから、必要以上に踏み込む必要はない。ある意味巻き込まれている状態になってるよな」
「メアちゃんの都合に巻き込まれてるわよね。だけど、目的は国を変えることなの。そのためにしなければならないことがまだ見えなくて……」

 目標を決めたが、そのための道筋が分からないようだ。
 その日を生きるだけのノアにとっては考えたことがないが、一つだけ言えることがあった。

「この国で幸せな人はいないが、不幸な国民は多くいる。腐っている都市や町、村を救い、一人でも多くの国民を幸せにすることが進む道じゃないのか?」
「でも全部は救いきれないよ! どうすればいいの!」

 目元に涙を浮かべて辛そうだ。
 ステラが言うことも理解できる。一つ一つを救っていたらどれだけ時間があっても足りない。何か起爆剤となる出来事が必要になる。

「いつかステラが、国を救うために動いていると言わないと駄目かもな」
「そんなこと言ったら暗殺者に殺されちゃうよ!」
「それでもだ。暗殺者からは俺が守る! 俺はステラの騎士なんだろ?」
「そうだったわ。ノア君は私の騎士なんだもんね」
「うん。俺がステラを守るから、ステラは国民を守ってくれ」
「そうする! ちゃんと守ってね!」

 綺麗な笑顔だ。
 ステラのこの笑顔を守るために尽力しなければならない。まずは夜に行う作戦を成功に導くために戦うことが第一だ。

「さて、そろそろ戻るか。意外と時間が経っているからな」
「そうしましょうか。リルさん発ちを待たせるのも悪いし」
「そうだ――逃げろ!」

 リル達のもとに戻ろうとすると、空から誰かが降りてくる影が見えた。
 危険を感じたノアはステラの背中を力強く押し、この場から遠ざけることにした。

「ノア君!」

 地面に降りた謎の影は、砂埃を巻き上げながらノアの目の前に降り立つ。
 その姿は砂埃で見えないので、どのような人物かは想像がつかない。背後から自身の名を呼ぶステラの声が聞こえるが、振り向けない。目の前から目を離せば殺される恐怖を感じるからだ。

「逃げろステラ! 早くリル達のところに行け!」

 叫びつつ抜刀すると、砂埃が晴れて目の前にいる人物の姿が見えてきた。
 体格がよく、ノアの二倍以上はある。髪は白と黒のツートンカラーと右頬にある切り傷が目立つ。だが、それよりも一番は王国騎士と似た制服を着ていることだ。

「あれがステラ・オーレリアか。直ちに抹殺する」
「なっ!? そんなことさせない!」

 目の前にいる男性がステラを抹殺すると言い放つ。
 リルが暗殺に時間がかかったからか、別の理由からか分からない。だが、ステラが抹殺をされるのを黙って見ているわけにはいかない。

「逃げてノア君! その人はお父様直轄の近衛騎士よ!」
「近衛騎士!? そんなの聞いたことない!」

 目の前にいる男性が、王国騎士と違う制服を着ているのがその証拠だろう。
 金色でいかにも特別だといわんばかりだ。しかしそれは見た目だけではない。態度や自身に満ち溢れている佇まいからも読み取れる。

「ステラ王女。あなたは陛下を裏切るのですか?」

 身体の芯に響くような、低く威圧感のある声色をしている。
 怖い。ただそれだけしか感情が出てこない。どれだけの修羅場を潜って来たのか分からないが、王国騎士とは格が違うと本能が告げている。

「私はお父様の政策が間違っていると思うわ! この都市サレアの惨状を見てもまだ正しいと言えるの!?」
「オーレリア王国の行く末を決めるのは陛下だ。我々はその道を切り開く剣で、正しいか悪いかではない。陛下のすることこそが正しいのだ!」
「狂ってるわ……近衛騎士が国王の間違いを指摘しないでどうするのよ! 何のための騎士なの!」
「あなたには関係ない。近衛騎士は陛下の剣、ただそれだけのこと。裏切りの王女、ステラ様。近衛騎士副団長、マグナ・ゼフィラスがお命を頂戴する!」

 近衛部隊の男性は、帯刀している剣を引き抜き切先をステラに向けた。
 それは明確な敵対するという意思表示であり、オーレリア王国がステラ・オーレリアを敵として認定した瞬間だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...