魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

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第77話 明臣の部屋へ

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美桜が朝食を食べ終えると、メイドの女性がお部屋にお戻りくださいと美桜に言う。美桜はそれに従って食堂を出ていくと入り口近くに一人の若い茶髪で肩までの長さがある若いメイドの女性が立っていた。

その若いメイドの女性は美桜が来たことを見ると、こちらに来てくださいと美桜に話しかけた。美桜は何だろうと思いついて行くと、一階の入り組んだ道の先にある奥の部屋に連れて行かれた。

「この部屋にお入りください」

言われたままに美桜は部屋に入ると、そこは何かの倉庫かと思うほどに薄暗く埃が舞っていた。美桜は奥に歩いて行くと、地面に段ボールなどが乱雑に置かれていた。

「この部屋は何なの?」

美桜が口元を抑えながら呟くと、突然明かりが灯った。すると、美桜の数メートル先に明臣が立っていた。

「いるならいるって言ってよ! 怖いじゃない!」

美桜が声をあげると、明臣がごめんなさいと謝った。

「お父様に見つかると何かと面倒になるもので……」

明臣がそう言うと、外にいるメイドさんは大丈夫なのと美桜が聞く。明臣はあの人は大丈夫だよと返答した。

「そう? ならいいけど。 で、なんで私をここに呼んだの?」

美桜が聞くと明臣は、どこで聞かれているか分からないのでと言う。

「そうね。 それでマリアさんとのことはどうする?」

明臣は食事会での美桜との印象や、手紙を受け取った時とは違う印象を受けて驚いていた。美桜はそんな明臣の表情に気がついて、これが私よと微笑しながら言った。美桜が猫を被るのを止めて離していると、明臣が外にいるメイドがマリアさんの家にいるメイドさんと繋がりを持っていますのでと言った。

「そうなのね。 それは強い繋がりだわ」

美桜が考えながら言うと、マリアさんを皇家に招いて御当主に明臣と共に結婚をすると宣言をすることが大切ね。

「そして、私のお父様の策略で勝手に婚約となったことなど言わないといけないわね」

美桜がそう考えていると、明臣がその時が来ればご協力しますと言ってくれた。美桜はありがとうと言うと、明臣がこれからどう動きましょうかと美桜に話しかける。

「少し考えがあるわ。 最初にマリアさんの借金問題を片付けるわ」

美桜はそう言うと、今日は解散しましょうと言って部屋を出ていこうとする。すると、明臣が待ってくださいと言って美桜を止めた。

「なに? なにかあった?」

美桜が振り向くと、そこには頭を下げている明臣の姿があった。

「急にどうしたのよ? 頭を下げ過ぎると男を下げるわよ」

そう言われた明臣は、そうでしょうかと言って頭を下げるのを止めた。

「美桜さんはマリアさんとのことに関係がないのに、ここまで関わってもらって申し訳ないし、借金のことも解決してもらおうとして申し訳なさ過ぎて」

本音を言う明臣に美桜が私のためでもあるから気にしないでと返した。その言葉を聞いた明臣は敵わないなと呟くと、よろしくお願いしますと笑顔で美桜に言った。

「任されたわ。 待ってなさい」

美桜はそう言って部屋を出ると自室に向かった。自室ではスマートフォンを手にして雫に電話をした。

「早く出なさい!」

イライラをしていると電話をかけて数分後に雫が出た。雫は第一声がご無事ですかだったが、美桜が私のことより今はと言ったので雫は話を聞くことにした。

「私の今回の婚約は破談となる予定よ。 婚約者の明臣と両思いの人がいてその人をこれから救いに行くわ」

美桜の破談との言葉を聞いて良かったと思っていた。また、皇家の長男に両思いの人がいることを知って、そんな裏事情があったのかと驚いていると私はどうすればいいですかと美桜に聞いた。

「マリアさんの家に借金が大量にあって、その借金の方にマリアさんが知らない男に嫁がないといけないらしいの。 その嫁ぎ先の男と借金の関係を調べてほしいの」

そう言われた雫は、男の名前を教えてくださいと言う。すると美桜は聞いてないと声をあげた。すぐ名前聞いてメールするわと言って通話を終えた。

「男の名前聞かないと、明臣はどこ行ったのかしら?」

美桜は家の中を当てもなく歩いて行くと、玄関口の前を掃除していた若い執事とメイドを見つけたので話しかけた。

「こんにちわ。 明臣さんはどこにいらっしゃいます?」

自身の本性を隠して猫を被りながら聞いてみた。すると、若い執事がこの時間は自室にいらっしゃいますよと教えてくれた。

「ありがとうございます」

美桜はそう言って頭を下げてその場を後にした。明臣の部屋は三階の東側の端に位置している。その場所に美桜が歩いて行くと、明臣の部屋が見えてきた。

「ここね。 もしもーし、入りますよー」

ノックをしながら言うと、部屋の中から明臣のどうぞと言う声が聞こえた。美桜はその声を聞くと失礼しますと言って部屋の扉を開けた。

明臣の部屋はとても質素であり、一般的な長方形の学習机と参考書や各種勉強の本が、五個ある木で出来ている大きな本棚にびっしりと敷き詰められていた。
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