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第1章 見知らぬ村、見知らぬ人
第5話
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二人の話は続く。
「大きいとはいえ村ですから、全体の人数はたかが知れています。だから直接ではなくても少なからず血縁はありますし、外部に出ていく人も少ないので皆家族のようなものです」
クルスは安心させるように、レナードの目を見てにこりと微笑む。
「最初は皆慣れなくて少しぎくしゃくするかもしれませんが、貴方にとって過ごしやすい場所になればと思って声を掛けました。その気持ちに嘘はありません」
クルスの気持ちはレナードの心に痛いほどに伝わってきた。純粋に自身のことを思ってくれていると分かる熱情。これまでの人生になかったその熱に、眩暈がしそうな程心を揺さぶられる。
両親の故郷だからというよりも、二人との思い出が色濃く残る場所に居たくないという単純な思いと好奇心からここに来た彼にとって、初めてこの長閑な村について考えさせる一言だった。
「先生の気持ちは痛い程伝わりました。親類については残念ですが、両親が過ごしたこの学校で出来る限り色々なことを学びたいと思います」
少し優等生すぎる回答だろうか。彼はそう頭の隅で感じつつも、漫然とした生活だけは送るまいと心に誓う。
「レナード君……。ご両親とは、私は残念ながらお話したことがありません。しかし実は、この学校にはご両親の痕跡が残っているんですよ」
一体どういうことだろうか。クルスのほほ笑む様子を見るに、まさか悪戯書きの類ではないとは思うが、想像ができない。
「お二人はチェスがお得意だったようです。お父様は校内のチェス大会で優勝したという記録が残っています。お母様はその時準優勝。お二人はライバル関係だったのかもしれませんね」
「元々知り合いだったんでしょうか」
「同い年ですがら、恐らく幼馴染だと思いますよ。子供が多いとはいえ、貴重な同い年の子供ですからね」
なるほどと思う反面、一抹の不安が頭をもたげる。その話から考えるに、これからクラスメイトになる面々も皆小さい頃からお互いを知っている仲なのだろう。既に形成された輪の中に入っていけるのだろうか。
「さて、そろそろ腹も膨れましたしもう部屋に行きますか? 長旅でさぞ疲れたでしょう」
その言葉に、レナードは食事による満足感と話に夢中ですっかり忘れていた疲労がどっと溢れだしてきた。ふと辺りを見渡せば、食事を始めた時にはちらほらといた生徒の姿がすっかり消えている。食堂には大きなランプが各所に配備されてある程度の光源が確保されているが、外はもうすっかり夜になっている時間だろう。とっくに皆各自の部屋に引き上げたようだ。
「そういえば、この学校は皆この村の出身なんですよね? どうして寮があるんでしょう?」
「皆が子沢山だというお話はしましたよね。ほとんどの子は家に個室がないので、第二の家を兼ねているんですよ。目と鼻の先に実家があるとはいえ、寮生活はある程度の自立が出来る場ですし、昼間の学校では学べない社会性を培える場所でもあります」
しかし、とクルスは苦笑して続ける。
「実際の所、学校は敷地が余っていたんです。勿論寮を作るにはお金がいりますが、村の中でのことですから、色々な人に助けられてあまり多くはかからなかったんです」
道楽のようですよねと笑っているが、そのお陰で村に家のない俺も両親の故郷に来られたのだから、感謝するべきだろう。夜も大分更けてきてしまい、名残惜しいが解散にしようという話になった。同じ学校にいるのだから、また話す機会もあるはずだ。
そうして先ほど場所を教えられたばかりの自室に戻り、ちょっと休憩しようとベッド端に腰を掛けてからの記憶がない。こうして初日の夜はあっという間に更けていった。
「大きいとはいえ村ですから、全体の人数はたかが知れています。だから直接ではなくても少なからず血縁はありますし、外部に出ていく人も少ないので皆家族のようなものです」
クルスは安心させるように、レナードの目を見てにこりと微笑む。
「最初は皆慣れなくて少しぎくしゃくするかもしれませんが、貴方にとって過ごしやすい場所になればと思って声を掛けました。その気持ちに嘘はありません」
クルスの気持ちはレナードの心に痛いほどに伝わってきた。純粋に自身のことを思ってくれていると分かる熱情。これまでの人生になかったその熱に、眩暈がしそうな程心を揺さぶられる。
両親の故郷だからというよりも、二人との思い出が色濃く残る場所に居たくないという単純な思いと好奇心からここに来た彼にとって、初めてこの長閑な村について考えさせる一言だった。
「先生の気持ちは痛い程伝わりました。親類については残念ですが、両親が過ごしたこの学校で出来る限り色々なことを学びたいと思います」
少し優等生すぎる回答だろうか。彼はそう頭の隅で感じつつも、漫然とした生活だけは送るまいと心に誓う。
「レナード君……。ご両親とは、私は残念ながらお話したことがありません。しかし実は、この学校にはご両親の痕跡が残っているんですよ」
一体どういうことだろうか。クルスのほほ笑む様子を見るに、まさか悪戯書きの類ではないとは思うが、想像ができない。
「お二人はチェスがお得意だったようです。お父様は校内のチェス大会で優勝したという記録が残っています。お母様はその時準優勝。お二人はライバル関係だったのかもしれませんね」
「元々知り合いだったんでしょうか」
「同い年ですがら、恐らく幼馴染だと思いますよ。子供が多いとはいえ、貴重な同い年の子供ですからね」
なるほどと思う反面、一抹の不安が頭をもたげる。その話から考えるに、これからクラスメイトになる面々も皆小さい頃からお互いを知っている仲なのだろう。既に形成された輪の中に入っていけるのだろうか。
「さて、そろそろ腹も膨れましたしもう部屋に行きますか? 長旅でさぞ疲れたでしょう」
その言葉に、レナードは食事による満足感と話に夢中ですっかり忘れていた疲労がどっと溢れだしてきた。ふと辺りを見渡せば、食事を始めた時にはちらほらといた生徒の姿がすっかり消えている。食堂には大きなランプが各所に配備されてある程度の光源が確保されているが、外はもうすっかり夜になっている時間だろう。とっくに皆各自の部屋に引き上げたようだ。
「そういえば、この学校は皆この村の出身なんですよね? どうして寮があるんでしょう?」
「皆が子沢山だというお話はしましたよね。ほとんどの子は家に個室がないので、第二の家を兼ねているんですよ。目と鼻の先に実家があるとはいえ、寮生活はある程度の自立が出来る場ですし、昼間の学校では学べない社会性を培える場所でもあります」
しかし、とクルスは苦笑して続ける。
「実際の所、学校は敷地が余っていたんです。勿論寮を作るにはお金がいりますが、村の中でのことですから、色々な人に助けられてあまり多くはかからなかったんです」
道楽のようですよねと笑っているが、そのお陰で村に家のない俺も両親の故郷に来られたのだから、感謝するべきだろう。夜も大分更けてきてしまい、名残惜しいが解散にしようという話になった。同じ学校にいるのだから、また話す機会もあるはずだ。
そうして先ほど場所を教えられたばかりの自室に戻り、ちょっと休憩しようとベッド端に腰を掛けてからの記憶がない。こうして初日の夜はあっという間に更けていった。
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