Mag Mell -喜びの国-

二見 遊

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第2章 魂に触れる熱

第18話

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 「よし、三分経った! 勝つぞ、お前らー!!」

おおっ、と思いのほかノリのいい叫び声が各所から上がる。マシューの隣にノアも緩く拳を上げ、クルクルと回してアピールする。各グループは一瞬の盛り上がりの後驚く程静かになり、二方向に分かれて侵攻を開始した。

 「私たちは森との境界線ギリギリから近づきましょう。木の下なら校舎の上層階からは見えないはずよ」
 「皆散ってったけど、行動を合わせなくていいのか?」
 「ノアのグループにテレパシー持ちと能力強化持ちがいたわ。だから全体指示はその内あると思うけど、基本は個々の判断で行動していいんじゃないかしら」

レナードはしげしげとブリジットを見た。先ほど会ったばかりの彼女は意外と言うと失礼だろうけれど、周りの様子をよく見ているようだ。四人は校舎の死角を意識しつつ森に近づき、進入地点として適した窓の真下に身を隠した。

 「森の中に身を隠した方がいいんじゃないのか?」
 「森には昼間でも入っちゃ駄目だよ。あそこの境界線を越さないよう言われなかった?」

アトラスの言葉に、クルスからの注意が思い起こされた。あの時は神域などと言われて迷信の類かと胡散臭さしか感じなかったが、非常識な能力の存在を知った今は多少気にした方がいいと感じられた。

 「でもこれじゃ丸見えだ」
 「大丈夫よ、皆手を出して」

四人で縁になり、全員が繋がるように手を繋いだ。

 「これで周りからは見えないわ」

彼女は自信満々に頷くが、お互いに見えている状況なので納得はしがたい。その不満を感じ取ったのか、ブリジットはレナードに一度手を放してから三人を見るように促した。

 「すごい! 消えた!」

思わず大声を上げたレナードの手を慌ててブリジットが掴む。大きな目がキリリと吊り上がり、怒気が周囲に漂っている。

 「大声を出さないで。折角身を隠したのに意味がないじゃない。それとこの状態でも音は隠せないから、小声で話してよね」
 「ごめん、つい……」
 「初めて経験したら驚くよね。それで、これから指示が出るまでここにいるの?」
 「そうね、そろそろ3分経つわ。5分経っても指示がなければ突入しましょう。時間制限もあることだし、この体制ちょっと辛いしね」

地面に座りこむでもなく、中腰のままの姿勢は太ももに刺激を与え続けている。今は何ともないが、その内瞬時に立つことは出来なくなるだろう。四分を過ぎた頃、そろそろ足の痺れを感じてきた。一度屈伸をしておきたいと思っていた所に、唐突な声が頭の中で響いた。

 「リーダーのノアだ。突入グループに告ぐ。今から30秒後に一斉に校舎内に入れ。直前に一瞬視界がぶれるがすぐ治る。繰り返す、30秒後に一斉に校舎内に入れ」
 「カウントを始めるわ」

ブリジットが爛々と目を光らせて校舎側に目を向ける。その横でビハムが静かに秒数を指追っており、黙々と仕事をする様子が目についた。アトラスは念のため周囲から近づく人影がないか目を光らせているようだ。カウント10秒の所でビハムが軽く手を上げると、軽口を叩いていたブリジットがふと口をつぐむ。声のないカウントが続き、0になる時ついに拳が振り降ろされた。
四人はビハム、ブリジット、レナード、アトラスの順で窓枠を乗り越え一気に校内へ進入する。目の前に続く廊下には人影はなく、すぐさま近くの教室に転がり込む。
一瞬の空白。四人は顔を見合わせて小さく息を吐いた。

 「近くに人の気配はないね」
 「相手は同じ学校の生徒なんだから、位置取りに関しては先に中に入った子達の方が有利に決まっているわ。時間制限もあるんだし、まず立て籠もりやすい場所を探しましょ」

一階は人が少ないと予想し、すぐに二階に移動することで全員合意した。
数十人の生徒がいるはずだが、校内はしんと静まり返っている。未だ突入組との衝突はなされていないのだろうか。四人は数秒の躊躇の後、三階に続く階段に足を踏み出す。
そして、跳ね返された。

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