11 / 33
第1章 見知らぬ村、見知らぬ人
第11話
しおりを挟む
「アトラス、私たちはこれからお昼にしますが一緒にいかがですか?」
気付けばレナードのすぐ傍に来ていたセクレトが問う。ついさっき朝ごはんを食べた気がしていたが、方々を周っている内に随分時間がたっていたらしい。あれほど食料を詰め込んだお腹が、思い出したようにぐううと鳴った。
「折角のお誘いなのに申し訳ないのですが、ヨハンを待っているんです。また是非お願いします」
また新しい人物の名が出た。セクレトは手に本を持っているので、待ち人が来るまでそれなりに時間がかかる想定なのだろう。
「そうですか、残念ですね。では私たちは行きましょうか」
レナードもガイルもその提案に否やはなく、会ったばかりのアトラスに別れを告げた。ふと教会を振り返ると、こちらに向かって手を振るアトラスの姿が見え、思わず振り返す。始終嬉し気だった彼の様子が、改めて頭に焼き付いた。
ランチメニューは固定だった。
例の如く大盛にしてもらったパスタを平らげ、一行は学校のクラスの確認や注意点について教えてもらった。普段の授業には以前の学校と大きな違いはなかったが、一つ見事に不安が的中していた。どうやら能力強化のための時間があるらしい。強制参加ではないが、参加しない者はほとんどおらず、加えて言えば同じクラスに能力が使えない者は全くいないようだ。不幸中の幸いとして、今日会ったマシューとアトラスは確かに同じクラスであることは確認できた。次の目的地の確認を行う中、セクレトが途中で出会った女子生徒に呼ばれ、二人は一時適当な教室で休憩することにした。
「能力って、いつごろ発現するものなんですか?」
レナードはすっかり意気消沈した様子で呟いた。能力が思った以上に学校生活に組み込まれており、再び今後への不安がムクムクと沸きあがってきた。
「あー……セクレトは詳しいことは説明してないよな。ぶっちゃけ発現はあることをすればすぐ出来るんだ」
「本当ですか?! 俺も発現できるんですか!」
そのあっさりとした返事に食い気味に質問する。しかしガイルは少々渋い顔をしたまま中々続きを言おうとはしない。教えてくださいと食い下がると、ようやく重い口を開いた。
「セックス」
「はい?」
「だから、誰かとセックスすれば発現する」
「冗談言ってる場合じゃないんですよ!」
あまりに真面目な顔でとんでもないことを言うものだから、思わず本気で怒鳴ってしまった。しかしガイルは気を害した様子もなく、むしろかなり気まずそうだ。
「……本当なんですか?」
「正確に言えば本番までいかなくてもいいんだけどな。だがそれも来たばかりのお前にはハードルが高いよなあ。だから焦るなと言ったんだ」
後頭部をがしがしとかき、口をひん曲げて困り顔だ。レナードはと言えば何と言っていいか分からずに閉口した。ようやく知り合いが何人か出来た程度の自分にはハードルが高い。
「とにかく、この話は終わりだ。悩んだって仕方ないんだ、今は一旦忘れろ」
忘れろと言われて忘れられるものではないが、ひとまずは頷いた。丁度セクレトの方も会話が終わったようで、タイミングだけは良かった。
その後、明日から通う予定の教室と寮の談話室を紹介され、今日の案内ツアーはお開きとなった。レナードは今日一日だけでも情報と悩みが一挙に増え、今後に対する期待と不安が一挙に膨れ上がる日となった。眠れないかもしれない。ベッドに入る前にそう思ったが、一分もしない内に眠りに落ち、気付けば外で鳥たちが朝の訪れを知らせる時間になっていた。
気付けばレナードのすぐ傍に来ていたセクレトが問う。ついさっき朝ごはんを食べた気がしていたが、方々を周っている内に随分時間がたっていたらしい。あれほど食料を詰め込んだお腹が、思い出したようにぐううと鳴った。
「折角のお誘いなのに申し訳ないのですが、ヨハンを待っているんです。また是非お願いします」
また新しい人物の名が出た。セクレトは手に本を持っているので、待ち人が来るまでそれなりに時間がかかる想定なのだろう。
「そうですか、残念ですね。では私たちは行きましょうか」
レナードもガイルもその提案に否やはなく、会ったばかりのアトラスに別れを告げた。ふと教会を振り返ると、こちらに向かって手を振るアトラスの姿が見え、思わず振り返す。始終嬉し気だった彼の様子が、改めて頭に焼き付いた。
ランチメニューは固定だった。
例の如く大盛にしてもらったパスタを平らげ、一行は学校のクラスの確認や注意点について教えてもらった。普段の授業には以前の学校と大きな違いはなかったが、一つ見事に不安が的中していた。どうやら能力強化のための時間があるらしい。強制参加ではないが、参加しない者はほとんどおらず、加えて言えば同じクラスに能力が使えない者は全くいないようだ。不幸中の幸いとして、今日会ったマシューとアトラスは確かに同じクラスであることは確認できた。次の目的地の確認を行う中、セクレトが途中で出会った女子生徒に呼ばれ、二人は一時適当な教室で休憩することにした。
「能力って、いつごろ発現するものなんですか?」
レナードはすっかり意気消沈した様子で呟いた。能力が思った以上に学校生活に組み込まれており、再び今後への不安がムクムクと沸きあがってきた。
「あー……セクレトは詳しいことは説明してないよな。ぶっちゃけ発現はあることをすればすぐ出来るんだ」
「本当ですか?! 俺も発現できるんですか!」
そのあっさりとした返事に食い気味に質問する。しかしガイルは少々渋い顔をしたまま中々続きを言おうとはしない。教えてくださいと食い下がると、ようやく重い口を開いた。
「セックス」
「はい?」
「だから、誰かとセックスすれば発現する」
「冗談言ってる場合じゃないんですよ!」
あまりに真面目な顔でとんでもないことを言うものだから、思わず本気で怒鳴ってしまった。しかしガイルは気を害した様子もなく、むしろかなり気まずそうだ。
「……本当なんですか?」
「正確に言えば本番までいかなくてもいいんだけどな。だがそれも来たばかりのお前にはハードルが高いよなあ。だから焦るなと言ったんだ」
後頭部をがしがしとかき、口をひん曲げて困り顔だ。レナードはと言えば何と言っていいか分からずに閉口した。ようやく知り合いが何人か出来た程度の自分にはハードルが高い。
「とにかく、この話は終わりだ。悩んだって仕方ないんだ、今は一旦忘れろ」
忘れろと言われて忘れられるものではないが、ひとまずは頷いた。丁度セクレトの方も会話が終わったようで、タイミングだけは良かった。
その後、明日から通う予定の教室と寮の談話室を紹介され、今日の案内ツアーはお開きとなった。レナードは今日一日だけでも情報と悩みが一挙に増え、今後に対する期待と不安が一挙に膨れ上がる日となった。眠れないかもしれない。ベッドに入る前にそう思ったが、一分もしない内に眠りに落ち、気付けば外で鳥たちが朝の訪れを知らせる時間になっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる