ジグソーパズル

はじめまして、彼女さん

はじめましての変な人

今日の晩御飯は何にしようか。

いつものように考え事をしていると、足が何かにぶつかる感触があった。
不思議に思い、思考を未来から現在に引き戻すと絵に描いたような不良と目が合った。

「あー、と。すみませんごめんなさい失礼しまっ」
即座にカバンを抱え直し逃走の構えを取ったのだが、「まぁまぁ。」なんて言いつつ肩に手を置かれ身動きが取れなくなった。
蛇に睨まれた蛙って、私みたいな心境なのかな……。なんて現実逃避を試みるも、視界一杯に広がる不良の顔と、鼻腔をくすぐる煙草の香りが強引に私をこちらへと引き戻す。
「そうつんけんしなくてもいいだろーお？ぶつかってきたのはそっちなんだしさぁ？」
「いたっ……！」
ぎちぎちと、肩に置かれた手に力がこもる。
反射で身体を捩るも逃れることはできず、ただただ目尻に雫が溜まる。
「ちょーっと、俺らに付き合えよ？な？」
にたぁ、と笑う眼前の男に心の中で呪詛を唱えるも残念ながら魔女の血筋ではない私は何を起こすこともできず、ぎゅっと目を閉じた。

「ねー、そこの汚いおっさ……おにーさん方？その僕の純真無垢な彼女に触らないでくれるかなぁ。汚いのが移るー。」

だから、今日の天気でも話すかのような間延びした声は、幻聴か何かだと思った。
「……は？」
「いや、だからさぁ。」
けれども、声は次第に大きくなり。気がつけば、すぐ隣から人の気配がした。
薄っすらと目を開けると、学生服に身を包んだ青年が私の肩から手を払っているのが目に入った。
「離れろ、つってんのー。日本語わかんないかなぁ？」
顔は見えないものの、声だけを聞くと満面の笑みを浮かべているような、気がした。