魔法の世界で新たな人生を～捨てられた人生のやり直し～

第106話 封印

美桜の周囲に魔法陣を書き始めた黒いマントの男達は一分もかからずに書き終えてしまった。書き終えたのを聞いた弦十郎は、魔法陣の手前の外側の線に手を置いた。

「今からお前の中の封印を解除する。 それと共にお前に洗脳を施して俺の意のままに動く人形となってもらう」

人形となるとの言葉を聞いた美桜は、ふざけないでと叫ぶ。しかし弦十郎はその言葉を聞かずに、魔法陣に手を添えて発動をさせる。

「始めよう。 お前は封印を解かれて俺の人形となるのだ！」

そう言いながら弦十郎は魔法陣に自身の魔力を流して、美桜の封印を解除するために渾身の力を籠める。弦十郎は息を荒げながらも自身の魔力を流し続けると、次第に美桜の身体から淡い光が溢れ始めた。

「な、なによこれ！？ 私の身体に何をしているの！」

美桜が叫ぶもその声は弦十郎には届いていない。なおも弦十郎が魔力を流し続けると、美桜の身体から眩い光が溢れ始める。その光が部屋中を照らすと、美桜がいた部屋には人が座れる木の椅子や何に使うか分からない機械類が多数置いてあった。

その機械類は美桜からは眩い光が出ているが、次第に衝撃波も発し始めていた。光と衝撃はを受けて弦十郎はその場にいる黒いマントの男達が吹き飛ばされてしまった。

「ぐぁ！？ この衝撃波は……ついに……ついに……私のもとに絶大なる力が！」

そう吹き飛ばされた場所から起き上がり、弦十郎は美桜を指さして封印が解除されると喜んでいた。

「いやああああああああああああああ！！！ 痛い痛い痛い痛い！」

美桜は苦しい顔をして叫びながらのた打ち回っている。美桜が苦しんでいる様子を見て弦十郎達は喜び続けていた。美桜が苦しむにつれて封印が解除されていくと喜ぶ弦十郎に、美桜がゲス野郎と声を振り絞って言う。

「何とでも呼ぶがいい。 もうすぐお前の意識は無くなる」

そう弦十郎が言うと、美桜は声にならない声を発してその場に倒れた。倒れた美桜を見て弦十郎はついに解放したと笑顔になっていた。黒いマントの男達もやりましたねと話しかける。

「そうだな。 お前達はもう用済みだ」

そう言いながら弦十郎は剣を出現させて、黒いマントを羽織っている男達の首を斬り落とした。

「お前達の役目はここまでだ。 美桜を使い私はこの国の支配者となるのだ」

その言葉共に弦十郎は暗くなりつつある部屋で声高らかに笑っていた。弦十郎の笑い声が消えると、美桜が静かに立ち上がった。美桜のその姿を横目で見た弦十郎は、私の声が聞こえるかと話しかける。

「はい。 聞こえています」

美桜は虚ろな目をしながら背筋を伸ばしてその場に立ち、感情が籠っていない機械のような声色で返答をした。弦十郎はスマートフォンを取り出し、解放と洗脳が成功したと誰かと通話をしていた。

「そうだ。 これで作戦を実行に移せるようになった。 使えない娘だったが、まさか真なる光属性が封印されているとは、なんたる幸運」

弦十郎は通話相手に行動を開始するぞと告げると、通話を終えた。弦十郎は通話を終えると、立ち尽くしている美桜に対して一緒に来いと命令をする。美桜はその命令に何も言わずに分かりましたと返答をしていた。美桜は虚ろな目をしたまま部屋から出て行く弦十郎の後を歩く。

その美桜の姿は出雲や雫達の知る美桜ではなく、感情がない人形が動いていると思えるほどであった。弦十郎は部屋を出ると目の前に現れる階段を静かに上っていく。

「明日だ。 明日この国は変わる……私はこの国を理想の国へと変えていく！」

弦十郎は階段を上りきると、そこには黒いスーツを着ている男女混合の弦十郎の配下と思われる百人を超える人が集まっていた。

「明日！ この国は変わる！ 今日無能な娘に封印されていた真なる光属性を開放した！ これで私達は悲願である貴族のための国を作ることが可能となる！」

弦十郎が演説をすると、その場にいる部下達は歓声を上げた。これで国を手中にと叫ぶ男や、これで復讐と遂げられると叫ぶ女もいた。弦十郎は静まれと言うと、その場にいる全員が黙った。

「明日まで静かにしているんだ。 明日が革命の時だ」

弦十郎がそう言うと、美桜を呼ぶ。

「何か魔法をしてみろ。 お前の魔法を示せ」

そう指示をされると、美桜は両腕を横に広げて光翼と言う。すると美桜の背中から二枚の白い翼が生えた。