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第3章
第28話 這い寄る闇
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背中が焼けるように痛む。
肉を裂き、骨を砕く。
明らかに背骨が砕かれていると理解できる。
脚に力が入らない。どうやら腰から下の感覚がないようだ。これでは動くことも戦うこともできない。ルナも救うことができない――なにもできない。
ノアは辛うじて動く両腕を頼りに起き上がろうとするが、腰から抜かれた剣で左手の甲を貫かれてしまった。
「あぐぅ……がはっ……」
「もう諦めて。あなたは何も変えられないし、変える力もないの。大罪人は大罪人らしく暗い世界で朽ち果てて」
シェリアに迷いはないようだ。
見上げた瞳に映るのはクリスの顔だが、一瞬ピンクの長い髪を持つ愛らしい顔の少女が見えた気がする。だがそんな情報はもう関係ない。
「ごめんなルナ……俺には救えなかった……」
既に痛覚はなく、地面に流れる赤い血液で作られた血だまりを見るしかできない。
視界に入る血だまりも次第にぼやけてくる。ルナがどうしているか分からないが、立ち尽くしてシェリアからの指示を待っているのだろう。
ノアは消えそうな命の灯を感じながら静かに目を閉じようとした瞬間、誰かがシェリアに斬りかかる姿が見えた。
「お兄ちゃんを死なせない! 私が守るの!」
「ど、どうして洗脳が!? 私は解除してないわ!」
斬りかかったのはルナだ。
どうやら死にそうなノアの姿を見て、自力で洗脳を解除したようだ。洗脳にかかりやすいのか、ノアがピンチな時に洗脳が解けやすいのか考えものだが、洗脳が解除されたのは嬉しいことだ。もう二度とかかってほしくないが。
「私がもう少し早く洗脳を解いていれば! 今助けるからね、お兄ちゃん!」
シェリアをノアから遠ざけようとしているようだが、そう簡単には動かない。
二つの押す力が拮抗し、触れ合う剣が鈍い悲鳴を上げている。だが、そんなことは二人とも気にしていないようで、目の前にいる人間を殺すことだけを考えている目をしていた。
「そのまま洗脳されていればよかったのに! どうして立ち向かってくるの!」
「なぜだと思う? 操り人形のあなたには分からないでしょうけど、教えてあげる。それはね――守りたい人がいるからよ!」
「そんなの私だっているわよ! だからこうやって戦っているの!」
「それが間違っているのよ! マグナなんかの手先になって救えるわけない!」
間違っていると言われたシェリアは、目を見開いてうるさいと声を上げている。
図星だったのだろう。自身でも間違っていると思っていても、それに従わなければならない時がある。シェリアは今がその時だったのだ。
しかし、それではクリスと添い遂げることはできない。間違った選択肢は間違った方向でしか作用しないからだ。
「それでも! それでも私にはこの道しかないの!」
ルナを吹き飛ばし地面に剣を刺したシェリアは、そのまま硬直してしまった。
動き的には攻撃が来る動作をしていたが、一体何があったのだろうか。
「私に任せてくれるはずじゃないんですか?」
突然独り言を発したシェリアを、ルナは不思議そうな目で見ている。
しかしその目は一瞬で仇敵を見る目に変化した。なぜなら、シェリアの背後にマグナが現れ、右手に持つ剣で腹部を貫いていたからだ。
「あぐぅ……ど、どうして……」
「役立たずにこれ以上時間をかけていられないからな」
勢いよく剣を引き抜いたマグナはそのまま倒れているノアの前に移動をした。
見つめるその視線は憐れみか、それとも蔑みか分からない。だが、血だまりの中にいるノアに対して見下しているのは確かだ。
「わ、私は、あんたの命令で……自由になるために……」
腹部を抑えて血を止めようとしてるが、そんなことで止まらない。
苦痛で顔を歪めるシェリアに対して、マグナが高笑いをし始める。
「道具を自由にさせるわけないだろう。あんなのは嘘だ。お前達が自由になる道などない」
「そ、そんな……じゃあ、私達は何のために……」
絶望に顔を染めるシェリアに対して「諦めないで!」とルナが声を上げた。
「あなたの想いはその程度なの? 好きな気持ちを溢れさせなさい!」
しかしいくら叫んでもシェリアには届いていないようだ。
「倒れている奴と共に朽ち果てろ!」
マグナが剣を振り上げた瞬間、倒れていたノアが立ち上がった。
瀕死で今にも死にそうなノアがなぜ立ち上がれたのか、ルナを含めて誰一人理解できていない。それはノアも同様だ。どうして立ち上がったのか、どうしてマグナに立ち向かえるのか分かっていない。
「させない……お前をここで殺す……」
「お前、その姿は!? 何をしたんだ!?」
ノアの右半身を黒い影が覆っており、シェリアにやられた傷は跡形もなく消えていた。
「俺は何もしていない。ただ、お前を殺したい。ルナを守りたいと願っただけだ」
「たったそれだけ!? たったそれだけなのか!?」
「そうだ。お前はやりすぎた。報いを受けろ!」
