私は毎日、夫に熱い(暑い)愛を囁かれています!

悠木 源基

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出逢い

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 友人達は皆スキーが得意だったので、私はみんなに気遣いをさせるのが申し訳なくて、傾斜の緩やかなゲレンデで一人で遊んでいた。

 雪になんか全く興味がなかったはずなのに、ソリで滑ったり、雪だるまを作ったり、雪遊びは思いがけずに楽しいものだった。


 ところがふと気が付くと周りには人影がなく、さっきまで近くで聴こえていた子供達の声もしなくなっていた。

 しかもあんなに青空が広がっていたのに、いつの間にか灰色に変わり、雪がチラチラと舞い始めていた。

 どうしよう。

 雪玉を大きくしようと転がしてきたので、その跡は今のところは残っている。しかし、多分元の場所に戻るまでに雪で消えてしまうだろう。

 暫く逡巡した後で、私はゲレンデに着いた時に係の人から受けた注意を思い出した。


 道に迷った際の鉄則はむやみに動かないという事。

 こうなったら仕方がない。私はビバークする事にした。ちょうど目の前に人が入り込めそうな洞窟があったので。

 雪山の鉄則は決して寝てはいけない。寝ると体温が下がるので凍死してまうからだという。

 寝ないために歌でも歌っていよう。

 私が五曲目の歌を歌っている時、ふと何かの気配を感じて顔を上げると、洞窟を覗き込む男性の緑色の瞳と目が合った。



 ゲレンデで迷子になった私を助けてくれたのは、隣国の若い公爵のブルーノ=ボルドール様。

 輝くような金色の髪に、私の好きな緑色の瞳をした、とても美しい青年だった。
 背が高く、まるで騎士様のような立派な体躯をしていたが、昨年から我が国に外交官として赴任していらしい。

 あの日は任期終了が間近になったので最後の思い出にと、冬の休暇であのスキー場に遊びにいらしていたそうだ。


 ブルーノ様はスキーで滑っていた時、雪山で歌声が聞こえるのを不審に思って洞窟を覗き込んだらしい。

 ゲレンデマジックというか、吊り橋効果というか、それまで異性に全く関心のなかった私が、一瞬で恋に落ちてしまった。


 もう友人達はやんややんやの大騒ぎで、散々囃し立てられた。

 とはいえ、ブルーノ様は隣国の公爵様であり、私とでは不釣り合い。どうにかなりたいとかは一切考えてはいなかった。
 そう。帰宅して家からお礼をして、それで終わると思っていた。

 それでも、両親や兄弟達のように自分も恋が出来て良かったと思っていたのだった。


 だから王宮の舞踏会で彼と再開した時にはとても驚いた。

 ブルーノ様はゲレンデで見た時よりも更にその数倍は素敵だった。

 これはもう、ゲレンデマジックなどではないとはっきり自覚したのだった。


 私は先日スキー場で助けて頂いた感謝を改めて述べて、何かお礼がしたいと言った。するとブルーノ様は、

「それでは一緒に踊って下さい」

 と私に手を差し出されたのだった。


 私は運動神経があまり良くない。音感はあるのだが、リズム感がないのでダンスも苦手だ。

 しかし貴族にとってダンスは必須なので、とにかく幼い頃から厳しくダンスのレッスンを受けてきた。そのおかげで、私もどうにか人並みに踊れる。

 こうやって初めて好きになった男性と一度でも一緒に踊れた事で、私はそれで今までの苦労が吹っ飛んだような気がした。

 その上、ブルーノ様はとにかく上手だったので、私はまるで羽根がはえたかのように舞っていた気がする。
 だからきっと私も、両親や兄達のように頭がお花畑になっていたのだろう。

 ポワワ~ンとしているうちにブルーノ様に付き合って欲しいと言われ、私は何も考えずに頷いていたのだった。
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