Mag Mell -喜びの国-

二見 遊

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第1章 見知らぬ村、見知らぬ人

第11話

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 「アトラス、私たちはこれからお昼にしますが一緒にいかがですか?」

気付けばレナードのすぐ傍に来ていたセクレトが問う。ついさっき朝ごはんを食べた気がしていたが、方々を周っている内に随分時間がたっていたらしい。あれほど食料を詰め込んだお腹が、思い出したようにぐううと鳴った。

 「折角のお誘いなのに申し訳ないのですが、ヨハンを待っているんです。また是非お願いします」

また新しい人物の名が出た。セクレトは手に本を持っているので、待ち人が来るまでそれなりに時間がかかる想定なのだろう。

 「そうですか、残念ですね。では私たちは行きましょうか」

レナードもガイルもその提案に否やはなく、会ったばかりのアトラスに別れを告げた。ふと教会を振り返ると、こちらに向かって手を振るアトラスの姿が見え、思わず振り返す。始終嬉し気だった彼の様子が、改めて頭に焼き付いた。

ランチメニューは固定だった。
例の如く大盛にしてもらったパスタを平らげ、一行は学校のクラスの確認や注意点について教えてもらった。普段の授業には以前の学校と大きな違いはなかったが、一つ見事に不安が的中していた。どうやら能力強化のための時間があるらしい。強制参加ではないが、参加しない者はほとんどおらず、加えて言えば同じクラスに能力が使えない者は全くいないようだ。不幸中の幸いとして、今日会ったマシューとアトラスは確かに同じクラスであることは確認できた。次の目的地の確認を行う中、セクレトが途中で出会った女子生徒に呼ばれ、二人は一時適当な教室で休憩することにした。

 「能力って、いつごろ発現するものなんですか?」

レナードはすっかり意気消沈した様子で呟いた。能力が思った以上に学校生活に組み込まれており、再び今後への不安がムクムクと沸きあがってきた。

 「あー……セクレトは詳しいことは説明してないよな。ぶっちゃけ発現はあることをすればすぐ出来るんだ」
 「本当ですか?! 俺も発現できるんですか!」

そのあっさりとした返事に食い気味に質問する。しかしガイルは少々渋い顔をしたまま中々続きを言おうとはしない。教えてくださいと食い下がると、ようやく重い口を開いた。

 「セックス」
 「はい?」
 「だから、誰かとセックスすれば発現する」
 「冗談言ってる場合じゃないんですよ!」

あまりに真面目な顔でとんでもないことを言うものだから、思わず本気で怒鳴ってしまった。しかしガイルは気を害した様子もなく、むしろかなり気まずそうだ。

 「……本当なんですか?」
 「正確に言えば本番までいかなくてもいいんだけどな。だがそれも来たばかりのお前にはハードルが高いよなあ。だから焦るなと言ったんだ」

後頭部をがしがしとかき、口をひん曲げて困り顔だ。レナードはと言えば何と言っていいか分からずに閉口した。ようやく知り合いが何人か出来た程度の自分にはハードルが高い。

 「とにかく、この話は終わりだ。悩んだって仕方ないんだ、今は一旦忘れろ」

忘れろと言われて忘れられるものではないが、ひとまずは頷いた。丁度セクレトの方も会話が終わったようで、タイミングだけは良かった。
その後、明日から通う予定の教室と寮の談話室を紹介され、今日の案内ツアーはお開きとなった。レナードは今日一日だけでも情報と悩みが一挙に増え、今後に対する期待と不安が一挙に膨れ上がる日となった。眠れないかもしれない。ベッドに入る前にそう思ったが、一分もしない内に眠りに落ち、気付けば外で鳥たちが朝の訪れを知らせる時間になっていた。

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