剣を握る手を強め、目の前にいるマグナとの因縁を断ち切る戦いが始まった。
肉を裂き、骨を砕く。
明らかに背骨が砕かれていると理解できる。
脚に力が入らない。どうやら腰から下の感覚がないようだ。これでは動くことも戦うこともできない。ルナも救うことができない――なにもできない。
ノアは辛うじて動く両腕を頼りに起き上がろうとするが、腰から抜かれた剣で左手の甲を貫かれてしまった。
「あぐぅ……がはっ……」
「もう諦めて。あなたは何も変えられないし、変える力もないの。大罪人は大罪人らしく暗い世界で朽ち果てて」
シェリアに迷いはないようだ。
見上げた瞳に映るのはクリスの顔だが、一瞬ピンクの長い髪を持つ愛らしい顔の少女が見えた気がする。だがそんな情報はもう関係ない。
「ごめんなルナ……俺には救えなかった……」
既に痛覚はなく、地面に流れる赤い血液で作られた血だまりを見るしかできない。
視界に入る血だまりも次第にぼやけてくる。ルナがどうしているか分からないが、立ち尽くしてシェリアからの指示を待っているのだろう。
ノアは消えそうな命の灯を感じながら静かに目を閉じようとした瞬間、誰かがシェリアに斬りかかる姿が見えた。
「お兄ちゃんを死なせない! 私が守るの!」
「ど、どうして洗脳が!? 私は解除してないわ!」
斬りかかったのはルナだ。
どうやら死にそうなノアの姿を見て、自力で洗脳を解除したようだ。洗脳にかかりやすいのか、ノアがピンチな時に洗脳が解けやすいのか考えものだが、洗脳が解除されたのは嬉しいことだ。もう二度とかかってほしくないが。
「私がもう少し早く洗脳を解いていれば! 今助けるからね、お兄ちゃん!」
シェリアをノアから遠ざけようとしているようだが、そう簡単には動かない。
二つの押す力が拮抗し、触れ合う剣が鈍い悲鳴を上げている。だが、そんなことは二人とも気にしていないようで、目の前にいる人間を殺すことだけを考えている目をしていた。
「そのまま洗脳されていればよかったのに! どうして立ち向かってくるの!」
「なぜだと思う? 操り人形のあなたには分からないでしょうけど、教えてあげる。それはね――守りたい人がいるからよ!」
「そんなの私だっているわよ! だからこうやって戦っているの!」
「それが間違っているのよ! マグナなんかの手先になって救えるわけない!」
間違っていると言われたシェリアは、目を見開いてうるさいと声を上げている。
図星だったのだろう。自身でも間違っていると思っていても、それに従わなければならない時がある。シェリアは今がその時だったのだ。
しかし、それではクリスと添い遂げることはできない。間違った選択肢は間違った方向でしか作用しないからだ。
「それでも! それでも私にはこの道しかないの!」
ルナを吹き飛ばし地面に剣を刺したシェリアは、そのまま硬直してしまった。
動き的には攻撃が来る動作をしていたが、一体何があったのだろうか。
「私に任せてくれるはずじゃないんですか?」
突然独り言を発したシェリアを、ルナは不思議そうな目で見ている。
しかしその目は一瞬で仇敵を見る目に変化した。なぜなら、シェリアの背後にマグナが現れ、右手に持つ剣で腹部を貫いていたからだ。
「あぐぅ……ど、どうして……」
「役立たずにこれ以上時間をかけていられないからな」
勢いよく剣を引き抜いたマグナはそのまま倒れているノアの前に移動をした。
見つめるその視線は憐れみか、それとも蔑みか分からない。だが、血だまりの中にいるノアに対して見下しているのは確かだ。
「わ、私は、あんたの命令で……自由になるために……」
腹部を抑えて血を止めようとしてるが、そんなことで止まらない。
苦痛で顔を歪めるシェリアに対して、マグナが高笑いをし始める。
「道具を自由にさせるわけないだろう。あんなのは嘘だ。お前達が自由になる道などない」
「そ、そんな……じゃあ、私達は何のために……」
絶望に顔を染めるシェリアに対して「諦めないで!」とルナが声を上げた。
「あなたの想いはその程度なの? 好きな気持ちを溢れさせなさい!」
しかしいくら叫んでもシェリアには届いていないようだ。
「倒れている奴と共に朽ち果てろ!」
マグナが剣を振り上げた瞬間、倒れていたノアが立ち上がった。
瀕死で今にも死にそうなノアがなぜ立ち上がれたのか、ルナを含めて誰一人理解できていない。それはノアも同様だ。どうして立ち上がったのか、どうしてマグナに立ち向かえるのか分かっていない。
「させない……お前をここで殺す……」
「お前、その姿は!? 何をしたんだ!?」
ノアの右半身を黒い影が覆っており、シェリアにやられた傷は跡形もなく消えていた。
「俺は何もしていない。ただ、お前を殺したい。ルナを守りたいと願っただけだ」
「たったそれだけ!? たったそれだけなのか!?」
「そうだ。お前はやりすぎた。報いを受けろ!」
剣を握る手を強め、目の前にいるマグナとの因縁を断ち切る戦いが始まった。
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