巻き込まれ体質の俺が一番守りたかったのは君で、君が守りたかったのは……

悠木 源基

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第5章 スペシャリスト 2

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 ところが、転生したこの世界の顔合わせって、本人達の意思なんてほとんど無視されるんだよね。
 相性や趣味嗜好なんてまるで無視し、貴族社会のパワーバランスを守るため、そして両家の利益が一致するだけの政略結婚なのだ。これって、絶対にまずいと思うんだよね。
 
 だからあちこちで婚約破棄事件が起きるんだよ。成人した大人ならともかく、思春期の若者に親が勝手に婚約させるのは無理があるだろう。
 体は立派でも中身はまだ子供なんだから、恋や愛に夢中になるのもあたりまえのことだ。
 それを浮気だなんだと騒ぎ立てるなんてさ。
 
『これは当主同士が決めた契約です。それを勝手に破棄だなんて、なんて愚かなんでしょう』
 
 いやぁ、まだ結婚していないんだから、それで廃嫡はないだろう。慰謝料も高すぎる。離婚じゃないんだから、相手の家を潰すほど取り立てるなんてどっちが悪人だよ?と思う。
 もちろん自分が望んだ婚約を一方的に破棄したのなら別だけど。
 
 
 それにさ、一般的な貴族同士ならともかく、国王や宰相、上部のお偉いさん達は、自分たちで無理なら、仲人さんみたいなスペシャリストに、皇太子の婚約者を見つけてもらえば良かったんだよ。
 例えば年配の人生豊富な聖女様とかさぁ。あれ? この世界に聖女様なんかいたかな? 
 
 
 まあ、それはともかく、この王太子と公爵令嬢、ペアリングに失敗したのなら、今からでもいいから、ちゃんと二人をフォローする人物(仲人さんみたい人)を側におくべきだよな。
 ただ、女性の方だけに、一方的にお妃教育してりゃいいという話じゃない。ちゃんと花婿教育もしておけよ!
 婚約させてしまえばすむという話ではないだろうに。
 
 
 大体さ、王族とか高位貴族とか、閉塞的で縛りがきつい人達ほど、障害があるとかえって燃え上がるものなんじゃないのか。何故偉い方々はそこんとこがわからないのかなあ?
 
 身分違いの恋、
 許されない恋、
 数々の嫌がらせに妨害、
 それらにも負けない純愛……
 
 
 周りから白い目で見られれば見られるほど、テンション上がって、メラメラと盛り上がる! 
 瞳の中に炎が燃え上がる! 
 ウウッ!
 自分で言ってて恥ずかしい!
 

 まあ、乙女ゲームの世界だけじゃなく、恋が盲目ってのはよく聞くセリフ。
 
 
 凄く評判の良かった奴が、恋愛したり、結婚した途端に人が変わってしまった! っていうのはよくある話。あれって仕方ないと思うんだよね。

 恋してる時って頭ん中が恋愛脳になっているから、恋愛しか見えなくなるらしい……(ただし、友人の弁!)
 
 だから母親思いの息子が、結婚したら嫁べったりになってしまった! っていうのも、それって、当たり前の事。いやむしろ、まとも?
 
 恋をしていると、幸福感をもたらすドーパミンってやつが分泌されて、気分が高陽したり、一途な想いとかが生まれるらしい。
 そんな最中に、母親の事なんか考えられる訳がない。
 
 しかし、その恋愛脳を作ってる恋愛ホルモンってやつも、いつまでも出続けるわけもなく、
 三年目の浮気……
って事になるらしいが。
 
 それでも、全てのカップルが三年で破局するわけじゃない。
 つまりは、恋愛ホルモン以外のものが、そのカップルにあれば、二人の仲は続くのだろう。
 
 愛しさや、穏やかさ、やすらぎ、または、安定した生活、子育て、社会的信頼性など、夫婦でいるメリットがありさえすれば……
 
 
 つまり、俺が何を言いたいかって言うと、あの皇太子殿下がこの先、婚約者とこのまま結婚するのか、それとも婚約破棄をして、噂の男爵令嬢と恋愛に落ちて、城をおんだされるのか、
 (男爵の娘ではさすがに結婚は認められないので……)
 
 あるいは、婚約者、あるいは別の高位貴族の令嬢と結婚して、男爵令嬢を側室にするのか、
(これは、かなり鬼畜! さすがに恋愛脳になってても、あの利発な皇太子ならしないと思いたい……)
 
 
 どのコースを進むのかは知らないが、どれを選ぼうとも、この国を破滅に追い込む真似だけは避けてくれ! ってこと。

 そしてその為にはまず、皇太子殿下とその婚約者のご令嬢の、心と体の元気を取り戻して頂いて、それから判断をしてもらい。ご自分達の進むべき道を。
 
 ちょっとだけうまくやれば、事態は改善される!
 
 ちょっとだけ、冷静になって周りをながめたら、狭くなってた視野も広がる!
 
 ちょっとだけ、優しくなれたら、最悪なシナリオは回避出来る! 
 
 ちょっとだけ素直になれば、心が通じる!
 
 あとちょっとだけ……! 
 
  
 
 この異世界に転生しても、お節介で中間子の俺は、またもや面倒事に巻き込まれる羽目になったのだった。
 

✽✽✽✽✽✽✽


 俺の名前がまだ出てきません。
忘れているわけではありません。後々出できます。
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