魔法の世界で新たな人生を～捨てられた人生のやり直し～

第105話 美桜の属性

美桜が怯えながら誰かいるのと言い続けると、目の前に弦十郎が現れた。弦十郎は地面に座ると、美桜の顎を右手で掴んで力を入れた。

「属性魔法が使えずに、回復魔法だけしか使えない愚かな娘め。 お前のせいで私がどれだけ貴族社会で肩身が狭かったか！」

顎を掴む手の力をさらに強めていく。その力によって美桜の顎の骨が軋む音が美桜自身に聞こえていた。

「そんなこと私は知らないわよ！ あんたがお母様に暴力を振るっていたことや、お兄様やお姉様達の足を引っ張ることしかしていないことしか知らないわ！」

美桜が弦十郎を睨みつけながら怒鳴る。すると弦十郎は美桜の顎から手を離してそのまま右手で美桜の左頬を拳で殴りつけた。

「口だけは達者になりおって！ 政治家や天神家より上の貴族の男でも一人捕まえていれば、まだ利用価値があったものを」

弦十郎はそう言いながら美桜の頬を殴り続ける。美桜が唇を切って血を流すと、弦十郎は殴るのを止めた。

「顔と身体は良いのだからこれ以上傷つけるのは、それすらも使い物にはならないか。 いや、もうそれすらもいらないか」

弦十郎が独り言を言っていると、地面に倒れている美桜の服を掴んで強引に起こす。美桜を起こして座らせると、弦十郎は美桜の顔を掴んで自身の顔を見せる。顔を見合わせると、美桜は弦十郎の頬に唾を吐きかけた。

「汚い顔を見せつけるんじゃないわよ」

美桜がそう言うと弦十郎は気の強さは母親譲りだなと言い、美桜の左頬を再度殴りつける。

「なぜお前が回復魔法しか使えないか知っているか？」

弦十郎が地面に倒れている美桜に言うと、美桜はそんなこと知るわけないじゃないと小さな声で言う。弦十郎は地面に倒れている美桜を見下ろしながら、美桜が回復魔法しか使えない理由を話す。

「お前の身体には生まれた時から封印が施されていたんだ。 そのことは私しか知らないことだがな」

弦十郎が話し始めると、美桜は静かにその言葉を聞いていた。

「回復魔法は少し努力をすれば使える魔法であるが故に、お前はそれしか使えていない。では、お前の使える属性は何だと思う？」

そう言われた美桜は、知らないわと返す。

「知らないか。 そりゃそうだ。 分かるはずがない」

そう言う弦十郎は中腰になり、倒れている美桜に顔を近づける。

「お前の属性は真なる光属性。 古代に文明を築き上げた人類が使っていた劣化していない属性魔法だ」

劣化していない属性魔法。そう聞いた美桜は、弦十郎が言っている意味が理解できなかった。

「真なる光属性ってどういう意味よ！」

美桜が叫んで弦十郎に聞くと、弦十郎は鼻で笑った。鼻で笑った弦十郎は、美桜に対して愚か者と言い放った。美桜は愚か者とは何よと言う。

「ここまで言っても理解をしないから愚か者と言ったのだ」

そう言い弦十郎は続けて美桜に言う。

「真なる光属性。 それは現代では遺伝子によって受け継がれていた魔法の因子が劣化しているが、その魔法遺伝子が劣化せずにむしろ進化したために古代人が扱えていた真なる魔法を超える魔法を扱えることだ」

弦十郎が美桜に説明をすると、自身がそんな特別ではないと言う。しかし弦十郎は遺伝子検査をしたから間違いはないと美桜に反論をした。

「私がその真なる光属性っていうのを使えたとしても、封印があるから使えないでしょ？」

そう美桜が聞くと弦十郎が封印は解けると言う。弦十郎は来いとだけ言うと、扉が開く音がした。その扉からは複数の足音が美桜には聞こえていた。

「早く始めてくれ。 この愚かな娘に施されている封印を解くのだ」

そう弦十郎が喋ると、黒いマントを羽織っている四人の男が美桜を中心に見たこともない幾何学模様の魔法陣を書き始めた。

「あんたら何をしているのよ！」

美桜が声を荒げて魔法陣のようなものを書いているのを妨害しようとするも、手足が動かないので妨害のしようもなかった。