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第1章 見知らぬ村、見知らぬ人
第9話
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セックスが趣味。
衝撃の発言に目を白黒させるレナードを見て、セクレトは笑みを深くして言う。
「娯楽が少ない村ですからね。たまには違う相手と交わってみようと考える者も少なくはありません」
「もしかして、俺たち位の年齢でももう体験済みの人が多かったりしますか……?」
「そうですね、15前後であればほとんど誰かしらと経験がありますね」
最早何も言えなかった。レナードは地元では割と遊んでいる側だと思っていたし、女子とのデート経験もある。しかし16才の今、本番はいまだ経験はない。つまる所童貞なのだ。
セクレトも経験があるのだろうか。ガイルは偏見かもしれないが経験はあるだろう。だがあそこでガイルにまとわりついているマシューや年若そうな男女達はどうなのかと、どうしても色眼鏡で見てしまう自分に嫌になる。
「やっぱり経験談とか話したりするんですか?」
経験の有無を断定できるのであればそうなのだろうが、セクレトが猥談に興じる姿をあまり想像できない。
「それはあまりしないと思いますが――」
その言葉に彼が答えようとした時、丁度ガイルが集団から離れてやってきた。傍には先ほどのマシューもいる。
「レナード、紹介するぜ。こいつはさっき試合で炎の剣持ってた方だ」
「マシューだ、宜しくな! 同い年だよな? 多分俺たち同じクラスになるから、これから宜しく頼むぜ」
「こちらこそ宜しく! 明日いきなりクラスの皆と初めて会うと思ってたから心強いよ」
同じクラスと聞いてほっとする。打算的な考えだが、見るからにマシューは友人が多そうだ。彼との関わりがあれば、クラスでいきなり孤立する事態にはならないだろう。
「さっきの試合で見た通り、こいつの能力は炎を出すことだ。もう一回見せてやってくれるか?」
「分かりました! よーく見てろよ?」
先ほどの剣は構えずに、片手の手のひらを仰向けにして集中すると、音もなく小さな火の玉が現れた。先ほども遠くからは見たものの、やはりマジックなどの類ではなさそうだ。断りを入れて手を近づけてみれば、確かに炎の熱が手に感じられる。
「熱くないのか? さっきも何で剣が燃えないのかと思ってたけど」
「自分で出した熱は熱くないな。暖かさは感じるけど。武器も俺が持っている限りは体の一部みたいなもんだから、燃えたりはしない。例えばこれを投げて何かにぶつければ燃えるけどな」
こうも間近で見てしまえば信じざるを得ない。レナードは思わず唸り声を上げる。
「能力は誰でも持っているものなんですか? 俺、全くないと思うんですけど……」
当たり前のものとして受け入れられている以上、珍しいものではないだろう。
「この村の人間なら大なり小なり必ず持っているはずさ。お前の両親もこの村出身なら、何か使えたはずだ」
本当だろうか。この村出身というのもつい数週間前に知ったばかりだ。両親からは能力についてまるで聞かされてはいないし、勿論それらしき能力を見たこともない。
「心配しなくても発現のタイミングは人それぞれだし、焦るなよ。急いでやるもんじゃないだろ?」
マシューは妙ににやにやと笑っている。少し嫌な感じがしてレナードは顔を顰めたが、ガイルに小突かれている様子を見てその思いも霧散する。
「こら、からかうんじゃない。とにかくこれで能力については信じて貰えたと思う。その内皆の力も見る機会もあると思うから、段々知っていけばいいさ」
「はーい。レナードもごめんな」
「気にしてないから大丈夫だよ」
持っていないことに悩むには、能力について知ってからの時間が短すぎる。そうとは言え誰もが使えるものなら早晩困る日は来るだろう。本当にそんなものが発現するのか。しなかったら異端に見られるのか。先の見えない不安に、レナードは大きなため息をついた。
衝撃の発言に目を白黒させるレナードを見て、セクレトは笑みを深くして言う。
「娯楽が少ない村ですからね。たまには違う相手と交わってみようと考える者も少なくはありません」
「もしかして、俺たち位の年齢でももう体験済みの人が多かったりしますか……?」
「そうですね、15前後であればほとんど誰かしらと経験がありますね」
最早何も言えなかった。レナードは地元では割と遊んでいる側だと思っていたし、女子とのデート経験もある。しかし16才の今、本番はいまだ経験はない。つまる所童貞なのだ。
セクレトも経験があるのだろうか。ガイルは偏見かもしれないが経験はあるだろう。だがあそこでガイルにまとわりついているマシューや年若そうな男女達はどうなのかと、どうしても色眼鏡で見てしまう自分に嫌になる。
「やっぱり経験談とか話したりするんですか?」
経験の有無を断定できるのであればそうなのだろうが、セクレトが猥談に興じる姿をあまり想像できない。
「それはあまりしないと思いますが――」
その言葉に彼が答えようとした時、丁度ガイルが集団から離れてやってきた。傍には先ほどのマシューもいる。
「レナード、紹介するぜ。こいつはさっき試合で炎の剣持ってた方だ」
「マシューだ、宜しくな! 同い年だよな? 多分俺たち同じクラスになるから、これから宜しく頼むぜ」
「こちらこそ宜しく! 明日いきなりクラスの皆と初めて会うと思ってたから心強いよ」
同じクラスと聞いてほっとする。打算的な考えだが、見るからにマシューは友人が多そうだ。彼との関わりがあれば、クラスでいきなり孤立する事態にはならないだろう。
「さっきの試合で見た通り、こいつの能力は炎を出すことだ。もう一回見せてやってくれるか?」
「分かりました! よーく見てろよ?」
先ほどの剣は構えずに、片手の手のひらを仰向けにして集中すると、音もなく小さな火の玉が現れた。先ほども遠くからは見たものの、やはりマジックなどの類ではなさそうだ。断りを入れて手を近づけてみれば、確かに炎の熱が手に感じられる。
「熱くないのか? さっきも何で剣が燃えないのかと思ってたけど」
「自分で出した熱は熱くないな。暖かさは感じるけど。武器も俺が持っている限りは体の一部みたいなもんだから、燃えたりはしない。例えばこれを投げて何かにぶつければ燃えるけどな」
こうも間近で見てしまえば信じざるを得ない。レナードは思わず唸り声を上げる。
「能力は誰でも持っているものなんですか? 俺、全くないと思うんですけど……」
当たり前のものとして受け入れられている以上、珍しいものではないだろう。
「この村の人間なら大なり小なり必ず持っているはずさ。お前の両親もこの村出身なら、何か使えたはずだ」
本当だろうか。この村出身というのもつい数週間前に知ったばかりだ。両親からは能力についてまるで聞かされてはいないし、勿論それらしき能力を見たこともない。
「心配しなくても発現のタイミングは人それぞれだし、焦るなよ。急いでやるもんじゃないだろ?」
マシューは妙ににやにやと笑っている。少し嫌な感じがしてレナードは顔を顰めたが、ガイルに小突かれている様子を見てその思いも霧散する。
「こら、からかうんじゃない。とにかくこれで能力については信じて貰えたと思う。その内皆の力も見る機会もあると思うから、段々知っていけばいいさ」
「はーい。レナードもごめんな」
「気にしてないから大丈夫だよ」
持っていないことに悩むには、能力について知ってからの時間が短すぎる。そうとは言え誰もが使えるものなら早晩困る日は来るだろう。本当にそんなものが発現するのか。しなかったら異端に見られるのか。先の見えない不安に、レナードは大きなため息をついた。
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